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【プロローグ ~反逆の帝王~】

初投稿です。

何か頭脳で敵を倒す主人公に憧れて書いた作品です。主人公の戦闘のポテンシャルはそこら辺の雑兵と同じぐらいなので、俺TUEEEではありません。チート主人公もいいけど、こういう毛色の主人公も好きなのは僕だけですか。

とりあえずここに載せておきます。今日と明日で一章(48話構成)を全話投稿する予定です。つまり、一時間に一話投稿します。

因みに、本格的に戦闘の描写は23話ぐらいからです。お願いします。

 時は皇歴二〇三〇年──世界は未曽有の変革を迎えた。原因不明ながらも、はるか遠い次元に存在しているであろう異世界と、この蒼き惑星が繋がってしまったのだ。

 第一の変化が、空想上の存在とされてきた摩訶不思議なエネルギーである魔力がこの世界に流れ込んできたことである。魔力は空気に非常に溶けやすいという性質を持っており、瞬く間に空気に乗って世界各地へと広まった。

 記録によると、魔力は従来の常識を打ち砕く画期的なエネルギー資源であり、研究者たちはその有用性に一同に震えたという。否、研究者だけでなく一般人からも今後の更なる発展が期待されていた。しかし、人類は魔力についてもっと真剣に議論すべきだったのだ。

 その意図──つまり、絶望の前触れだったということを。

 個体で見れば矮小でも圧倒的な数と知恵を所持する人類──道具を作り生活を豊かにし、文化を発展させ、遂には食物連鎖の頂点まで君臨するようになった生物種だが……そんな彼らは、外からやってきた高位種族によって実質的に支配されることになる。

 そう。後の天蓋の六種族と呼ばれる猛者たちに。

 敵対するか恭順するか、はたまた友好的な関係を築くか……。人類はその選択を迫られ、敵対の道を選んだのだ。しかし、当たり前だろう。自分たちよりも遥か高位の埒外の存在を前にして心穏やかでいられるわけがない。

 なまじ知恵があり、戦争を出来る技術力があったのが仇となったのか、世界各国が総力を挙げて天蓋の六種族を排除しようと動き出す。大陸間弾道ミサイルから生物兵器まで、あらゆる手段を尽くした結果、第三次世界大戦と呼んでも過言ではない規模での戦争が勃発し──そして、一年もしないうちに人類は六種族の力の前に屈服させられたのである。圧倒的な力を前にして、人類は成すすべなく惨敗した。 


 ■


 そこから更に、百年という年月が経過した二一三〇年の現代。

 あれから人類は天蓋の六種族の人権を保障し……いや、させられて、六種族は種族ごとに分かれると日本国内でその生活圏を確保していた。人類側は甚大な被害を出したが、百年もすれば既に復興は完了している。難関ながらも魔力を用いる手段も確立されており、むしろ依然と比べて遥かに発展した社会と文化を形成することに成功していた。

 しかしながら、安寧とした社会であるとは到底言い切ることは出来ない。

 暴走した一部の六種族による人類……否、人間族への被害を始め、その親族や関係者などによる反社会運動や六種族への報復など、どうしても二間の軋轢を生む問題などは未だに根強く残っている。日本政府からしても天蓋の六種族の力は恐ろしいものであり、天蓋の六種族には迂闊に手が出せないのが現状だ。六種族の手は政府にまで及んでおり、また強い影響力も持っているのだから。

 だが、内情では未だに相容れていない存在だが、それでも現代では天蓋の六種族と人間族は総合的に見ればある程度は共存出来ているのは事実だろう。

 具体的に言うと、互いが互いに牽制し合っているのである。

 六種族側からすれば人間族が居なくなった場合、労働源が失われて文明の運営に問題が生じた結果、その反動が自分たちに返ってくる可能性があるし、人間族側からすれば先のとおり前提からして手出しが出来ないという。そんな歪な社会こそ──二一三〇年の現状だ。


