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複雑


 悩んだ末に、私はひとつの決心をした。

部屋の隅で丸椅子に座って床の一点を見つめ続けるという陰気な姿勢の私は、ベッドの方から不審者を見る目を向けられながらも迷っていた。よく考えなければならない事だったのだ。

だが決めた。というか無理だ。どう頑張っても、私が何とか人間らしく生きていこうとするならば、この世界で誰も巻き込まないではいられない。さっきの夕食の時の事だってそうだ。私は一人で、何も知らず、何をするにも上手く出来ない。上手く伝える事すら難しい。

 …竜は助けてくれる。

 でもやっぱり違う生物?で、神様のようだ。

 理解出来ないし、されるとも思えない。

 つまり、私は…要するに、

 寂しいのが辛い…という事になるのか…。

信じられない。嘘みたいだ。自分が孤独に弱いなんて、現代世界ではありえなかった。

表面上の付き合いはあっても基本ボッチで"越えられない壁がある"と指摘された事もある。それを言われるまで全く気付かなかった生来のボッチ、雑に言うと何処に行っても浮いているダメな子が私だったのだ。一人で居てイジメられたらマズイと思う事はあっても、寂しいと思った事は無かった。むしろ一人の方が本心では快適だったからだ。孤独が自分にとってマイナスだと感じる感覚を初めて知ったと言ってもいい。

結局私は、家があるから一人でも平気だったのではないかと思う。ナンダカンダ複雑な気持ちはあるけれど、自分の部屋は確かな居場所だった。

 なんてことはない。一人で平気だなんて、

 落ち着ける場所も味方もいない環境になれば、

 訳もわからず身じろぎひとつ出来なくなる、

 儚い自分の浅はかな考えだったわけだ…。

異世界の経験とはいえ勉強になった。嫌になるくらいに。

嫌になるついでに言うと、竜と私は領主家の子供達が住む館を焼く原因になったかもしれない存在だ。誰かを巻き込んだりしてもいいのだろうか。悪い事なんじゃないか。

……それでも。私だって、自分自身を守りたいし、この異世界で野垂れ死にたくはないのだ。つくづく、本当に、自分が嫌になるけれど。

「…ナクタくん、魔法が見てみたい友達って、

 このウズラ亭の子なの?」


「ウィノは違うよ。ウズラ亭はリッカのうち。

 さっきは店にいなかったけど。」


「ウィノ…くん?」


「ウィノは男子だけど、リッカは女子。」


「なんで魔法が見たいのか、聞いてる?」


「あぁ。アイツね、騎士物語とか大好きでさ、

 自分は強くないんだけど、魔法使いに憧れ?

 なんかそういうの持ってるから。」


「あぁ〜、憧れかぁ…。」

 ………巻き込みにくい。…やっぱり諦めるか。

魔法の世界に興味がある子ならともかく、物語に憧れているのでは話が別だ。魔法は良くも悪くも主体的であるべきとされる。行為には結果が伴うものだから、それなりに覚悟もいる。安易に引っ張り込む事を躊躇してしまうくらいにはユイマも色々あったのだろう。

私には魔法の世界の何たるかを語るほど誇れるものは無いわけで、ヘンな感じだけどこれは私の感情ではないと思う。この躊躇いは記憶か知識なのではないか。つまりユイマの常識的な考え。普段なら何も考えずに進めるのだが、疑いというか、迷いというか、判断に困る。これまでの事が影響して無意識にこうなるのかな。結構色々とユイマの常識とは違っていたから。思い返せば、ログラントに来てから今まで私は思考のほとんどをユイマの知識と常識に任せて自分自身は放棄していたわけだ。

 情けない……のか?

 いやむしろ考えてどうなるんだ、異世界で。

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