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隔離


 四人はこちらを見ると、深々と頭を下げた。この辺りの挨拶はまず深い礼から始まるらしい。正しいやり方が分からないので、また会釈で誤魔化す。魔導ローブを着た領主と思わしき人物よりも先に、艶やかな洋装の壮年女性が前に進み出て来た。

「偉大なる雷の竜と大魔女様には、

 大変失礼なことを致しました。

 改めてお詫び申し上げます。」

こちらを見て両手をお腹の辺りにおき、また頭を下げる。波打つ金髪に碧眼の顔立ちも、その所作も美しい。顔を改めて近くで見て、やや長く尖った耳に気が付いた。ハッとするのと同時に大きく息をついて納得する。

 そりゃ魔女でしょうよ。そりゃそうでしょ。

エルフだ。イメージより耳が短く違いが分かり辛いから、混血という事も有り得る。成人のおよそ半数が魔導士だと言われる彼等もまた、魔法と共に生きる種族だ。魔法の知識とプライドにかけて、その比喩は決して大袈裟ではない。魔力量はかなわないし、魔法の才能のない人間には、興味を持たないなどと噂されている。言語はラダさんやルビさんより流暢に使い熟している印象だ。ユイマと近い地方の出身だろうか。

「お食事の前ですが、先程ルビから、

 お風呂をお勧めする機会が無かったと、

 聞きました。申し訳ありませんでしたわ。

 宜しければ、私がご案内致します。

 先にお体を流されてはいかがでしょう?」

清々しい。腹の据わった人だ。

どうせやった事はバレているのだし、嘘もつけないのだから無駄は省くに限る。自己紹介などしない、させない。そしてやはり、まずは竜と隔離する。ブレないな。流れるように手際よく合理的。

私は単純に、それを待っていたんだよ、と言いたくなる提案をされて勿論すぐさま飛び付いた。

 ……ふふ、見透かされている。

 だが、それが何か?許したわけではないから。

 お風呂を逃す選択が有り得ないだけだから。


「長すぎるのは良くないですよ。」


「大丈夫。少し待ってて。」

変に長風呂を心配する竜に一声かけて、今度は奥方様について行った。

竜は珍しく浮いたまま私を見送っている。一緒にお風呂に入りたかったのかな?いや、いつでも行けるのでしょ、貴方は。話をする生き物は人間扱いだ。男か女か解らないが、声がイケメンだから、なんとなく、ナシだ。待たせてしまうけれど、あちらはあちらで魔法なんかの話でもしているのだろう。

 ……そういえば、竜の声はどうなってるんだろ。

 一対多でもみんな同じように聞こえるのかな。

 何人までとか、どこまでとか決まってるのかな?


 水回り設備は纏めてあるらしく、通って来た通路を引き返して階段近くまで戻ってきた。無言のまま前をスタスタ歩いて行く奥方様は、いかにもといったデキるオンナではあるが客人のもてなしはルビさんの方が心得ている感じだ。考えてみれば、領主の娘がなんで使用人みたいな仕事をしているんだろう。大魔女様に覚えてもらう為とか?ありそうだけど、すぐさま出来るものかな?……知れば知るほど謎だらけだ。


「ミズアドラス領主の妻、パロマです。

 元々はフーリゼの魔導士でした。

 まだこの国に来て二年ほどの新参者ですわ。

 よろしくお願い致します。」

歩きながらこちらを振り返る美貌の奥方様が、初めて名前を名乗った。フーリゼ共和国とは、ユイマの住むエルト王国の北に位置する国で、すべての魔法使いの目指す国と言われる魔法大国である。世界で最もエルフの人口が多い地域とされており、エルト王国が魔法教育に力を入れるのも近隣にフーリゼがある影響が大いに関係している。

「ユイマ=パリューストです。

 あの、泊めて下さってありがとうございます。

 こちらこそ、よろしくお願いします。」

一応の挨拶と最低限のお礼はどこかで言わなければと思っていたから、ようやく果たせてスッキリした。奥方様、いやパロマさんは明るく笑っている。どういう意味か計りかねる笑顔だ。やはり気になってしまうのは、まんまと竜から離される訳だけれど、そもそも狙いは何だったのか、という事。多分、竜については私よりも詳しいはずだ。そうでなければ一連の不可解な言動が説明できなくなる。

 話をする機会は欲しかったんだけど、問題は、

 私が上手く聞きたい事を聞き出せるか、だな。

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