表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/160

神話


 水の竜の名前はセオリアといった。

大昔に生きた最初の友人が名付けたものだ。


 今の時代には主に物語として語られる初代ノエリナビエは、ジャシルシャルーンの少女だった。

聡明なノエリナビエは、大きな魔力を持ちながら力に溺れることなく周囲の大人にはひた隠して生きていた。ジャシルシャルーンの小さな集落の社会では、先人達と異なる考えや新しい力は排斥の対象であり、虐待されるか追放されてしまうことを固く教えられていたからだった。出稼ぎに近くの町に出ては魔術を探究する術を探していた。

 ある時、宿場の一角で魔法の道を説く一人の魔女が彼女の才能と人柄を好ましく思い、同志に迎えようと申し出た。ノエリナビエは弟子として魔女に付き従い、魔術と魔法を広く学ぶことを決めた。


 火の竜に呼ばれてログラントにやって来た水の竜は、知恵と力を与えた人類から、今度は追放されようとしている火の竜と友人である魔法使いに話を聞いた。火の竜はリュートという名前をもらっていた。魔法使いの名は今はもう残っていない。火の竜の偉大な力を理解して味方につくのは、ごくわずかの才能ある魔法使いと魔女だけだった。

 友人は魔法使いの仲間から、ネルロヴィオラと名乗る魔女を紹介された。魔女は魔法と魔術を求めて世界を巡る旅をしていた。火の竜に未知の力を感じ取り、心から火の竜を敬い、その知性と力に憧れていた。竜のためならどんなに辛い状況も我慢出来たし、魔女と呼ばれるその強大な魔力は様々な場面で味方を助けた。魔女達も傅く魔女、大魔女という言葉が彼を讃える為に生まれた。

 すぐに偉大な力をも滅ぼそうとする民衆は窮地に立たされるが、火の竜は勝利を望ましく思わなかった。人類の生きる為の活力を奪うことは本意ではないし、魔法使い達と生きた魔物である竜属が民衆の中に悪の印象を与えたままになることも心配していた。


 話を聞いた水の竜は、自分の役割を理解して友人を求めた。ネルロヴィオラには弟子がいた。共に遠く海を越えて来たノエリナビエである。すでに活躍していたネルロヴィオラは水の竜の側にはつけない。魔女は水の竜に面会を求め、優秀な自分の弟子こそ水の竜の友人に相応しいと推薦した。

 水の竜に認められてノエリナビエは友人となり、共に人類に新たな知恵と力を与えて対する民衆を助けた。さらに彼女は丁寧に水の恵みと竜の神秘を説き、彼等の信仰を得た。信心深いジャシルシャルーンならではの方法だった。


 かくして火の竜と水の竜の争いは起こり、水の竜にも多くの魔法使いが共感した。

しかしこの対立には、火の竜の友人が当初から反対していた。火の竜の考えが、あまりにも甘いと感じていたからだった。友人は争いの中で姿を消し、いつの間にか水の竜を勝利に導くことに傾向していた。火の竜はすべて承知の上で、それを止めることはしなかった。この行動に納得出来なかったネルロヴィオラは反逆者として火の竜の友人を捕らえようとした。

 仕方なく火の竜は、後に魔石と呼ばれる石を生成してネルロヴィオラに渡し、新たな友人とした。この魔石こそ友人の証であると魔女に告げて、友人に特別な権利を与えた。

水の竜もまた、それに習った。


 互角に競合い争い合いながらも、魔法が人々の生活を荒らすだけではないことを見てきた人々は、魔法使い達とその力を信じるようになる。ノエリナビエは貧しく苦しい暮らしの中に魔法を役立てる方法も広めていた。

高度な知と魔法は否定を逃れた。

ネルロヴィオラは勝利を謳い、ノエリナビエは正当を説いた。互いに話をして決めた事だった。

争いの理由が薄れていくと、事情を知る魔法使い達は散り散りに別れて行った。彼等は世界各地に魔法と魔術が根付く元となった。頃合を見て水の竜もノエリナビエと共に海を越えて大陸に渡った。

 勝利を宣言したネルロヴィオラには、味方に与える義務が生まれた。与えるものの為に奪う事を正当としなければならなかった。火の竜の友人である事とその性格から、炎嵐の大魔女と呼ばれるようになった。

やがて起こる大戦の頃には、火の竜と大魔女は大国の礎を築いていた。

 偉大な力も追われる事の摂理を説いたノエリナビエは、力など無くとも一丸となり慎ましく在る民衆の姿を清く美しいと讃える考えを広めた。水の竜の友人である事とその思想から、清流の大魔女と呼ばれるようになった。

やがて起こる大戦の頃には、水の竜と大魔女は故郷のミズアドラスに密かな聖地を築いていた。



「……というのが歴史としても正しい、

 とされている流れに、私自身が

 この地で得た見聞を取り入れた物語。

 今の竜…私の母国では聖竜と呼ぶのだけど、

 聖竜と大魔女の考え方の元となる話です。」


 …………やっと終わった。

長い。本当に長かった。足湯の状態とはいえ、かなり身体全体が温まるものだ。熱気と堅苦しい話とで息が詰まるようだった。

 最後にもう一回身体を流そう。

 聞いてる間にまた汗かいてきた…。

いろいろな話と言うから何かと思えば、パロマさんは一方的にログラントの神話を語り始めた。古代と呼べる時代のものだから、どれほど物証が残っている話なのか解らないが、これが竜と隔離してまで話したかった事なのだろうか。全く意図が読めない。

 こんな長い話されても覚えられないんですけど。

 もう最初の方なんか思い出せないし…。

「その時代の歴史はあまり知らなくて。

 こんなに詳しく聞いたのは初めてです。」

適当に感想(というか事実)を述べてみせたが、正直何と言ったらいいものか困る。とうに頭ものぼせてきているのだから考えも纏まらない。

パロマさんは何故か、したり顔をしているように見える。なんだろう、この人、面白いな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