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理由


 ラダさんが部屋を出たのは、もう日も暮れる頃だった。お腹も空いたし、慣れない話を聞いてどっと疲れた。

 ここに来てから、ろくに動いてない。

 食べて寝てばかりじゃ太る……嫌だ〜〜。

明日こそは外に出してもらえるはず。気分転換もしたいし、何よりもったいない。

 せっかくミズアドラスに居るなら、

 清流の大魔女の聖殿でも見物に行きたいなぁ。

 古くからいる水の竜は、やっぱり

 こんなに小さくはないんだろうな。

今度はベッドの上で腹を見せて寝ている雷の竜をチラリと見ながら考える。

 ……コイツも疲れてんのかな。

一般人が竜や大魔女に会うことなんて滅多に出来ないけれど、雷の竜が一緒なら不可能ではないかもしれない。会話も自由になったことだし、これからは開き直って、このログラントで見聞を深めるのもアリではないか。

ちょっと楽しくなってきた。

改めて考えてみれば、竜といても大魔女と呼ばれる私だけはこの小石のおかげで支配を受けないのだ。それだけでもなんだか特別感がある。

 ………………ん?

 そういや、何て言ってたっけ……

 "魔女と我々の力を繋ぐ石"。

 ……てことは、もしかして、この石ころが、

 大魔女の魔石!?

 まさか…………いや、そうとしか……。

……まあ、いいや、竜が起きたら聞いてみよう。


 実際そんなに浮かれていいわけじゃないのは、わかっているけど、怖がっていても仕方ない。

竜はこの世界にある限りそういう存在で、人々は其れをきちんと受け入れている。それだけのことだとも言える。

理屈の解らない力、支配出来ない存在。竜のすることは誰にも止められない。些細な事など気にしない態度もそのせいだろう。正しく、本当に、人の力の及ぶ範疇を越えた存在なのだ。

そういえばユイマは、竜達が住んでいる場所も正確には知らない。

水の竜はミズァドラ湖に。

火の竜は北の大国にあるマフー大砂漠。

どちらもその何処か、としか………。

大魔女なんて、城やら聖殿はあるけれども、そこに本当に住んでいるかなんて、考えてみたら、解らない。聖職者や魔女達に守られているらしいけど。


 竜達と人類との唯一の接点が大魔女の存在。

大魔女は特に女性とは限らない。

魔女の呼び名がそうであるように。

 ……三人目の大魔女………。

奥方様の発言は、もはや予言だ。

例え結界に何かしらの装置が仕掛けてあったとしても(通信機好きみたいだし)、雷性の竜属生物なのは判別出来たとしても、三人目の大魔女という言葉は普通には出てこない。

竜にしても、ただ竜と呼ぶなら解る、竜属全体を指すからだ。(竜の眷属。竜族とも呼ぶ。大魔女の友人の友人達は皆友人、と見做されている。)

しかし、"〜〜の竜"と呼ぶのは大魔女の友人だけである。つまり、魔石とともに継承される友人関係を持つ竜だけなのだ。これは意外と厳格に、そのようになっている。暗黙の了解というか。不用意に使うのは、不敬なのである。

魔法使いなら、しかも魔女と呼ばれるような人なら間違うはずがない。

雷の竜、雷光の大魔女。

……まるで最初から知っていたかのようだ。


竜がこの地に来た理由があるはずだった。

助けてほしい人とは、グラ家のことではないように思える。竜はまだ何も動いてない。

 むしろ奥方様が怪しい……

 いや、助けてあげ……るのか?

 覗き魔なのに?

話を聞く限り、あまり助けが必要そうにも思えない人のようだけど……。まあ、ラダさんを見ても同じ事考えてた気がするな、私。

前に言っていた、ファルーの子らとか何とか、その人達に関係しているのだろうか……。


何となしに竜に目をやると、バッチリこちらを見ている。起きとるやん。


「私に聞きたいことが纏まったら、

 何でも教えて差し上げますよ。」


気のせいか、急に心を読むようになってないか。

そして変に嬉しそうで気味が悪い。正直。

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