第11話 過去に囚われ
リリー、一行は、天鬼族の長インパクトさんから残党退治をお願いされてしまった。
鬼男さんと天子さんはいいにしても私は、何も力を持ってない普通の人間。どうしたらいいのやら…
インパクトさんの話を受けてから1ヶ月が経った。季節は秋になり、街路樹の葉っぱは黄色く色付いていた。あんなに暑かったのに今は肌寒く、厚手の上着を羽織らないと耐えられなかった。
鬼男さんと天子さんは残党を束ねている者が誰なのか調べるため一度里に帰ってしまった。私はというと、ウェディングフォトやレストランの料理のポートレートなど雑誌やパンフレットの掲載写真を撮るカメラマンとして仕事の幅を少しずつ広げている。
パソコンから仕事の依頼を受け、会社の専用口座に成功報酬のギャラを振り込んでもらうシステムになっている。社長はもちろん、私!てか、私しか今はいない…
この日は夕方まで雑誌に掲載する写真を撮っていた。1件の依頼でギャラが2万ほど。
まあまあな方らしい。
家に帰ってひと息ついている時に家のベルが鳴る。
家のベル「ピンポーン」
リリー「はいはい〜、どなたですか?」
鬼男「俺だ。さっさと開けろ。」
リリー「俺って誰ですか〜?」
鬼男「くっ!鬼男だ。早く開けろ。」
鬼男さんをからかうのが今の私のマイブーム。ちゃんと乗ってくれるからまた面白い。
リリー「今開けまーす。」
ドアが開く音「ガチャッ」
ドアが開くと同時に鬼男さんが土足で入ろうとする。
鬼男「すまん。入るぞ。」
リリー「ちょっと待った!」
鬼男「何だ。」
リリー「靴、脱いで家に入るのが人間界のルールです。」
鬼男「……そうだったな。では、履物を脱ぐとするか。」
鬼男さんは靴を脱ぐと家のソファーに腰をかけ、残党のことについて私に報告をしてくれた。
鬼男「残党について有力な情報を掴んだのだが、リリー、落ち着いて聞け。残党を束ねているのは…」
緊張が走り唾を飲み込む。
リリー「ゴクッ…ちょ、ちょっと待ってください。」
鬼男「何だ。」
リリー「その前に、鬼男さんのことを教えてください。」
鬼男「何故だ。」
リリー「ビスが言ってたじゃないですか。人間に戻りたいのかって。人間だった時の話を聞かせてください。」
鬼男さんは嫌そうだったが、渋々口を開いて話してくれた。
鬼男「…わかった。話そう。 俺には、パートナーがいた。苦楽を共にした大切なパートナーだ。ラメーンを知ったのは彼女と一緒に食べに行った時だ。」
リリー「ラーメンですね。」
鬼男「ああ。だが、幸せも長くは続かなかった。仕事帰りに彼女は通り魔にナイフで刺された。急所を突かれてしまったせいで出血が止まらず、病院に運ばれた時にはすでに息を引き取っていた。
彼女の両親が駆けつけ、彼女の姿を見て、父親が俺に一言言った。
“君と一緒にいたせいで、娘は死んだんだ。君は問題を持ち込む輩に過ぎない。もう、顔を見せるんじゃない。病室から出ていきなさい。”とな。」
リリー「そんな…」
鬼男「だから俺は人間をやめた。人間ではない何かになりたかった。途方にくれていたそんな時、俺の目の前で太陽ではない、何か光が差し込んできた。とても暖かった。吸い込まれるように俺は光の中に入った。
そこで出会った方こそが、インパクト様だ。
インパクト様は俺の事情を聞いてくれ、優しいお言葉で包んでくれた。守護神になることで人を救うことができると。俺は迷わず志願した。そして現在に至るのだ。」
リリー「そんな過去があったんですね…なんかごめんなさい」
鬼男「なぜ謝る。」
リリー「鬼男さんは、やみくもに怒って厳しい方としか見てなかった。鬼男さんの過去を知って鬼男さんの力になりたいって思ったんです。」
鬼男「そうか。ありがとう。」
誰にだって思い出したくない過去がある。思い出すと胸が苦しくなって、時には涙が止まらなくなる時だってある。
それでも、前を向いて力強く進まなきゃならない。そしてそこには、必ず自分のことを分かってくれる仲間がいる。仲間の為に恩返しをしたい。だから、人間は心が強くて優しいんだと思う。
鬼男「で、本題に戻るが、残党を束ねている者だが、リリー、お前の身内もしくは、家族に英会話講師をやっている者はいないか。」
リリー「英会話…講師…お父さん…お父さん?お父さんが英会話講師をやってますけど。」
鬼男「そいつだ。」
リリー「えっ?でも…」
鬼男「残党を束ねている者は天鬼族にも精通してる者だと推測している。つまり、お前の父親は、天鬼族だと思われる。」
リリー「えっ…」
何が何だかわからないけど、お父さんが天鬼族。そんなこと一度だって聞いたことがない。もしそれが本当なら今すぐ止めなきゃ!
真実を確かめる為にリリーの父の事を極秘で調べることになった。
嘘であってほしい。切に願うリリーであった。




