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趣味


 壁に掛けられたランタンは既に明かりが消えていた。趣味という程ではないけど、ログラントに来てから魔法が使われている物はちょっと気になっている。私には解らない事もユイマなら見てみたら何かわかるかも、と彼女の知識に期待する自分が居るのだった。見ただけで理解が出来る感覚は気持ちの良いものだ。スラスラ知識が出てくる。勉強が出来るって素晴らしい。


 早速手に取って良く見てみると、ろうそくの代わりに火を灯す小型魔法具に切り替えスイッチ付きの駆動回路を通して魔石から魔力、つまり魔法具を動かす動力が送られる仕組みだ。

電気機器に似ているが、そもそも魔力はそのものに力が宿るので、電気のように圧力を掛ける使い方はあまりしないし、空気中を自由に走り回るような性質も持たない。ユイマの知識に従う限り、人為的に操る方法はすべて魔法であり、魔と魔力は厳密には違う意味を持つ。

魔力は様々なところに存在して滲出し霧散し流動するのであるが、意思を持つかのように凝ってみたり泳いでみたりもする。重さを感じさせない水銀といったイメージが近いように思う。重力と電気の影響が無い代わりに互いに引き合う引力を持つところが大きな違いだ。魔は魔を寄せると言われている。理由は解っていない。ログラントの自然界では純粋な魔という存在には滅多に遭遇するものではなく、だいたい何かに混ざっている。人がそれらを定着させたり合成したりするには魔法や魔術が必要になる。

魔力を持つ者は自らの内にも同じ性質を持つために呪文や術などで同調し引き寄せて周囲の魔力を利用する事も出来る。自らの、又は呼び寄せた魔力を用いて様々な形に扱う事が魔法を使うという事である。魔力を持たないものは通常は水のように表面を滑るか透過してしまう。呪文等によって操る事で火や水などの特性を付与され、魔力を持たないものにも作用するようになるのだ。


 魔力駆動回路は一般に魔石などの魔力を宿すエネルギー源から魔力を引き出して動力とする時に使われる。魔力が駆動する回路というと意味がわからないが、全体的には魔力を用いて駆動させる装置の為の魔力制御回路である。ややこしい。通常は呪文や魔と親和性の高い素材を用いて魔力を誘導し、必要量に合わせて減衰又は増幅させたり密度調整を行う為に駆動する。電気で例えるならコイルやヒューズや抵抗のようなものである。

魔力駆動装置とは広義には複数の回路と魔法陣や魔石などを駆使して設計された魔力を動力源とする装置全般を指す。これも紛らわしいが、複数の魔石や人から魔力を集めて収束、収斂させることで高度な大規模魔法を可能にする発動装置もあるのだ。というか最初はそれが目的であった為の呼び名である。ややこしい。今では風や雷のような自然エネルギーを利用しやすくする為に魔力と合成したり(精霊魔法なら出来ることを装置で無理矢理やってる。雷については前述の通り難アリ)、取り込んで魔力を抽出する装置も開発されているらしい。実体としては大部分がカラクリのような物理システムとして組み上がる事が多い。エンジンだったり湯沸かしだったり変換器だったり用途に合わせた様々な装置が存在する。

中には発現する現象から再び魔石に力が還元されるように創られている逸品もあるという。非常に賢く考えられた上に上等な魔石を使った優秀な品だけが可能な最先端技術である。


 今目の前にあるのはそんな強力な装置でも最先端の高級品でもないが、かなりの高値で需要の見込める優良品に思える。耐久性がわからないのが唯一不安材料ではあるが…。

 いったら失礼だけど、

 普通の酒場なんかにあるのは不自然だ。

 知ってたら盗まれちゃうよ、こんなの。

正直、私が欲しい。魔法具の細かさといい、手先の器用な魔術師様がお造りになられたのだろうと推察する。魔石もおそらくこの地方のものだろうから上質な高級品ではなかろうか。

ちなみに魔石は元々天然資源で、岩石の中の数種のものが魔の住処の近くで魔力を吸収して溜め込んだものである。原理は未だ解明されていないが、それらの岩石は魔石となると、ほぼ永久に魔を呼吸するように取り込み、それぞれの条件のもとで吐き出す。魔石を使った装置はほとんどがその呼吸を利用し調節して動力としていると言える。

水の竜が住むミズアドラスは魔石の名産地だ。勿論ミロスもフーリゼも、ユイマの故郷エルト王国も優秀な産出国である。人工的に造られたものも有るが、それらは充電池のように人や魔物が魔力を込めて蓄えておくものとして使われる。繰り返し使える物もあれば、すぐに限界を迎えて割れてしまう物もある。人工魔石は製作者の腕次第でピンキリなのである。比較すると天然ものは半永久的であり蓄積出来る魔力量は格段に違うのだ。

 大魔女の魔石って、それだけでも、

 かなりヤバイ物なんだよな…。

オークションにでも出したら幾らになるかなんてことも想像したけれど、現実的に考えるなら、そんな事をしようとしたら捕まるか生命を狙われると思う。

ライトニングさんが本当に雷の竜であり、世界を支える大地母神(ログラント)や火と水の竜に続くものであるなら、この石一つでミズアドラスのあらゆる装置が動かせるだろう。


補足:ログラントとは、この世界の事である。

世界にある解けない謎や不思議はログラントの与えるものと説明される。例えるなら地球そのものを神格化した呼び名だ。聖竜信仰では同じ役割に神竜カーンと呼ばれる存在が語られる事もある。

聖職者の魔法はそれぞれの神や大地母神が与える力の奇跡であると考えられているので正式には魔力とか魔法とは呼ばずに、御光とか御力とか加護とか言わないといけないらしいがエルト王国ではあまり聞かなかったようだ。魔力でだいたい通るし何なら本人達も日常シーンでは普通に使っているのであった。

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