第一話『地上にて』
「うぅ…ここは…?」
暖かに差し込む日差し、
木々が風に揺れ、枝と枝が触れ合う音、
鼻に突き刺さる草臭さに僕は起こされる。
「何やってたんだっけ…?確か…」
とりあえず状況確認。
確か僕は…そうだ、気づいたら訳の分からない空間にいて…そこで【代理人】とか自称する性格終わってる奴に会って……僕自身の記憶探して来いとか言われて………バカみたいな高さから落とされた…んだっけ?
思い出すだけでも腹が立ってくるが、この記憶が正しいのなら僕はあの超高高度から落下して生きているということになるんだけど、僕が覚えてる限り人間はそんな頑丈にできてなかったハズなんだけど…
ストレスからくる幻覚だったのだろうか?
そう思い辺りを見回してみると、僕が居る場所以外は木々の密度が高く、日差しがまばらで薄暗いのに僕の居る所だけぽっかりと穴が開いたように明るい。
これは僕が空から落ちて来たことの証明になるだろう。
「はぁ…とりあえず、どうしようかなぁ」
もう分からないことは置いておこう。
とにかく僕はどうやらあの高さから落とされても生きていたらしいということだけは真実だ。
さて、これからが本題なんだけど、
「あても無くこっからどうしろと…せめて人の気配がするところに落としてくれよ」
僕はそんなことを言いながら再度辺りを見回す。
すると何か人工物のようなものが、石の基礎や原型を掴むのが難しいほど大きく破損した…おそらく何かの建物であったであろうものがまばらに見える。
ただし、人の気配は全く無く、言うなれば廃墟の群れがそこにはあった。
いやまぁ全くの原生林という訳じゃなさそうだけど、これは明らかに悪意がある。
まさに頭を抱える状況とはこのことだろう…頭と言えば、さっきから何となく頭が重いような……
「って、なんじゃあこりゃぁ!」
頭に手をやってみればそこにあったのは獣の…おそらく犬とか狼とかのような獣の耳がそこにはあった。
驚いて顔の横にも手を下ろしてみるとそこには人間らしい耳が付いている。
つまり今の僕には耳が4つ付いているらしい。いやおかしいだろ。
そして確認するようにおもむろに背中の腰辺りに背中側の腰に手を回してみると、
「やっぱりあった…」
僕の予測は的中。しっかりと尾まで生えている。
ていうか———
「性別も違うじゃん…どういうこと……?」
体中をまさぐってみて分かったけど、自分の覚えとどうも性別が違う。
僕の体のはずなんだけど何となく気まずい…
ついでに言うと髪の色は灰色で、それなりに長い。
いやまあ確かに今の僕はあんまり自分に関しての記憶が無いけど、少なくとも僕は男だったはずだし、獣の耳や尾なんて生えている獣人ではなくれっきとした人間だったはずなんだけど…ナニゴト?
「まあ…何故か服を着てた所だけは救いかな」
おそらくこれらの所業も全ては【代理人】のせいだろうけど、奴にも最低限の常識はあったようで僕は今他人から見られても何も不思議に思われない程度の服を着ている。見た目は少し古っぽいけどね。
これで服まで着ていなかったら本格的に奴を殺める準備をするところだったよ。
「今の僕の姿はなんとなく分かったし、次会った時に奴を問い詰めることまで決まった…けど、まずはとにかくここから人里までどうにかして行かないとなぁ」
そう、少しずつ分かってきたことややるべきことが見つかったりしてるけど、どれもこれもまずはこの廃墟の群れから逃れないと始まらない。
そう考えながらあても無く勘のみに頼って僕は歩き始める。
その先に何が待ち構えているのかも知らずに。
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