第六話『ユメ』
お久しぶりです。今日から更新再開させていただきます。
今回は短めです(あと少し血の表現が多いかも)。
『ぅ…どうし、て…?……わたしっ、わたしは………違ったの、違うの…』
誰かの、少女らしき泣き声だけが聞こえる。
辺りは暗く何も見えず、泣き声以外は何も感じない。
しかしその唯一の感覚もどこから聞こえてきているのかは分からない。
前からのような気もするし、後ろからの気もする。もしかしたら上か下からかも。
とにかく僕でも僕の知っている人でもない、だれか分からない少女の声が聞こえてくる。
こんな謎の状況ではあるけど、不思議と恐怖は感じない。
っ……?
突如辺りが急に明るくなり、反射的に目をつむる。
そして目を開けた次の瞬間には世界が色を持っていた。
しかしその状況は穏やかではない。
赤、朱、緋、真紅
赤
赤赤
赤赤赤
赤赤赤赤
赤赤赤赤赤
赤赤赤赤赤赤
赤赤赤赤赤赤赤
赤赤赤赤赤赤赤赤
赤赤赤赤赤赤赤赤赤
赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤
赤に染め上げられた…部屋だろうか。
足元は朱の液体で満たされていて、
少し顔を上げると倒れた人間と、その上からその倒れた人間を見下ろす銃を片手に持ったもう一人の人影が見え、そのどちらもが緋をその身に纏っている。
倒れている者は苦しそうに呻き声をあげ、身をよじるがそのたび床の朱が増していく。
おそらく、きっと、長くは持たない類のやつだろう。
その様子は明らかに常軌を逸しており、これが現実ではないことを何となく理解する。
これは多分夢なのだろう。
『…ごめんね……本当に、ゴメンナサイ』
乾いた銃声が一つ。
倒れていた者はもう二度と動かない。
それを少しの間見つめていた銃を手にした人影は、膝から崩れ落ち、
『…もう、イヤだ』
そう、一言呟く。
お前がやったことだろうに。
また世界が光に包まれ、一瞬で周りの風景が変わる。
そして僕の目に映ったのは先ほど銃を持っていた者と同じ背丈の人影。
それとそれを取り囲む多数の真っ黒な人型の影。
辺りは明るく、それらがいることは分かるがいずれも顔が見えることは無い。
それは囲まれている人影も例外ではなく、しかしそれが少女であることが何故か分かり、さらにその少女が———こちらを向く。
何となくその少女が助けを、求めてきているような感覚を得る。
僕は動かない。
いや、動けない。
よく分からないモノにはかかわらないのが一番だからだ。
そうしているうちにいつの間にかその人影の少女と人型の影が居なくなり、スポットライトが外れたようにして僕の周辺は真っ暗になり、最初の状態と同じになる。
何も感じない真っ暗な世界。
『嘘ツキ』
誰かのその一言だけがこの世界に響く。
その言葉は一体誰に向けられたモノなんだろうか?
少なくともいい気分ではない。
暫くして、また誰かの、少女らしき者の泣き声が聞こえてくる。
延々と、延々と、延々と。
……アレ?
僕はこんなところで何を———
何をやってたんだっけ?
何も感じない真っ暗な世界が崩れ、終る。
目の前に広がるは先ほどまでとは色合いが反対の真っ白で、何もない虚無の空間。
『やあ、久しぶり…っていう程経っても無いかな?まあそんなことはどうでもいいか。少しぶりだね、気分はいかがかな?少なくとも爽快そうには見えないけど、ねっ!あははははは!!!』
むかつくほど響く声。
人を馬鹿にしたような言葉回し。
そしてこの心の底から人を不快にさせる笑い声。
ああ、そうだ。
思い出してきた。
僕は先ずはこいつの顔面を凹凹にしてやらないといけないんだった。
読んでいただきありがとうございました!