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礼儀


「名前聞いてもいい?その人の。

 何か頼みがあるなら、会うのも

 一度きりってわけじゃないでしょ?」


「それは、いいですけど…。

 あ〜でも、あんまり意味ないんですよ。

 本名じゃないし、フザケてて。」


「本名じゃない?…あだ名だけで通ってるの?」


「…まぁ、そうです。

 ……………言っちゃうと、吸血族のオッサンで。

 でも本当に、怖いことはしないですから。」


「え!?吸血って………えぇ〜っと………。

 ……あ…もしかして、超長生きだから…?」


「なんか、名前なんかどうでもいいとか、

 勝手に付けろとか言ってくるくらいで。

 それでも相手見て全部覚えてるから、

 すげぇなとは思いますけど。」


「へぇ~〜…、それはスゴイね。」

珍しい。ユイマも初めて会うことになる。エルト王国にも少数ながらいるはずなのだが、彼女の身辺近くには、その噂すら聞いたことがない。

吸血族というのは、吸血鬼ドラキュラのような人の血を吸う怖いモンスターではなく、食糧として動物の血液や内臓を摂取する人達の事だ。種族と呼ぶには曖昧な存在で、様々な種族に一定の割合で誕生する突然変異のようなものであるらしい。理由はよく解っていないというのが正しいのだが、勝手様々な言われようで迫害されることも珍しくないと聞く。

魔法適性がとても高い事で知られていて、エルフと比較されることも多い。ヒトから見ればお化けのような魔力量を持つエルフ程の巨大さはないが、生まれつき洗練された密度の濃い魔力を持つ者が極端に多く、吸血族は他のどの種族より魔に近いと考えられている。(ユイマの教科書通り)

正直ユイマは会ったことも無ければ、そんな違いを実感したこともないわけで、教科書の言ってる事もちょっとよく解らないのだけれど、魔に近いというフレーズは、恐れをもって語られるものであるから、人々には吸血族は恐い種族という差別的な考えを持たれているようだ。少数派はいつも隅に追いやられてしまうものであるらしく彼等もまたひっそりと息を潜めている。

 前々から違和感を感じていたのだが、ユイマの学校は学習内容を常識として植え付けがちである。…いや、教科書ってそういうものか。もしかしたらユイマが固く思い込みがちなのかもしれない。中身が私だから疑ってもみるが、本人ならそうはいかないだろう。だから少年は一生懸命否定しているのだ。勉強熱心なだけで差別が常識として身に付くとしたら、なんだかエルト王国もどうなんだろな。

とはいえ食糧として同族もイケてしまう事が大昔の飢饉の時期にバレているから、実のところ何とも言えない。その後、徹底的に排斥されて大人しくなったという流れなのだ。

勿論何の罪もない吸血族も大勢いたはずで、そういう人達には理不尽極まりない処遇である。

 難しいな〜。感情的に無理かなぁ〜。

 確かに怖いっちゃ怖いもんね。

 …けど食べ物にさえ困らなければ、

 別格に有能な魔法使いらしいから、

 敵にするのは損な気がするけどなぁ。

ユイマの知識を借りながら、これから会うことになる人物に対して自分のスタンスを固めようとアレコレ想像してみたりもするのだが結局こういうのって、会ってみないと解らない。それが礼儀として正しい気もするし、あまり上手く嘘は付けない性格だという自覚もある。

ただ一つだけスッキリわかった事がある。

今から会うのは十中八九、あのやたら高性能なランタンの製作者に違いない。

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