 ■


 無数の高層ビルが立ち並び、立派な建物が続く日本国首都──東京。

 日中は数多の人間が行き交い狂う様に繁盛しているが、現在は真夜中ということもあって静けさという寂寞で包み込まれていた。日本一の大都市とあるだけに、緻密なシステムにより発展している。そして、上空から俯瞰してみれば分かるが、広範囲に続く東京の建造物の中でも一層風格を放っている広大な土地面積を誇る学園が存在していた。見る者の目を最も引き付けるのは、外壁の外側に等間隔で存在している合計十個のルーフオープン式のドームだろう。

 日本国内で最大級の規模を誇る教育機関──国立シンエリューエンス学園だ。

 一般的な学園と言えば、学業を主とした教育が施される機関のことであり、学生が青春などといった様々なものを謳歌する場所である。しかし、このシンエリューエンス学園はそんな一般的とは少し異なっている。要因は様々だが挙げるとすれば──数学や国語、英語などを始めとした普通の勉強は微塵の役にも立たないという点だろうか。

 そしてこの規模の学園となると、当然のように敷地内には寮が存在する。もちろん、大きさや外観、内装と言ったものはそれぞれ異なっているが、中央部分に存在している何棟もの校舎を取り囲むようにして、目を瞠るほどの構造を持つ学生寮が合計七つ立て付けられていた。

 七棟の中で最も巨大かつ質素な見た目をした寮──無数の個室が規則的に並んでいる中、最上階に位置する個室にとある一人の少年がいた。時間帯が時間帯だけにほとんどの学生は既に寝静まっているが、その少年は一切の眠気を見せることなく、暗闇の部屋の中をゆっくりと歩いて窓際まで近寄る。設置された透明窓から僅かな月光が差し込み、彼の姿を照らした。

 

「ああ……随分と綺麗な夜空だな」


 黒髪黒目の健康的な体型で高身長な少年。非常に整った顔立ちで、まるで造形物のようだがれっきとした人間である。しかし、その黒曜石のような瞳で見つめられた女子の大半が黄色い声で叫ぶのだから、どれほどのものかはある意味想像に難い。目元は周囲の暗さと、長めの前髪と相まってあまり観察することはできないが、けれども、綺麗だが鋭利な瞳の奥には全てを焦がしつくす憎悪の炎が燃えていた。


「ようやくだ。ようやくこの時が来たんだ」


 言葉に力を込めながら、吐き捨てるように告げる。


「思い返せば、ここまで長かった。この学園に入学して早二年経つが……ようやく本格的に行動に移ることが出来る」


 少年は明日……否、数時間後にある始業式典で最上位学年である三年となる。このシンエリューエンス学園は三年間の在学ののち卒業となっているので、彼にとっては最後の一年だ。この学園に留年と言う概念は無く、年数が増加するということはまずあり得ない。


「様々な不都合はあったが、俺はその全てを乗り越えて今日という日を迎えた。全て誤差の範囲内。何度も修正し、緻密に作り上げた計画に何ら支障はない。くくく。あとは予め敷かれてあるレールの上を進んでいくだの簡単な作業かな……。もちろん、更なる誤差や面倒ごとはあるだろうが、俺なら適切に対処して最適解を見つけ出すことが出来るはずだ」


 少年には決して忘れることのない、何よりも優先されるとある一つの目的がある。彼が入学して既に二年が経過しているが、表向きは抗うことなく従順に生活してきた。しかし、それは全て計画に必要な準備を完成させる期間であった。彼直々に人材をスカウトし手駒を揃え、資金を調達し、計画の邪魔になる存在への対処など。全てを完璧に揃えるための。


「今でも鮮明に思い出せる。あの時の光景を……ッ!」


 再度、少年の瞳で憎悪の炎が荒々しく燃える。それと同時に無意識のうちに握られた拳が、少年の激昂具合を証明していた。


「母さんと父さんを殺した、あの憎き存在のことを!」


 彼の脳裏に浮かぶのは、年を重ねつつも若々しい容貌を持つ二名の男女の姿。その次に浮かぶのが……いつも優しく微笑んでいた両名が燃え盛る炎の囲まれながら倒れ、痛々しくその顔を歪めている光景だった。

