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軌動獣記探—Armored Train  作者: 鏡道天音
プロローグ
9/11

第七話『ルール』

もしかしたらぐちゃぐちゃになってるとことかあるかも…

『おお!危ないなぁ。当たったら痛いじゃないか』


僕はゴミカス(【代理人】)の声のする方に勢いよく拳を振るうが、それは当たらない。

正確には確かに何か形あるものに触れた感触はあった。

だけど、触れたと思った瞬間その何か形あったモノは煙のようになって空気中に溶けて無くなり、別の方から奴の声が聞こえてくる。

先ほどより少し遠い。


『まぁまぁ、落ち着き給えよ。私はキミに何も危害を加えてないじゃないか』

「…いきなり訳の分からないことを言って僕をあんな物騒な奴らが居る危険地帯に放り落とすのは危害を加えてないことにならないとでも?」

『それはキミ次第だろう。出会わなければよかっただけの話なんじゃないか?』

「………」


ダメだ。こいつと話してても全く埒が明かない。

一発くらい殴らないと———


『一応言っておくけど、この空間では私に危害を加えることは出来ないから()()いう無駄なことは諦めることをお勧めするよ。それよりも、キミに朗報があるんだけど、聞くかい?』

「……僕にとっては全く無駄なことじゃないんだけど…」


何なら今の僕にとって一番叶えたい目標なんだよなぁ…

でも多分【代理人】が言っていることは本当なのだろう。実際僕の拳は届かなかった訳だし。


『少なくとも時間の無駄さ。で?聞くかい?』

「聞く…」


そういう訳なので僕はおとなしく【代理人】の言う朗報とやらを聞くことにする。

もしかしたら、もしかしたら多少良いことを言う…かもしれないかもしれないから……うわやっぱり何となく碌な事言わなそう………


『それは良かった…じゃあまず、どうして今キミはここに居るのか分かるかい?』


僕は【代理人】のその問いに知らないと首を振る。

前回と同じく気づいたらここに居たわけだし、そう答えるのが妥当だろう。


『うん、それならそっから説明していこうかな』


【代理人】の口から『説明』と言う単語が出てくる。

もうこの時点で不安になってくる。


『今のキミは私や、キミ自身の情報を他の他人に言うことは出来ない…それは前言ったよね?』


僕は自分の記憶を探ってみる。

うーん、あー…そういえば地面に落される直前にそんなことを言ってたような…でもそれ行ったことになるのかな……


『まあキミが覚えてるかは分からないけど絶対に言ったんだよね。だけどキミがどうやらそれをよく理解していないようだったからここに呼び出したってわけ』

「?」


つまり何が言いたいんだろうか?


『キミさ、自分の名前言おうとしたでしょ。それはキミ自身のことを言うに入るからね?』

「…確かに言おうとしてたけどさ、それが何か関係あるの?」


そうだ、確かあの時いきなり頭痛が来て…その後気づいたらここに居たんだった。

だけど一体それがどのように関係しているんだろうか?


『はぁ~…まだ分からないかな?』


【代理人】は困ったようなあきれたような口調で言葉を発する。


分かるわけないからね?そっちの説明が足りないんだからね?


そう言葉が喉から出かけるが、ここはぐっとこらえる。

コイツに言っても通じないだろうし。


『ペナルティだよ』

「ぺなるてぃ?」


聞きなれない単語が【代理人】の口から出てくる。

一体どういう意味なのだろうか。


『あー…ゴメン、少し違ったかも』


【代理人】は困惑した様子の僕を目にして思い出したような声を上げる。


『【罰】…の方が正しいかな』

「【罰】?」


【罰】と【代理人】は言う。

僕が自分の名前を言おうとした?


『そう、これは詳しく説明するのを忘れてたことなんだけど、今のキミは私やキミ自身のことについて他人に言ったり、言おうとしたりすると罰が下るようになってるんだよね』

「それさ、僕が僕を知ることの障害になるんじゃないの?」


僕は疑問に思ったことを口にする。

僕について知るためには他の人とかに聞いてみたりするのが一番早いはずなのに何で一体そんな訳の分からないことをするんだろうか?


『それは私が決めたことじゃないし、私としても私の存在が他人に知れ渡るのも好きじゃないしね』


なにより、と【代理人】は続ける。


『いきなり「自分は一回死んでてその死んだときの自分を探してるんです」なんて言う人が居たら気持ち悪いだろう?』


なんかムカつく言い回しだがまあ実際のところそうなんだろう。

多分僕もそんな奴が居たら近づかない。


「じゃあさ、仮に僕がそれを無理やり他人に言ったらどうなるの?」


僕の問いに【代理人】は面白い物を見るような、どこか不気味な雰囲気を出しながら口を開く。


『死ぬよ。それを聞いた人すべて』

「え?」


【代理人】の口から出た言葉に僕は驚きを隠せない。

死ぬ?僕が【代理人】か自分についてのことを他人に言っただけで?それを聞いた人が全部?


『ま、そう言うわけで、今回はそれを言うために呼んだから今後は気を付けてね』


僕がまだ理解しきっていないところに【代理人】は勝手に言葉を叩きつけてくる。


「ちょ…」

『そうそう!今からキミが行くところだけど、いくつか注意点があるんだったよ!』


僕の言葉を【代理人】は遮る。

それ自体は頭に来るが、それよりも注意点と言う不穏な言葉が気になる。

絶対に碌なことを言わないだろうということだけは分かる。


『一つは絶対に私やキミのことについて誰にも話さないこと、二つ目はキミの頭のその耳は出来るだけ隠すこと、三つめは…』

「…三つめは?」


謎に言葉を切った【代理人】に僕は思わず質問してしまう。


『あの列車に乗ってた連中とはあまり離れないこと』

「なん…っ!」


何故かを聞こうとするが、ここに来る前に感じたような強烈な頭の痛みがいきなり僕を襲い、とても言葉を発せるような状態じゃなくなる。


『それじゃあ私も忙しいからここらへんで…頑張ってね』


その言葉を聞き終わるのと同時か、それよりも少し早いくらいだっただろうか———落下するような感覚を覚える。

風は感じないけどこれは絶対に落ちてる。

悪夢の終わり念押しのように押し付けてくるような恐怖感。


『それじゃあ私も忙しいからここらへんで…どうにか頑張ってね……ふふっ』


その言葉から先は聞こえない。

ああ、やっぱりあいつにはどうにか手痛い一撃を食らわせてやらないと…







その強い念と共に、僕の思考は止まった。

読んでいただきありがとうございました!

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