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遠慮


 またもや竜に確認しなければならない事が増えた。先ずは結界について。そして水の竜について。まだまだあるけれど教えてくれるかは解らない。

 かなり話が長くなるなぁ。

 なんとかいい空気に戻したい…戻さないと。

ウィノ少年にも聞きたい事はたくさんあるのだが、声を出すのもしんどそうな子供には聞きにくい。どうもこの世界の子供達はそれほど子供って感じがしないのだけど。ウィノ少年なんか、どこからか折り畳んだ紙と万年筆?を取り出して、パッと見だと仕事中の外国人さんみたいだ。白シャツに茶色いズボンの洋装だからそれっぽいが、顔面と衣類のクオリティが場違いで少し不思議な光景にも見える。

「あの、お願いできるなら、旅行用品が入った

 軽いカバンと靴を貰えませんか?」


「はい。…ご自身で選ぶことも出来ますよ。

 金銭をお渡ししても良いと聞いてます。」


「え…お金を?借りるんですか?」


「いえ。領主様から、ということに。ん゙。」


「お…お金を、領主様から…。

 タダで貰えるわけじゃないでしょう?」


「いえ、その……タダで。」


「は!!?」

そんな夢みたいな話ある!?いや確かにゲームとかならそうだけど。大抵のRPGは偉い人から村人や通りすがりの旅人までもが親切に金銭と装備と回復アイテムをくれるのは当たり前だけど。なんならその辺に落ちてるし。でもログラントはそういう世界じゃないものだと思ってましたよ!?

 どこでもこういうバランスの悪さはあるのか…。

ナクタ少年のいるシビアな世界は何なんだ、と思ってしまう。お金って全然平等じゃない。いや、そうか、お金ってそういうものか。

「…では、旅行用品がすべて揃えられる金額を。

 あと、非常食を。二人分お願いします。」


「はい。了解しました。」


受け答えしながら手早くメモを取る。


「俺のは別に…。」


ナクタ少年が気付いて遠慮がちに断るが、そんなのは知ったことではない。私に聞かれたことだし私に判断を任されているのだから貰えるものは貰っておくに決まってる。

「あの、ウズラ亭には凄くお世話になってて、

 ここの支払いも、もってもらえますか?」


「はい、勿論。ん゙ん…そりゃそうですよね。」


ウィノ少年は軽く笑いながらそう言うと、"僕でもそうします"と笑顔を向けて明るい口語で賛同してくれた。後光のように放たれるオーラ。これが王子様という生物か…。


「そうだ、偶然ナクタが教えてくれましたけど、

 客人を見つけたとは聞いて無かったので。

 ん゙、げ、憲兵は来なかったんですか?」


「…え?…え〜と。」

困ってカウンター内に顔をやると、リッカ少女はしっかり話を聞いていたらしく、既に近くまで来て微笑みを浮かべながら控えている。


「リッカが話したの?」


 …ん?

心なしか、ウィノ少年の声が更に明るい気がする。ガラガラ声なりに頑張りたい気持ちが見える…いや聞き取れる……気がする。


「うん。竜を連れた魔法使いでしょ?

 ちゃんと聞かれた。

 ウチのお客さんが一人いるって、

 母も身元を確認してるって言ったら、

 すぐに帰ってったよ。また後で来るって。」


「そっか。よかった。入れ違いかな。

 伝わってるはずだとは思ってたけど…。」


 え…嘘、バレてるの!?

 後でって、何しに来るつもり…!?

身元を…まあ、嘘ではない。確認してると言っていいかは解らないけど。探さないのは権限がないだけなのか、そういう指示なのか。リッカ少女に聞いたところで解らないだろう。

別に逃げなきゃいけない立場でもないはずだ。コソコソしなければいけない理由は……不法入国とかだけど領主家の人が了解してるなら大丈夫なんじゃないか…多分。金銭援助を申し出てくれるくらいだし、気にしなくてもいいはず…多分。

 こうなるとやっぱり一人の方が良かったか…。


 フラリと何処かに荷物を置きに行った様子のナクタ少年は、入口近くのテーブルの上に鞄を置いて寛いでいる。足を組み椅子に腰掛けてその背にもたれ掛かっていた。手には木切れを持っていて、クルクルと回しては、いろんな角度から眺めているようだ。彫刻家になりたいというのは、ただの夢でもないらしい。ちょっとスゴイな。

「今日はウズラ亭に泊めてもらうつもりです。

 ナクタくんは、どうするか聞いてますか?」


「ウチに泊めます。

 普通のところなら連絡だけで……あ、や、

 ウズラ亭は強力な魔法対策が、ん゙ん、

 されているし馬車も入れないから、

 来なくてもいいって言ったんですけど、

 謝らないと、って聞かなくて。

 荷物も離さないし。…そういう奴なんです。」


「ふ。」


リッカ少女が優しく笑う。ウィノ少年も困ったようにナクタ少年を見てはいるが口元は笑っている。

 …………え…?

 ……何この平和で幸せな空気……。

ログラントに来てから、おそらく初めて味わうホワホワした優しい世界。こんな世界があったんだな。知っていたら私もあんなジメジメした地下室でオッサンだか爺さんだかの怖い話なんか聞いてないで、平和な二人からもっといろんな話聞きたかったわ。

 …まあ、領主家の方にも居場所はバレたし、

 それどころじゃないかな。

パロマさんが知ったところで、今更何をどうするでもないだろうけれど、領主様の考える事は想像がつかないからちょっと怖い。イド氏の言う通り、はよ出なアカンかな?


「ナクタ、何か言ってた?」


唐突にリッカ少女がウィノ少年に質問した。


「?…何かって?」


「や、いいや。また今度。」


 ………何?何の話???

リッカ少女にまで聞きたい事が出来てしまった。

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