名前
ひとつ、思いついたことがある。
今更だけど、私達は自己紹介がまだだった。
「……私も"雷の竜の君"と
呼べばいいですか?」
せっかく自由に話せるようになったのだから、ベッドの上の竜に話しかけてみる。
丸まった竜は、顔を上げた。
「君、ではおかしい。
私は君子でも君主でもない。
竜は竜でしかないのだから。
魔女には友人として呼んでほしい。」
イキナリどうした。普通に話せるんじゃん。
……というより、合わせて来たのか。
私が本来どんな話し方をするのか、
解らなかったもんな。
「……だったら……。」
詰まってしまった。まさか任されるとは思わなかったのだ。
え〜と、雷、だと芸人みたいだし。
雷光、だと私もセットだから紛らわしい。
ビリビリくん、とか、竜さん、とか……。
商品名だったり、男らしすぎるイメージが……。う〜〜〜ん。
「……ライトニングさん、でも、いいですか?」
安直だが、英語から。偉い竜だからさん付け。
あまり意味はない。
「了解しました。
魔女は名前を持つのですか?」
「……有りますけど、いりません。
ライトニングさんが付けて下さい。」
可哀想な娘みたいな台詞だが、本当の事だ。
「我々には、魔女は魔女です。」
そっか。
……あんまり人間に区別付いてないっぽいな。
そういえば、自分で付けた呼び名が何処かで見た某大作ゲームキャラと同じだったわ、というのは後になって気付いた。
まあ、いいか。本人が知るわけないし。