皆の者、鎮まれ!
奴隷にとって、主人の命令は、全てに優先する。
俺は少し待って、ウリセスに話し掛けた。
「3連勝した俺の勝ちだな。きちんと約束は守って貰うぞ」
「……巫山戯るなー! 衛兵共、この男を捕えて違反の証拠を見つけ出せ!」
「ウリセス様!」
「五月蝿い! やれ!」
仮にも領主の次男の命令に従い、俺を捕らえようと動き出した衛兵達に対して俺は、リンとアリシアに目線を向けた。
そして、リンとアリシアが俺を護衛するかの様に前に出ると、身なりの良い中年男性が現れた。
「皆の者、鎮まれ!」
そう言った瞬間に、衛兵達は一斉に地に片膝を突く姿勢を取る。
「パパ!? どうして此処に?」
「執事のシュドから聞いた。ウリセスがバカげた事をしているとな」
「パパ、ちょうど良かった。あいつが、神聖な符術召喚の決闘で違反をして穢したんだ」
「……本当か、フィレル」
「……そ、それは……」
「フィレル言うな!」
「貴様が仕えているのはウリセスか、私か?
どっちだ?」
「バルトロセ様です!」
「ならば、答えよ」
「はい。私が見た限りは違反をした様には見えませんでした」
「……と、いう事だが?」
「全くの言い掛かりだな。負けた八つ当たりだろうな」
「そうであろうな。しかし、調べさせて貰うが良いな?」
「どうぞ」
これで、俺は違反をしていない証明が出来るから応じる事にした。
「バルトロセ様、違反に繋がる魔道具等は発見されませんでした」
「当然、彼を守ろうとした2人の娘も調べたな?」
「はい。女衛兵に調べさせましたが、同じく違反に繋がる魔道具の発見は有りませんでした」
「バカな!?」
「これで、違反の可能性は消えた」
「パパぁ!」
「因って、彼の勝利は正当だと宣言する」
「そんな……」
そうバルトロセが宣言すると、周りから拍手され賛美の声が上がる中、竜人族の「マルティナ」が項垂れているウリセスに駆け寄り言った。
「……ウリセス様。私が受けた恩は、一生涯忘れません」
「……ふん! 勝手にしろ」
「ウリセス様のご健康を祈っています」
マルティナがそう言った後、ウリセスは後ろを振り向かずに、この場を去っていった。
「さてと。子の責任は親の責任だ。ウリセスが放棄した責任を取る事にしよう」
「分かった」
周りに居た野次馬は散り散りに解散して、俺達とバルトロセ達は目前の奴隷館に向かった。
奴隷館の玄関口前に、身なりの整った男性と後ろに2人の女性奴隷が頭を下げていた。
そして、バルトロセは言った。
「我が奴隷館にようこそお越しくださいました、バルトロセ侯爵様」
「ちょっとした手続きをしたい」
「畏まりました」
俺達も奴隷館に入り、奴隷マルティナの主人変更手続きを済ます。
「これで全ての手続きは終了しました」
「ゼン殿、息子が迷惑を掛けた」
「問題無い」
「そう言ってくれると助かる。それでだが……」
「バルトロセ侯爵様の自慢の料理長が作る昼食が頂けるのは光栄だな」
「……感謝する」
バルトロセ侯爵との会話が終わるとマルティナに向き直して言った。
「前の主人であるウリセスから受けた命令を全て破棄する事を命令する」
「畏まりました、ご主人様」
「本来の話し方で良いぞ」
「それは助かるであります。アタイ、慣れてないであります」
「それでは行きますか、バルトロセ侯爵様」
「うむ」
まだちょっと残っていた野次馬に手を振った後に、用意されていたバルトロセ侯爵家の家紋入り馬車に乗る。
「分かっていたようだな。感謝する」
「貴族は受けた恩等を返さないのは死活問題らしいですから」
「そうなのだ。分かって貰えると、儂としてもやり易いものだな」
馬車の中では、軽い雑談をしながら領主館に到着するまでの時間を潰した。
勿論、雑談の中でバルトロセ侯爵は、遠回しに言葉を選びながら、俺の出自や、俺が持つ召喚獣等を聞いてきたが「俺は、冒険者だ」と言うと諦めたみたいだ。
……まあ、テンプレで、冒険者の素性や能力等を詮索するのは、この世界では、かなりの恥知らず扱いになるからな。
平民だろうが、神殿関係者だろうが、商人系だろうが、貴族以上だろうがな。
因みにだが、マルティナの本性を見抜いたのはランカール辺境伯から従者の教育を受けていたのが大きいくて、仕草等から違和感が有ったんだ。
それに、仕える主人が代わったのに、過去を引き摺るのは不愉快だしな。
領主館に到着して、客室に通されてメイドから紅茶とお菓子を頂き、バルトロセ侯爵家の三女オリビアと会話をしながら時間を潰していると、昼食の準備が整ったと別のメイドから教えて貰い、オリビアに案内されて食堂に通された。
それと、マルティナは、領主館に入って早々に浴場に連れて行って貰い、身体を綺麗にして貰う様にお願いした。
美味しい昼食に舌鼓をしているとバルトロセ侯爵は言った。
「アリシア嬢、御父上のランカール辺境伯は御健勝か?」
バルトロセ侯爵のこの一言で、色々とバレていると俺達は判断した。
道理で、食堂には俺達以外には執事のシュドしか居ない訳だ。
「はい、バルトロセ侯爵様」
「婚約破棄で、色々と大変だったと聞いていたが、今はそうではない様で安心した。ランカール辺境伯には若い頃に世話になったから心配していたのだ。
まあ、あのパーティーのアリシア嬢を見ると余計なお世話だったみたいだな」
「バルトロセ侯爵様。冒険者となった今の私には関係無い事です」
「わ、分かった」
何故か、笑顔なのに圧を感じたらしいバルトロセ侯爵は、返事を詰まらせながら返事をしていた。
「マルティナ! 全部、見えているって!」
厳しくも温かいメッセージを待っています!
そして、星の加点をお願いします。




