入浴
廊下まで湯気と湿度を感じるお風呂場には、脱衣所の前に水回り専門の使用人を名乗る男性(多分)が待っていた。さっきはいなかったのに、どこから現れたのか。
ドアの向こうを実際に見せてもらい、パロマさんからお風呂の使い方を簡単にレクチャーされて、基本的には日本とそんなに変わらない事を知る。見た目も、ただ浅いだけで、風呂は風呂だった。トイレもそうだったが、水回り設備の周りにはタイルを使う事が多いようだ。タイル貼りの細工は精巧で美しいし、石鹸もあるし(髪も石鹸で洗うのは物足りないけど)、スポンジのような繊維質のモジャモジャ(正体不明)や、タオルのように使う布も貸してくれた。お湯が少なくなると、外から継ぎ足すという。男性がカタコトで、必要なら呼んでほしいと言って出ていったが、どうやって足すのか分からないから、呼べるわけがない。まさか男性が入って来るわけでは無いだろうけれど。
「分からない事もおありでしょうから、
ご一緒させてもらいますわ。」
パロマさんは、すでに竹製の籠を二つ手に持っていて片方をこちらに渡してきた。私の籠には服が一揃い入っている。
「お着替え下さい。
そちらの服は洗っておきましょう。」
「……ありがとうございます。」
びっくりするほど至れり尽くせりだ。
名誉挽回のためとはいえ、エルフにおもてなしの心を見せて貰える機会なんて滅多にない。(あくまでもユイマの知見に依る)
私自身はファンタジー小説やアニメでしか知らないエルフという種族が、すぐ隣で入浴の用意をしているという現実がシュールで信じられない。
私が男子だったら大喜びするところかな。
年齢不詳の美人…でもオトナだ。かなりの。
話し方とか、お母さんみたいだし。
服を着たままでもスタイルの良さは分かったが、服を脱いでもやはり美しい。他人のものとはいえ、腕で身体を隠しながら歩く私の前を、隠す必要などないとばかりに颯爽と歩いて行く。ユイマは日本人の目で見るとスタイルがいいのだが、恥ずかしいのはまた別の問題だ。自分にコンプレックスがあるから余計に気になってしまう。
やっぱり、あまり見ないようにしよう…。
裸まで隈なく見てしまうのは罪悪感もあった。
「最初に身体を洗っていただきます。
この椅子と桶を使って下さい。
石鹸を流すお湯はこちらからお使い下さい。」
湯船とは別に、丸くタイル床が掘ってある。上から流れ込むお湯が貯めてあり、掛け流しのようだ。
一通り説明を終えた後でジッと私を見て、
「後でいろいろとお話をしましょう。
湯船は膝下まで浸かるのがマナーですの。
ゆっくりお話ができますわ。」
そう言って、また微笑むパロマさんは悪い人には見えない。裏がないわけがないとは思いつつ、気安く話して良い空気を作ってくれている。
上手く聞き出したいのは、お互い様かもね。
竜といない私に何の価値があるのか解らない。本物の魔女が考えることなど、所詮私には想像できるものではないのだ。




