興味
降りてきた階段を戻るために重い鉄の扉を魔法で開けるイド氏を見て、ナクタ少年が平然としていることに違和感を感じる。
「普通に見てんじゃん、魔法。」
あまりに自然に通り過ぎるから、うっかり声に出てしまった。
「え?コレ魔法!?
魔石使った自動装置なんですよね?」
ナクタ少年は、びっくりしたような謎の反応をした。もしかして、当たり前に目にしていて気付かなかったのだろうか。来る時の空間魔法もそうだ。そういえば平然と通っていた。
むしろ慣れていて、知らないだけなのでは…。
「ん?カラクリとしか言って無かったか?
こちらからは調整した魔力が要るんだ。
帰る時は俺がいつも開けてただろう。」
「そんなの気付かんわ!
イドが普通に開けてるだけで、
行きと帰りで違うなんて思わんって…。」
確かに来る時の開き方は魔法ではなかった。あのカラクリは大部分が物理的なものなのだろう。製作者スゴイ。逆に帰る時はしっかり魔法である。
成程。どういう理由でそうなってるかは知らないが、女の子の来る所ではない。
「てことはもしかしてイドが造ったヤツ、
ウズラ亭の…ウチのと違うの全部!?
ランプとか、湯沸かしとか、風呂も魔法!?」
「いや、慌てるなよ。それは装置だ。
だがまあ、そうだな。
来る時の転移はただの魔法だ。
こっそり俺が奥から呼んでるだけだからな。
動力だけのヤツなんかは、
どっちかというと技術なんだけどな。」
待て待て。
ナクタ少年がいっそ気の毒だ。せっかく目にする機会が在るのに、どうしてこんな魔法弱者にされなければならないのか。
余計なことは吹き込みたくなかったとか、
そういうレベルじゃないでしょ。
空間転移なんか並の魔法使いは出来ないし、
凄い事が当たり前の感覚は危険じゃない?
本人は魔法使えないのに。
先程の話といい、イド氏は中途半端が許せないタイプであるらしい。魔法や装置のことにかけては、ちょっと難しい職人気質のところがあるようだ。
「便利に自動化してるんですね。」
「……まぁね。お恥ずかしい限りだがね。
やっぱり俺は、こう言ったらなんだが、
この地で活きるのが、呪い(まじない)なら、
呪い(まじない)でいいと思うんだ。
魔法でないといけない理由はない。
変に教えちまうと、悪いかもしれないからさ。
こうするしかなかったんだよ。ここでは。」
…成程。キチッと周りに合わせておかないと不安なのか。それで自分が弾かれたから、とかいう経験上の持論なのかもしれない。
…とは言っても自分には必須だから、
使うところを見せないで使う。
そういうことか……。
オッサン、てか、
お父さんがよくやるヤツやん。
さっきも言い訳がましい言い方をしていた。わかっててやってるんだから口を挟む所でも無いんだろうけれど、本人が気付かなくても魔力や魔法は其処にある。有るものは有るんだから、ヤバイものはヤバイってちゃんと言ってあげた方が良いと思う。
面倒くさいのかな…?
魔法の世界の奥深さ故?…知らんけど。
正直、必死になるのはユイマにも魔力感知の能力がないからだ。精霊布を失ってから大事なものだったと知った私が、それでも平気なのは竜がいるからである。魔法使いなら誰でも、自分が魔力を使える以上は外の魔力から身を守る事を考えるものであり、知るほどに必須要件になってくる。
要するに魔法使いの目で見ると、ナクタ少年はゴリゴリの上級魔法と強魔力の中で全くの無防備なのだ。怖いもの知らずにしか見えない。
庇護下なのだろうが不利益しか被らないという、イカントモシガタイ境遇だと私は思う。
ミズアドラスはそういう処、でいいのかよ。確かに魔法の世界を知らなければ大した問題ではないのかもしれないが。
まぁ、心配する理由は解ったわ。
言い訳してるところといい、
責任を感じて無いわけでもないのかな。
…フゥン…………………。
俄然、気力が湧いてきた。
胃はムカつくし気分も悪い。それでも、死んでいた目は意識して瞬きを繰り返す。
私は私として、しっかりしていなければ。少年はやはり、少年でしかない。私がやはり、現代世界のぼっち受験生(底辺)であるように。




