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個性


 異世界であるせいか見た目ではそうは見えないが、チュウニだったりヤンキーだったりする精神の持ち主がログラントに居てもおかしくはない。現代世界では普通にそういう大人もいるから、あれはもう只の個性だろう。私という精神が個性を保ったまま大して混乱なく存在し得るこの世界では、それらもまた存在し得ると考えられる。私個人には祝福とやらが何かしら調整しているらしいけど。

 つまり現代世界とさして変わらず。

 中学生はあんなもんだと思えば……、

 ……まぁ、だから嫌だったんだけどさぁ…。

今迄何となくウィノ少年とは距離を取ってしまっていたのだが、ようやく自分の感じてきた違和感の正体が解った。ウィノ少年は相手側に綺麗な(ハイソとも言える)対応を要求する。だから私みたいな、そんな世界は知らないという人間には話が通じなくなる。即興で彼に合わせて話せれば問題ないのだろうけど、私に言わせれば、そのプレッシャーに応じなければならない義務などない。その逡巡でバグるのだ。何を言われているのか解らない、と思ってしまう。知らないものは知らないのだ。他人の住む世界をそんな簡単に理解出来たら誰も苦労しない。

 ……私から理解しようとしないと、

 反応が無いから駄目だと思われるのかも。

 だから現代でもさんざんに言われるのか…。



 そうは言っても苦手なのだ。だから苦手なのだ。

人は理解出来てもコミュニティが違うのは仕方のない事だ。そんな上品な世界は知らない。上位存在だろうが不自然にすり合わせる事には抵抗がある。プライドが高いと言われる程でもないと思う。誇示したいのではない。無条件にそれを捨てさせるのは訳が分からない。それだけだ。こちらにはこちらの現実がある。

こんなに古臭いのは田舎の、私の周りだけなのだろうけれど、理想的なお嬢様が正義だとされている事が、私という子女を悪としている。私を造った事実と現実を否定し、無かった事にしようとしていると感じてしまう。これはもしかしたら男女は関係ない事かもしれない。それにしても、悪いことはしていなくても悪だと堂々と言われるのは意味が解らない。

従うべきものは学んでくるべきであるから教えても貰えない。話など出来る余地はない。上にいる人は上からで、一方的に評価して決定する。上と言っても親と教師と所謂カースト上位くらいしか知らないけれど。

ウチの親なんかは好き嫌いや思い込みで好き勝手言うから信用出来ない。親の言う事だからと一応は信じてきた私は今も馬鹿を見ている最中だ。



 少年から見たら私は無知でしかない阿呆だろう。相も変わらず幼い頃に言われた可哀想な状態だ。しかしウィノ少年は馬鹿ではない。私が大魔女と呼ばれているせいかもしれないが、決して人を見下して馬鹿にしたいわけではない。先程はカチンときた言葉も、ただ自分の辿ったルートを正確に伝えようとしただけだろう。馬鹿にしているように聞こえる事もちゃんと知っていて正しく伝達したのだ。言い淀んでいたから。言いにくそうであって、決して嬉しそうではなかった。無知を無知と判断した結果だけが残酷に聞こえるのだ。

それをそのまま言葉に出すところが……嘘を付けない状態にノンストレスでいられる所以であり、そういう意味では……ボケなんだな、やっぱり。…天然というか…。

彼には自分と同じタイプか、吹っ掛けても応えてくれる犠牲的精神の持ち主でないと余裕を持って構えるのは難しいわけだ。私のようなわからず屋が距離を取ってしまうことは、むしろ自然で、間違っていなかったと思う。ウィノ少年がどう感じているかは解らないけれど。

 

 ところでファルー家の大人達は一体何をしているのだろう。領主家の方も聖殿も一大事なのはわかるけど、放置し過ぎじゃないか。民衆を収めるためにてんてこ舞いなのだろうか。見も知らぬ大魔女どころじゃないと言われればそうだが、水の竜の結界が再展開されるかもしれないという成り行きも相当なものだろう。責任ある誰かが見届けるべき一大事なのではないのだろうか?

 領主家の使いとして客人を探しに来たウィノ少年は、竜を連れているから私は本物だと判断した。だったらナクタ少年が推薦されるのも十分有る事だ。だが、大魔女様であるというのはナクタ少年から聞いた話でしかなかった。しかし竜が語りかけて聖なる竜と大魔女である事を証明した。

 証明……に、なるかな?

 ……大魔女以外は竜を見た事がない…。

 大魔女は不在。聖殿長は死亡…。

可能性があるとすれば相談役にある聖殿長が、ある程度は容姿を聞いて知っていたかもしれない。かつて大魔女だった人物もいるだろう。しかし魔法使いの常識で考えて、他言しないし広めない。ユイマも火の竜の本当の姿は知らないのだ。似ている竜に出会った時にややこしくなるからだと思う。竜だから。判断を間違うと死人が出る。(偉い人でなくても予想がつくことだ。)

何より信仰の対象であり、絵にするにも厳格だ。火の竜は想像図と明示されて認可された数点の挿絵のみが用いられるが、抽象的でサイズ感もわからない。水の竜もだいたい同じはずだ…多分。

だとすればファルー家の大人も聖なる竜の姿を知らないのだ。会話する竜は他にも在る。まだ詐欺師かもしれないと思われているのではないか。

 成程。そりゃそうかも。

 領主家の二人は"客人"としか伝えてないしな。

 大魔女ならそう伝えると思うだろうな。

正式に伝えないのは、おそらく"讃える会"を警戒しての事だ。放火テロリストの仲間が潜伏している可能性が高いのだから。

"結界を以て証明として見せよ!"ということか。つまり我々は、水の竜に結界を再展開してもらったアカツキには、ふんぞり返って偉そうにしてもイイわけですな。

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