 あと数分もしないうちに死ぬであろう、彼の大切な存在だ。


『うわああああああああああああああっ‼ 母さん、父さん、待って……待ってよ‼ お願いだから僕を置いて行かないでっ。一人にしないでよ⁉』


 倒れ伏す彼らの手を握り、顔をぐしゃぐしゃに歪め涙を流す幼い時代の少年だが、そんな少年を霞む視界で捉え、二人が発したのは一言だけ。


『『……ごめんね』』


 しかし、その一言にどれほどの重みがのしかかっているのかは言うまでもない。

 助からないと知っての言葉。少年は告げられた一言により、更なる絶望に飲み込まれる。自分自身の無力さに、ただただ涙を流すことしか出来なかった。そしてごうごうと激しく燃え盛る炎が、幼い彼もろとも燃やし尽くそうと木片を伝って伸び……その刹那二本の腕が少年目掛けて突き出される。  


『え?』


 少年は衝撃により被害に巻き込まれることは無かったが、彼の目の前で、この世で最も大切な存在に灼熱の炎が燃え移り、皮膚を、内臓を、全てを焼き尽くしていく。これからもずっと一緒だと思っていたものが、失われていく。もう二度と、会うことが出来なくなる。

 その光景を目の当たりにした少年は、唖然としたまま『あ……あぁ、あ……』とゆっくり手を伸ばすが……痛いだろう。熱いだろう。苦しいだろう。赤炎に身を焦がしながらも、しかし両名ははっきりと告げた。


『一人にして、ごめんね。あなたに孤独な思いをさせるかもしれないけど』

『僕の息子である、君ならできる。……新しい家族もいることだし、ね。……安心して。私たち3人は、いつでも一緒なんだ。たとえ死んでも、心では繋がっているから』


 全身を紅蓮の焔に燃やされていく中、震える声で最後に残す。皮膚はただれて取り返しのつかない熱傷が体中に広がり、鈍い動きながらも最後に少年へと手を伸ばそうとした。


『『……永遠に、愛している』』


 少年の視界の端に白いナニカが映り込んだが、その存在を認識する前に両親が力尽きたことを理解してしまい、思考が停止する。同時に、彼の心は、狂う様にして──コワレタ。


『ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼』


 ■


 改めてそんな最悪の日を思い出しつつも、少年はさらに怒りを募らせる。血が出るほどに唇を噛み締め、胸中を復讐心に渦巻かせた。


「世間的にはただの火事として処理されたが……あれは決して火事なんかじゃない。俺ははっきりと目撃していたっ。奴が父さんと母さんが攻撃し、屋敷に火をつける現場を!」


 こうも大声で怒鳴り散らかせば、周囲の個室にまで声が響く可能性があるのは彼としても理解しているが、到底堪えることなどできはしない。


「あの目……あの目だ。あのすべてに興味を失くしたような、支配者たる目」


 少年は苛立ちを露わにしながら、思い出す。あの、冷徹冷酷な虚無が広がっているだけの身震いするほどに恐ろしい存在を。幼い少年には、無様に怯えることしか出来なかった。その存在が立ち去ってくれたおかげで、彼はようやく我を思い出したぐらいなのだから。

 だが、今なら復讐心を原動力としてあのような失態は晒さないと胸に誓う。


「あれからずっと探し続けた。あの忌むべき存在を。……そうして先日、ようやくその正体を掴むことが出来た」


 震える少年の肩に、どこから現れたのか全てが白色の鴉が止まる。アルビノの鴉ですら凌ぐほどの純白さで、僅かな汚れも濁りも存在しない白。

 少年は柔らかな笑みを浮かべ、そしてその手で慈しむように頭頂部を撫でた。鴉も瞳を細めながら、少年に対し小さな頭を擦り付ける。彼はその従順な行為を見て精神を沈下させるが、先ほどまで濃密な怒気を纏っていた人物と同人物とは思えないほどの変わりようだろう。


「見ていてくれ。母さん、父さん──そして姉さん」


 少年はガラス窓越しに、美しくその存在を誇張する満月へと視線を送った。だからといって、特にどうこう思うことはなかったが。……美しい。確かに美しいが、少年が宿す復讐の炎はその美しさすら灰燼と化す。


「俺はこの手で、必ず神殺しを成功させる」


 天上天下唯我独尊──この世界を支配する神を、矮小な身ながらも殺すのだ。

あまり言い過ぎるのもウザいので、最初と最後だけ言います。

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