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知識


クスクス笑いが聞こえて、恥ずかしいのとホッとしたのとが入り交じる。

「私で良ければお部屋の外をご案内しますよ。」

ああ、良かった。

「お屋敷内には庭園もございます。」

イヤそうじゃなくて。

「このお屋敷から出ることは出来ない?」

扉越しに聞いたはいいけど、この子に聞くことではないかもしれない。

「……私にはわかりません。

 領主様からの連絡をお待ち下さい。」


……軟禁じゃんコレ。

「……分かりました。ありがとう。

 あ、あと水と何か食べ物もらえますか。」

ものはついでだ。他に言えることもない。

「かしこまりました。」

返事の後で扉越しに何やらカチャカチャ音が聞こえてきた。向こうはキッチンなんだろうか。


 先に水だけ運んでもらい、腹ペコなのでガブ飲みする。美味しそうなニオイがしてきて益々お腹が空いてきた。

 めちゃめちゃお腹鳴るやん……

 

 それにしても、置かれた状況が見えないのはキツい。私には何の力もない。どんな理由でここに居なきゃいけないというんだ。大魔女と呼ばれる人は大人しく引きこもらないといけないのか。

 あの竜は何処にいったんだよ……

 そもそもなんでこのお屋敷にいたの私?

 竜が運び入れたのか………

と、初めて気付く。

 竜から話を聞いている………何の?

 竜はユイマのことなんか何も知らないでしょ。

 私ですら知識しか使いこなせない。

 記憶の映像や会話はどうも不確かだし。

 ……てか必要ないか。ユイマ個人の事は。

 じゃ、なんだろう。

 中身が異世界人です、なんてことを

 突然話して信じてもらえるものかな?

雷光の大魔女。それらしいけど、竜が何かしらの力を使えば雷の竜であることはわかる。竜と共に在るのは大魔女である……。

 いや、考えすぎか。

 嘘ついてまで囲い込むことに何の得が?

 ……あるかも。大魔女様だし。

竜がいなくて不安だから、疑心暗鬼になってるみたいだ。きちんとした対応をしてもらえているのだから、大丈夫。何か理由があっての事だ。多分。少し落ち着け、私。

正直大魔女なんて、その存在自体が伝説みたいなもので、どんな意味を持ち何が出来る人達なのか、なんてリアルな事情を詳しく知っている訳では無いのだ。理由があったとして、私には理解出来ない可能性すらある。

…とはいえ、私の知らないところで話が勝手に進んでいるのは気に入らない。

理由があるなら納得させて欲しいし、言えない事情があるなら素直にそう言って欲しいところだ。


 暫くして運ばれてきたのは、驚くことに普通のモーニングセットだった。パンとジャムと温かいスープ。ここの季節はわからないけど、長袖の時期にスープは嬉しい。建物はアジア風なのに、食文化的には西洋なのか。古風に感じるものだらけなのに、食べ物は現代に遜色ない。

 ……まあ、日本も似たようなもんかな。

 外国人から見たら…………

ユイマも未体験の地域では、疑問など挟まず、ありのままを受け入れるしかない。

「どうぞごゆっくり。」

一礼して下がろうとする女の子に声をかけた。 

「すみません。

 いくつか聞きたい事があるんですが。」


「どうぞ」


「あの……大変失礼ですけど、

 私よりずっと若く見えますが、

 大人の方ですか?」


返事はやっぱり、はい、だった。

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