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想像


 ごはんを伝えに来たリッカ少女は聞いていた通りのがっしりした体格ではあったのだけど、彼女をデカいというなら現代世界の私だってかなりデカいということになってしまうから認めたくない。つまり少女は年相応のマッスル女子なだけであった。

 肉付きがいいのは確かだけどさ、

 んん?筋肉がデカいって意味かな?

薄手の服の上からでもわかるくらいだからちょっとスゴイ。少なくともヒトなら相当鍛えていないと、こうはならないメリハリの効いたスタイルだ。ナクタ少年より頭一つ分も背は高くて、切れ長の目と慎重さを感じる清廉な面持ちが、お世辞でなくカッコイイ。


「おはようございます。

 …食事の後に、母が話を聞きたいそうです。」


「あ、はい。おはようございます。」


階段を降りた先のバーカウンターに進んだところで先に来ていたリッカ少女から挨拶をしてくれた。少し驚いて間抜けた返事をしてしまう。

 母…。……ちゃんとしてる。

ママさんの事だろうか。リッカ少女は緩いくせ毛をショートボブにカットしているが、赤い毛色の鮮やかさはよく似ている。言葉使いから表情、服装までが落ち着いていてカウンター内にいると本当に大人がいるようで、この店のママに見えてしまうくらいだ。

キレイに磨かれたカウンターテーブルの上には木製の皿とコップが並べて置かれ、二人分の食事が用意されていた。朝食は茶色いパンで挟んだサンドイッチのようだった。


「おばさんが用意してくれたものです。

 ナクタがいれば大丈夫だろうけど、

 お客さんが来ても断わって下さい。

 時間外だから。」


簡潔に言い残して、リッカ少女は竹の扉の向こうにスタスタと帰っていった。どうやら泊まり客は他にいないのか、既に出て行った後であるらしく客と言えるのは私達だけだ。

 おばさん……ママさんは母親じゃないのかな。

 確かに、雰囲気が随分違う…。

更に気になるのは、ナクタ少年がスルーされている事である。狸寝入りの竜を部屋に置いて出てから階段も少年に続いて降りて来たのだし、ずっと私の前を歩いていたのだ。今だってすぐ隣に座っているのに目に入らない訳が無い。少年も少年で無言のまま、わざとらしくそっぽを向いている。

 これは……つまり……。

 13歳らしい行動…ですよね?お二人共。

 …なんか気まずい事でもあったの?

ガーディードにも思春期が在るのかどうかは知らないのだけど、現代人の私としては、もうそうとしか思えない。

想像が膨らむほど二人の関係が気になってくる。お互い無視している割にはさっきまで普通に話していたナクタ少年の口ぶりからは嫌っているような気配は微塵もなかったし、ママさんは確か私と同室を提案した少年にリッカ少女が何ていうか…とか何とか言っていたではないか。

 まさか私が原因!?

 …いや、そんなタイプじゃなさそう……でも…。

 少なくとも周りから気を遣われるくらいには、

 何かアリそうな関係ってコトだよね?

 さては拗れて治すキッカケが…ってトコかな?

呑気に恋バナなんて場合じゃないのはわかってるけど、こういう話は自分でも不思議なくらい自然と盛り上がってしまって手に負えない。


「……なんか、面白かったですか?」


既に分厚いハムチーズサンドを半分以上も口にしまい込んでコップの水で流しながら、ナクタ少年が怪訝そうな顔をしている。一人でニヤニヤしているからだな。

「ごめん。」

 フフ……13歳に幸多かれ。

それだけを願い、なんとなく朝からゴキゲンで充実した気持ちを勝手にもらった私は、ゆっくりと、さて頂こうとサンドイッチの皿を手元に近づけたころで想像以上のチーズの臭さにうっかり眉間に深めの皺が寄ってしまい軽く身体が震えて脳天に抜けた。

どれほどの間か、思考が停止して口に入れるのを諦める。それでもやはりお腹には何かしら入れておきたいから、結局チーズだけを引っ張り出してナクタ少年に食べてもらったのだが、信じられないという顔をされた上に小さな子供みたいだと強かにツッコまれてしまった。


そんな細やかな幸せをブチ壊す事実を知ったのはナクタ少年が食事を終えて、私が弾力のあるハムと格闘していた時の事だった。

分かり易く言うとリッカ少女の母親は、この辺りの金融業に通じている女ボスのような存在であるという衝撃の新情報をナクタ少年は当たり前の事のように言ってのけ、さらにこれからその大物に会って話すに当たって守らなければならない注意事項とやらを慣れた様子で話し始めたのである。

 いや、あの、ちょっと待って。

 イロイロと急展開過ぎてヤバイから。

努めてなんでもない顔をしながら、この領国でユイマのお金の知識がどの程度当てになるのか考えてみたのだが、そこはやはり貴族の令嬢。そもそも庶民のお金の流れについては大して興味もないのか引き出しも何もなくて再びワタシは思考停止に陥ってしまったのだった。

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