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接点


「魔の及ぶものが我々との接点。

 力及ばぬことは魔女に託しています。

 私の友人は神の友人などではありません。

 力及ばぬ雷の竜の友人であり、

 大魔女なのでしょう。」


「………魔とは何かね?」


「ええ。古い友人も私に問いました。

 今の在り方が正しいとは思えない、とも。」


「…………だからアンタも神ではないのか?

 偉大な竜と大魔女は導く者ではないのか?」


「竜は魔を示し理を授ける者なのでしょう。

 少しずつ深く関われるように、差し上げます。

 しかし導く者を決めるのは貴方のはず。

 貴方もまた、

 友人となったかもしれない者なのです。」


「……………。

 それはつまり、俺が大魔女様に服従する、

 なんてことは断れるということだな?」


「勿論です。

 左右すると言ったでしょう。」

 

 ふ…服従て…なんなのそのハードな世界…。

 お爺ちゃん虐待とか、怖くて出来るか!

イド氏は私をそんな非道なドSだと思っているのか。変態、外道の次はドSて……酷い。偉そうに、エンさんのこと言えんよ、イド氏も。


「……手伝ってもいいが、こっちも事情がある。」


「聞いてもいいのですか?」


「………どうせ身辺は洗うつもりだろう?

 面倒なことは先に済ませたい。」


「前向きなのは結構ですが。

 手伝えない事情とはなんです?」


「……………。

 ………ん………あ、……そうか。

 手伝う代わりに……ひとつ、

 交換条件を出すわけにはいかないのか?」


「私を都合良く捉えないで下さい。

 交換したいならせめて正直に話しなさい。」


 叱られとる……。


その後も何度か口を開けたり閉じたりしてイド氏が言葉を飲み込む。どうやらまだ嘘をつこうとしているらしい。言えなくなるんだな。急に。

確かにこうして他人の様子をじっくり見ていると、私の時とは随分違うように思える。

 言わされているようだった……なんだろ。

 私が話してるのに私じゃ無いみたいな……。

 私が重なるとか何とか言ってたのが、

 原因なのかな……つまり、私は……。

 私自身の考えを自覚してないということ?

 今、認識している私が、そもそも嘘?

 ………例えば……装ってキャラ造ってたり、

 …虚栄心とか、そういう類のもの。

 …………それまでも剥がされる……?

有り得るのかもしれない。そう思った瞬間、真っ白になって暫く何も考えられなくなった。



「噂は本当なんだな。……嘘がつけない。

 言おうとしていたことが話せないのが、

 こんなに苦しいとは思わなかった…。」

 

長い沈黙の後に、立て直す目処がついたらしいイド氏が再び話し始める。


「それは良くない噂ですね。

 無理に話さなくてもいいのですよ?」


私は聞きたいけど、竜がそう言うなら諦める。


「……俺はね、約束してるんだ。

 ………………………ミリシアを………。」


はあ〜っと深く深く溜息をついて、これだけはな、とか何とか言葉を挟みながら迷っている。かなり言いにくそうだ。

 ミリシアって……女将さんの名前だよね?


「……ミリシアを、守ってやらないと…。

 まだ、家賃も借金も払えてない。

 …働いて返す約束だったからな……。」


 最初の一言に感動して、損した。

 実力で簡単に逃げられるのを考えたら、

 かなり律儀ではあるけどね。


「金はともかく、護衛だけは、

 ……信用出来る奴に継いでもらわないと、

 引き受けるわけにはいかない。」


 "金はともかく"って。まさかこれを理由に、

 踏み倒す気じゃないよね?イド氏…。


「わかりました。ですが、

 私も友人が騙されてきては少し不愉快です。

 貴方の代わりはいたはずでしょう?」


「…………ナクタは友達のウィノを、

 頼るつもりでいた。まだ子供だ。

 名家の坊っちゃんには許されんだろう。」


「どうして言ってやらないのです?」


「………わかってて聞いてるのか?」


「当たり前ですよ。交渉が成り立たないの、

 予測できたんじゃないですか。」

私が横から口を出す。なんか腹が立ったから絡んでしまった。我ながら単純だけど、正当なツッコミのはずだ。なんで竜がマイヤールさんとの話の内容を知っているかは解らない。また通信機かな?


「…………意外に言うね。大魔女様は。」


「当然です。少年は信じていたのでしょうに。」


「俺も居なくなると言ってやれば、

 アイツもその気になると踏んだだけだ。

 ナクタは騙されてでもここを出たほうが、

 ずっといいんだ。ミリシアは出来る。

 子供だろうが家族だろうが容赦しないんだよ。」


「貴方が言っても、ですか。」


「無理だ。仕事の話だからな。

 …………………性分なんだよ。どちらも心配だ。」


驚いた。意外なところが嘘じゃ無かった。

「………私に話した昔話は本当の事ですか?」


遠くから掛けた声をイド氏は難なく拾い上げたようだ。分かりやすく肩を竦めて嫌がられた。さっきは割と落ち着いていたから、想定内のツッコミだったのだろう。しかし今度は違う。私が知りたい事を話して貰うなら、少年のいない今しかない。


「…………………何を話したかな。

 ……多分だいたいあってるだろう………。

 ………わざわざ嘘をついた記憶はない。

 …………………ああでも、一人になった時には、

 ガキなのは見た目だけだったかな。」


かなりムッとしている話し方だ。無理もない。プライバシーの侵害だ。それでも身辺を洗われる覚悟はしているはずなのでやっているわけだし、私だって竜がいれば何も怖くないなんて思わない。

 嫌われるのは構わないけど、

 この後も一緒にいると思うと嫌だな。

ただでさえ怖いのに不機嫌だとか、最悪だ。嫌味ばっかり言われたり、怒鳴られたりしたくない。せめて暴力なんかはしないと願おう。もう、ライトニングさんに、ぴったり張り付いて貰えるように頼もうかな……。

 大事な事を思い出した。

「………ライトニングさん。この辺りで昔、

 呪いの事件があったの、聞いてる?」


「私は知ることができますが、

 話をして良いかは別の問題です。

 狼は"この辺り"の者としてどう思いますか?」


「………………。」


黙秘したいみたいだ。簡単に話せることなら最初から話していたかな。ふふ…私達やっぱり完全に悪役だ。仕方ない。解っていたけど改めて、竜の能力が強すぎる。

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