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軌動獣記探—Armored Train  作者: 鏡道天音
プロローグ
2/11

プロローグ後編『堕ちる』

『あー…笑った。ホントもう久しぶりに笑った…くふふふ…駄目だ、思い出すとまた笑っちゃいそう』

「そろそろ殴っても良いかな?」

『おっと、急に暴力的になったね。何をそんなに焦っているんだい?駄目だよ、暴力は。私は痛いのが嫌だからね』


ヤバいな…

本当にコイツどうにかしてやろうかな……


「なんかもう僕が死んだのはもう分かったから、さっき言ってた色々の部分を教えてよ」

『分かった分かった。じゃあ話を続けるからその固く握った拳を開いてくれたまえよ』


僕が本気で拳を固め始めてようやく、『何者か』は呼吸を整え、話を続ける。

もし次また笑い始めたら一発殴ってやろう。


『おほん、それじゃあ話を続けていこっか。端的に言うと、キミにはこれからキミの記憶を探してもらおうと思ってるんだよね』

「僕の記憶?」

『そう、キミの記憶。自分のこと、知りたいだろう?』


いやまぁ確かに自分のことは知りたいけど…

僕は辺りを見渡すが、目の前には本当に何にもない無の空間が広がる。

…こんなところから一体どうやって探せと?


『あぁ、違う違う。別にここで探してもらうつもりは無いんだよね』

「…何で僕が今考えてることが分かったの?」

『いやぁ、私もここで仕事やって長いからね。キミみたいなヒトが何を考えてるのかもだいたい分かるのだよ』

「…」


僕の疑問に対してやはりどこかふざけたような言葉回しで返される。

まあまあ頭に来るけど、それは一旦置いておいて、ここで探さないのならどこで僕の記憶を探せば良いのだろうか?

と言うかお前は一体何者なんだ…


『そうだよね。気になるよね。分かる分かる』

「……」


またしても思考を読まれ、僕が一言も喋っていないのに『何者か』は勝手にしゃべり続ける。


『ちょうどいいから言っておくけど、私は【代理人】って言われてるよ』

「代理人?」

『そう。【お上】の【代理人】』

「【オウエ】?」

『あぁ、いや、そこは気にしなくていいから』


話を戻そうと【代理人】が言い、僕の疑問をはぐらかす。


『私の仕事は私達は、不完全に、言うなれば≪何か強い念を持ちながらそれを成せずに死んだ者≫をどうにかするのが仕事なの。そういう条件で死んだ人っていうのは、自分が何をそんなに強く思っていたのかなんて当然覚えてるんだけど、それがあまりにも強すぎると一周回ってその部分だけスポッと記憶から抜けちゃう人がいるんだよね…今回で言うと、それがキミのパターンになるね』


正直もう新しい単語が出て来たり訳の分からない名前だったりでそろそろ脳の処理が追い付かなくなりそうになりながらなんとか話を聞き続ける。

どうやら僕はよほどの強い念を持って死んだせいで色々記憶が無くなっているらしい。


『で、本来ならそう言うのを探してあげるのも私の仕事の内なんだけど…』


何やら含みのある言い回し。

表情は見えない筈なのになぜか少し迷惑そうな顔で見つめられているような感覚になる。


『まずそもそもキミがどこで記憶を失くしたのか分からないんだよね』

「…どういうこと?」

『本来ならその抜けてる記憶の前後の期間だけ戻して悔いを無くさせるんだけど、キミの場合キミ自身の殆どの記憶がないから全く見当つかなくてね。私も本当ならキミの記憶探しを手伝ってあげたいんだよ?でもどうもね…私一人でキミみたいなヒトをサバかないといけなくて時間が無いからさ』

「はぁ……」


つまりこういうことらしい。

僕は稀にあるパターンのさらに珍しいタイプの人間で、そんなヤツにかまってる時間は無い。

だからお前自身で探して来いと。

いやそこは頑張っていただきたいのだが?


『まあとりあえず何となくキミの記憶の手がかりのありそうな場所に飛ばしてあげるから、あとは自力で頑張ってね。私も後が詰まってるからそろそろ本格的に時間が無いんだ』


そして【代理人】はそんなことを言いながら僕から意味ありげに少し離れる。

刹那の嫌な予感。

僕はそれに反応しきることが出来なかった。


『それじゃ、頑張って来てね。一応言っておくけど、地上に混乱を持ち込ませないために私のこととか君自身のこととか周りの人に漏ら()()()ようになってるから気を付けてね。行ってらっしゃぁーい!』

「え?」

『あははははは!』


【代理人】の声と共に僕の足元が抜け、それと同時に浮遊感と内臓がひっくり返る感覚を覚える。

最後に聞いたものは奴の高笑い。最後に見たものは奴の楽しそうな顔。

次会ったら絶対に顔面を凹ませてやろう。

何もない『無』の空間からは一転して、眼下に見えるは大森林。

超高高度からの眺めは素晴らしく、地平線の彼方まで見渡せる。

そんなことを感じたのもつかの間次第に視点が逆さまになり、天に足を向け、地へ頭が向けられる。

取り合えず、


「ふっざけんなぁーーーーー!!!!!!!!!」


せめてものあがきと共に僕は地面へと容赦なく落下していった。

…これは死んだな……奴にまた会うのもそう時間はかからないだろう……

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