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罪人


 捨てる神あれば拾う神がいたのかと思ったら、連れて行かれたのは針のむしろの上だった。許されざる無自覚な罪人である私はこれから厳格な裁きを受けるのだろう。魔女の名前に相応しく。


 私ことエルト王国立リーゲル精霊魔法学校六回生のユイマ=パリュースト子爵令嬢には三人の兄妹がいる。長兄フレイド、次兄エンディック、妹リアナ。

男子は王国立魔法学校を卒業しており、女子は同じ精霊魔法学校に通っている魔法教育一家である。長兄フレイドは父親の爵位と仕事を継ぐ予定で建設に携わる既婚者。(エルト王国では親の爵位を子供が継ぐのが一般的らしい)二歳になる子供がいる。記憶を見た感じだと、顔パンパンな愛らしい女の子だ。

長兄家族は同じ敷地内の別邸に住んでいるが、他の兄妹と両親は同居している。飛び抜けて裕福という程では無いにしても困るような事はない。私が記憶を見る限りには、上手くいっている様にしか見えない一族である。ユイマの家には一度行ってみたかった。異世界とはいえ貴族様だ。やっぱりちょっと覗いてみたい世界ではある。まぁ実際は堅苦しくて難しいのかもしれないけれど。

子爵は爵位としては高くはないと思うのだが、メイドさんやコックさんもいるらしい。さらにユイマには家庭教師も付いている。日本史で習った平安貴族はピンからキリまであるようなイメージだったのに、エルト王国では貴族というだけで相当お金持ちなのだろうか。

現代世界に同じ名前の制度があるのは不思議といえば不思議なことだ。そういう言葉の置き換えが自然なのが不思議過ぎる。すごく良く出来てるプログラムなのかなと、何者かの、多分竜の言っていた王様の、能力と腕前に感心してしまう。本当に夢のようだ。

今のところ目下の心配事は、母国にいるユイマの家族の事とユイマ自身がこの体に戻った時に何て思うか、ということ。

パリュースト子爵邸の人達は私の家族ではないけれど、ユイマにとっては大切な存在のはずだから、身バレの件をパロマさんから聞いて以来とても嫌な予感がしている。何かしら酷いことになっていたらどうしよう。それをユイマはどう思うだろう。……私のせいか。ユイマからすればそうなる。考えてみればそうなのだ。竜がどうのこうのと言ったところで理解してくれるか、そもそも話を聞いてくれるのかも解らない…。


 なんて、目の前の事態に何も出来ない時間に考えてみた。命尽きる前の走馬灯、とか言う程大袈裟な状況でもないとは思うけど、異世界に至っては予測不能なのだ。まあ、もういいや、どうにでもなれ。思い残す事はない。現代世界に置いてきた黒歴史達も主が帰らない事を悲しんだりはしない。残された人達にとって、それらは下らないゴミの山だろう。面倒でも片付けて貰うしか無い。後は、私が帰らないのなら、彼等彼女等が何を思おうが過去である。そう思って割り切れば、ヨシ。


 裁判官は声高らかに断罪する。 

「大魔女を詐称するなんて、

 なんて馬鹿な、怖いもの知らずの小娘なの!!」


"ウズラ亭"と書かれたウズラらしいまんまるな鳥の形の看板が入口ドアの覗き窓の下に掛けられた飲食店(バー?)の女性客Aは、開口一番そう言った。

「あんた、何を考えてるのか知らないけど、

 店に迷惑かけちゃダメだからね!?」


「この辺りは憲兵も見廻ってんだから!」


「私はここに呑みに来る楽しみの為に、今日も

 一日働いてきたんだから、やめてよね!」

だいぶ出来上がっているらしく、とにかく声が大きい。店には他にも三人ほど客がいたが、最初の一声で全員がこちらを向いてしまった。

止めてよね、と言われても私が名乗った訳では無い。すべてはナクタという少年の紹介である。女性客に紹介した訳では無い。カウンター向こうにいるママさんに話しているのを勝手に聞いていたのである。…理不尽。

私は竜を抱えたまま、五つしかないカウンター席のひとつに腰掛けている。隣にはナクタ少年。明るい赤毛をお団子髪にした美人ママさんは背の低い湯呑みに透明な、多分お酒をついでいる最中だった。次々まくし立てる女性客に対して少年は落ち着き払って説明を続ける。

「大魔女じゃないって。竜を連れてるだけ。

 そりゃ、魔女かもしれないけど、

 それだけで迷惑ではないだろ、ばあさん。」


「へ?…ばあさん?…私!?」

……ナクタという少年には、何か、物事を荒立てる才能でもあるのだろうか。

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