この奴隷紋に賭けて
いよいよ、です。
ちょっと森の奥まで来たが、カリアも直ぐに打ち解けてパーティーの連携は良かった。
そろそろ昼食にしようかという時に、俺とリンの探知系に警報が流れた。
その20秒後には、銀翼のリーダーのアマリアも感知した。
「警戒!」
アマリアがそう言った瞬間に、カリア以外は周りの警戒をし、数秒遅れてカリアも周りを警戒する。
「低くてもCランク上位よ!」
……そして現れた。
「GaAAAーーー!」
「Bランクの赤牙虎よ!」
「ヤクモ達も戦って! そうしないと、1人も生き残れないわ!」
「銀翼の皆さん。大丈夫です」
「リンちゃん……」
全滅も覚悟した悲愴な銀翼と、見学していた時の態度と空気が変わっていない俺達。
第3者視点だと、チグハグだろうなぁ。
「ヤクモ様、お願いします」
「分かった」
俺は、リンのお願いで赤牙虎に向かう。
「死に行かないで! 全員で戦えば生き残れる可能性は高いわ!」
「アマリア、大丈夫よ」
「カリア……」
……そうだ!
この赤牙虎を銀翼にプレゼントしよう。
そうと決まれば……
先ずは、無詠唱で完全回復を赤牙虎に掛けて、古傷も治療して綺麗な身体にする。
「「「「え!?」」」」
その後は、赤牙虎の牙や爪の攻撃を躱して出来た隙を突き、後頭部に掌打を放ち脳を揺さぶり、回復する前に赤牙虎の首を左腕刀で斬り落とす。
「「「「はい!?」」」」
俺は、赤牙虎の血抜きを済ますと、俺の「蔵」に仕舞い、リン達の所に戻った。
「「「「ななな……」」」」
「皆さんの気持ちも良く分かりますが、幻覚では無く現実です」
「……現実なの?」
「はい」
「残念ながら、現実なのよねぇ」
「アリシア……」
何故かリンとアリシアが、俺を口撃している。
「何者なの、ヤクモは?」
「少々派手な功績が認められ、最近Sランク冒険者になったスケベです」
……リンは、まだ根に持っていたのか!?
「……ちょっと待って!」
「最近Sランクになった冒険者なんて1人しか居ないよね?」
「うん。しかも、そのSランク冒険者って……」
「「「「災害級ザカリアスの単独討伐者!」」」」
「はい」
「本物?」
「この奴隷紋に賭けて」
「あ、事実だわ」
銀翼の3人は疲れたと言って昼食を取る事もなく、俺達と銀翼は帰る事になった。
その途中で、銀翼に赤牙虎をあげる、と話したら断われたが、お祝いと応援という事で押し切って受け取って貰った。
ただ、この時のやり取りで周りのモンスターを引き寄せたが、リンとアリシアが全て駆逐した。
「リーダーがリーダーなら、メンバーもメンバーよね」
「「「うんうん」」」
こうして森を抜けて都市に戻り、冒険者ギルドに行き赤牙虎の解体をお願いした。
使い道は、毛皮は銀翼5人の身体を守る防具で、牙や爪と骨は前衛の武器にして、魔石は魔術師の杖に使う事が決まり、肉は、暫くの間の彼女達のご馳走となった。
「「「「「「「「乾杯!!!」」」」」」」」
俺達と銀翼の5人は、オススメの店で、祝う事にした。
「カリア、おめでとうございます」
「ありがとう、リン」
「頑張ってね、カリア」
「ありがとう、アリシア」
「カリアを頼むな」
「カリアは、もう私達のメンバーよ」
「そうだよ」
「そうよ」
「大切な仲間よ」
「皆……」
「折角の門出だ! どんどん食べて飲んでくれ。俺の奢りだ!」
こうして、カリアは地獄ともいえる状況から抜け出して、新たな仲間と共に駆け出す事となった。
……因みに、カリアに完全回復を旅の道中で使っていて、ヤクモが席を外した時に、リンがカリアに何処を治療をしたのかを教えている。
翌日からは、俺、リン、アリシアの3人に戻り、暫くはカリアが居ない違和感が有ったが、2日ぐらいで消えた。
更に、もう1日カリア達を見て、大丈夫そうだから、俺達は、城塞都市アカルビアを出発して、隣国トレベーガへと向かった。
「ヤクモ様、国境を越えましたね」
「そうだな」
「私、国境を越えるなんて始めてだわ」
「俺もだ」
「私もです」
「わたしは、もう5回目よ」
「こら、サリー」
実は、城塞都市アカルビアから出発する時に、商隊に便乗する事にしたのだが、同じ考えを持つ者がそれなりに居て、サリー達行商人家族もそうだった。
サリーの家族構成は父親カリムさんに母親メリーさんに長男のカラムに、双子のカハムにサリーだ。
……要するに俺の前世と同じ家族構成だ。
まあ、懐かしくなって、声を掛けた訳だが、向こうも好意的に受け取って貰えたから一緒に行く事にした。
因みに、俺達は全員が馬車の中に居るが、俺達の馬車の御者席に居るのは次男のカハムだ。
理由は、馬車の運転の練習だな。
そんな訳で、話し相手に飢えていたサリーが俺達の馬車に乗り込んだ訳だ。
お目付役のメリーさんも一緒に。
「国境を越えて最初の目的地は、城塞都市アカルビアと同じぐらいの都市で、同じ様なお城みたいなのよね」
「やっぱりか」
「名前は何て言うのかしら?」
「え……とね。城塞都市セゴビアルよ!」
こうして、サリーの家族と共に過ごして、野営では俺達と一緒に食べたのだが、異世界転生系あるあるが発生して、向こうは干し肉と固いパンだった。
だから、サリー家族も誘って、干し肉は刻んでオークの肉と野菜たっぷりのスープに入れて一緒に食べたんだが、干し肉が思った以上に美味しくて、何処で手に入れたのか聞いたら、目的地の城塞都市セゴビアルで売っているらしい。
これだけでも、サリー家族を誘った意味があったな、と思ったよ。
「全部買う」
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