ヤクモ、何を出すの?
やはり、アレは外せません。
あの後、リンに稽古を付けて時間になったから都市に帰り、1日分の薬草等とホーンラビットを提出して報酬を貰い、冒険者ギルドを出ようとすると、「待った」が掛かった。
「待ちたまえ」
「……」
「待ちたまえと言っている!」
「俺達の事か?」
「そうだ」
「何の用だ?」
「その奴隷を私に売れ」
「は!?」
……誰を売れだと!?
「そうだな……金貨5枚でどうだ? 君みたいに若いと金貨すら見た事が無いだろう」
「おい」
「嬉しいか? そうだろうそうだろう。早速、奴隷館に行って主の変更手続きをしに行こうか。ああ、費用は私が出してやろう。感謝するが良いぞ」
「待てよ」
「何だ? 金貨5枚では足らんか? それなら、もう1枚出そう。これならどうだ?」
……こいつ、馬鹿か!?
「何、勝手に話を進めている。俺は売るとは一言も言って無いが?」
「金貨6枚だぞ! どうやって手に入れたのかは分からないが、金貨6枚は大金だぞ」
「そんな小銭なんぞ、要らんわ!
それに、黒金貨100枚入り袋を100袋を用意しても売る気は無い!」
「……貴様、私を誰だと思っている」
「知るか」
「私は、ランカール辺境伯様と懇意にしている商会の者だぞ」
「なっ!?」
「やっと、自身の立場に気付いたか」
「そうかそうか。ランカール辺境伯と懇意にしている商会か!」
「そ、そうだ」
「それなら、話は早い。もし、ランカール辺境伯に会えるのなら、俺の名前ヤクモを出してみるんだな」
「き、貴様、先程もそうだがランカール辺境伯様を様付けで呼ばないとは不敬だぞ! それに……」
激昂しかけた馬鹿が、更に何か言おうとしたら、冒険者ギルドに乱暴に入った男が現れた。
「ウカ・エララーイ、遅いぞ。何を時間を掛けている!」
「申し訳ございません。実は、希少な黒猫人族の奴隷を購入したので、カルザール侯爵夫人に献上したいと」
「そうか、それはカルザール侯爵夫人も喜ばれよう。して、その希少な黒猫人族は何処だ?」
「此方で……」
馬鹿が勝手に話を進め、リンの肩を掴もうとしたから、俺の方に寄せた。
「貴様!」
「言っておくが、購入した事実も無ければ、俺は売るとは言っていない」
「……どういう事だ?」
「貴様にも、美味しい思いをさせてやるから『売った』と言え」
「売る訳が無いだろ、バ~カ」
馬鹿とのやり取りを聞いていた従者らしき男は、かなり怒りを抑えている。
「つまりだ。売買が完了していない奴隷を、カルザール侯爵夫人に献上しようとしたと?」
「いえ、あの、それは……」
「カルザール侯爵夫人、いや、我が主であるカルザール侯爵様も甘く見られたものだな! カルザール侯爵様に報告するから覚悟するがいい!」
「あ、ああ……」
「少年よ、済まなかった」
「まあ、別に良いけど。最低でも、この馬鹿は切った方が良いと思うぞ」
「そうだな」
そして、冒険者ギルドにちょっと前に別れた侯爵夫人が現れた。
「遅いわよ!」
「申し訳ありません、カルザール侯爵夫人」
「全く。それ……で……ヤクモ!」
「久しぶりだな、フランシーヌ」
「ヤクモは、どうして此処に居るの?」
「俺は、冒険者だからな」
「そうだったわね。それでヤクモ、何が有ったのかしら?」
「実は……」
俺は説明した。
「ウカ・エララーイ、今までご苦労様です。何もしてあげられないけど、新しい場所で、頑張っていける事を祈っているわ」
意訳だと、ウカ・エララーイ、あんたクビで、懲戒免職ね。後、商会に戻っても席無いから、違う場所で最底辺からやり直せ!……に、なる。
「カルザール侯爵夫人!」
「さ、行きましょう。ヤクモにリン……ちゃんも、私の馬車に乗りなさい」
見事に、カルザール侯爵夫人こと、ランカール辺境伯の長女のフランシーヌは、馬鹿を無視して、俺達を馬車に乗る様に言った。
因みに、フランシーヌが冒険者ギルドに寄ったのは、近況報告を聞く為だった。
「正直に言うと、アレ、切りたかったからちょうど良かったわ」
「この都市カルザールの領主カルザール侯爵に嫁いだとは聞いていたけど、会えるとは思わなかったな」
「遠慮しなくても良いのよ」
俺達とフランシーヌは、到着するまで雑談を続けた後、そのまま泊まる事になり、宿屋に使いを出して貰い、カルザール侯爵と挨拶を交わして、夕食の席で言われた。
「ヤクモ君は、知っているかい?」
「何をです?」
「この都市で、3ヶ月後にオークションが開催される」
「ヤクモ君も、参加してみないか?」
……もしかしたら、何かが起きるかもな。
「分かりました。参加しようと思います」
「それは良かった。席は私の方で用意しておこうと思うが良いか?」
「ありがとうございます。カルザール侯爵様、よろしくお願いします」
「うむ」
「それと、幾つか出品したいのですが」
「3日前までなら大丈夫だ。ヤクモ君の名前を伝えておくから、期日を守って出品する様にな」
「はい、ありがとうございます」
「ヤクモ、何を出すの?」
「宝飾品を……」
「待って!」
「フランシーヌ?」
「失礼しましたわ。ヤクモ、何を出すの?」
「勿論、フランシーヌや皆に上げた奴よりも、価値の低い奴を出す予定だ」
「それなら良いわよ」
厳しくも温かいメッセージを待っています!
そして、星の加点をお願いします。




