即刻、此処から立ち去れ!
優花は歌の才能はあります。
今更だが……
「召喚した国から色々と物資を頂戴したにも関わらず、ボロい格好だな?」
「実は……」
出発した時は、確かに色々と物資を頂戴していたみたいだが、途中の町で騙されて荷物は奪われ文無しになり、漸く辿り着いた街で、親切なお姉さんに働き先を紹介されたらしい。
その紹介先は、綺麗な若い娘が沢山働く居酒屋兼宿屋で、ウェイトレスをしていたが、3日目に優しく接してくれていた男性客が、女将に大銀貨1枚を払うと、女将が「2階の1番奥だよ、案内しな」と言われたから、案内したら、部屋に入るなり襲われたみたいだ。
その時、その男性客が言った。
この宿屋は、「女」も売っていると。
聞いた瞬間、男性客の股間にスマッシュをして、着の身着のままで逃げ出したらしい。
唯一の救いは、ウェイトレスは着ている服にエプロンを付けるだけだった事。
因みに、タッチすらさせずに逃げ切ったらしい。
「良く逃げ切れたな」
「まあ、形振り構わずで必死だったし。
でも、その後は……ご覧の通りでボロい格好な訳よ」
知った以上は……てヤツだが……
「さて。3つの選択肢だ」
「3つの選択肢?」
「ああ。1つ目は、独り立ち出来るまでの面倒を見てやるが、独り立ちしたら、縁を切り1人で生きていく」
「……善意を感じられる普通の選択肢ね。
2つ目は?」
「知り合いの他の転生者の元に行く。その場合は、優花を明け渡した瞬間から、俺は無関係だ」
「紹介する以上は大丈夫でしょうけど、博打よね。
……み、3つ目は?」
「3つ目は、俺がオーナーの喫茶店で働いて貰う」
「……はい!?」
「ただ、3つ目を選んだ場合は、奴隷の立場になって貰う」
「奴隷!?」
「俺がオーナーの喫茶店で働く全員が奴隷だからだ」
「ハーレム野郎?」
「否定出来ない環境だが、俺から彼女達に手を出すつもりは無い」
「う~」
「因みに、奴隷になれば、圧倒的に守り易くなる」
「どういう事?」
「この世界の法律は、権力者を守る為にあって、文化レベルが中世ヨーロッパ並みだからな。冗談抜きで、貴族という特権階級の連中は、不愉快という理由で平民を殺す事が出来る。しかも、罪に問われない」
「なる程……」
何故か、頭脳は大人の小学生がする、思考の体勢になる優花。
「だから、奴隷は貴族も所有するから、奴隷の身分は比較的安全なんだ。
勿論、飼い主で待遇が変わるけどな」
「……分かったわ。どうせ、この世界では、私の身分と立場はホームレス以下。
それなら、まだ貴方の奴隷になった方がマシでしょうね……! もしかして、あの3人の中に奴隷が居る?」
「ああ、居るぞ」
「謎は全て解けたわ」
何故か、両手の人差し指を眉毛に見立てる優花。
「どういう事だ?」
「あの3人の中に奴隷が居るのよね」
「あ、ああ」
「あの3人は見るからに健康優良体で、身に付けている物も良い装備品だわ。
つまり……」
「つまり?」
「貴方は、手の中の入れた人間を大切にするタイプだわ!」
「そう、見えるだけ……」
「あ、そういう見え見えの脅しは必要無いわ。芸能界で散々、人を視る目を鍛えられたから」
「……はぁ、負けだ。流石は、トップを走り続けたアイドルシンガーだ」
何故か、ステージで歌い終わった時の決めポーズをする優花。
「これからよろしくね、ご主人様」
「ヤクモだ」
「分かったわ、ヤクモ様」
「その呼び名はリンと被る」
「それなら……ヤクモたん」
「他の転生者とかにバレた時、爆死するから不可だ」
「贅沢ね。私に『たん』付けで呼ばれるなんて、お金で買おうとしたら数千万よ」
「兎に角、不可だ」
「それだと……君付けで良い?」
「……まあ、良いか」
「やったー! これからよろしくね、ヤクモ君」
この後、アリシア達の所に戻り、勇者召喚辺りも含めて誤魔化した説明をして、お互いの自己紹介をした。
王都に戻ると、店を廻りユウカに必要な服や日用品等を買い揃えた後、宿屋に帰った。
勿論、王都に入る前に、洗浄を掛けた。
「ユウカは、家庭的な事は?」
「流石に刺繍は無理だけど、それ以外なら最低限以上は出来るわ」
「それなら、喫茶店では、一通り出来る様になったら、歌姫をやって貰う」
「……ありがとう。私、頑張るわ」
「ああ」
時間的には、まだ夕食前だったから、俺とユウカだけ宿屋から出て、適当な死角で転移して、以前行った奴隷館でユウカを奴隷にして、喫茶店に行き、説明をして丸投げした。
翌日、俺達は、チェックアウトして、エルフ国を目指した。
「楽しみだわ」
「私もです」
「アタイもであります」
「そうだよな。街とかでエルフを見掛ける事はあっても、エルフ国には普通、行けれないからな」
そんな事を話しながら自前の馬車での移動で2時間後、マリベージャル国が整備した「魔境」の入口に到着した。
運良く周りに誰も居なかったから、馬車等を「蔵」に仕舞い、エルフ国を目指した。
まあ、魔境と言っても、専属の商人が往復出来る様に道が出来ているから、迷う事なくエルフ国の玄関口に到着して、弓を構えたエルフ達に囲まれた。
はい、わざとです!
エルフ国に到着したなら、やっぱりテンプレの「弓を構えたエルフ達に囲まれる」がないとな~。
「ありがとう」
「何を言っている!」
「お前達は、専属の商人ではないな!」
「即刻、此処から立ち去れ!」
「さもなくば……」
俺は、予め用意していた、あの「指輪」をエルフ達に見せた。
厳しくも温かいメッセージを待っています!
そして、星の加点をお願いします。




