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Horror Dinner 〜××高校の放課後怪奇譚〜  作者: 山下愁
第9怪:幽霊交番

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第7話【解体作業】

 鬼灯はいつも見ているだけだった。



 ごりごり、ごりごり。


 ぐちゃ、ごり。


 ぼきっ。


 ぶちぶち、ぶち。



 ジタバタと暴れる警察官モドキを銀色のナイフで解体し、とても美味しそうに食事をするユーイルをただ見ているだけだった。


 もう慣れてしまった、彼の食事には。

 音こそ汚く聞こえるが、ユーイルの食事風景はいつも綺麗だ。銀色のナイフで幽霊を解体して、骨の一欠片すら残さずに胃の腑へ収める。



「今回はどんな味?」


「洋食だな」



 ユーイルは警察官モドキの足を食いながら、



「トマトを使った料理のようだ。オムライス、ナポリタン、ミートソース……どれも美味い」


「そう」



 幽霊が鬼灯の食べるものと同じ味がするとは到底考えられないが、まあユーイルにはユーイルの味覚がある。こればかりは適当に相槌を打つ他はない。


 ユーイルもまた、鬼灯に幽霊を食うように勧めてこない。

 彼女が食べられないと知っているのだ。それに、わざわざ自分が確保した食事を分け与える真似はしない。



「ここも解体されるのね」



 鬼灯は朽ちた交番内を見渡して、ポツリと呟く。



「邪魔をする幽霊が消えれば、この建物も厄介払いできるだろうな」


「旧校舎も同じ理由?」


「そうだ」



 ユーイルは警察官モドキの首に、銀色のナイフを突き立てる。手慣れた様子で順調に解体をしながら、鬼灯の質問に答えた。



「旧校舎の幽霊はオレではない、オレはあそこに縛られているだけだ」


「今では旧校舎に出ないけれど」


「当然だ。幽霊を食べまくって力をつけ、今やオレは旧校舎の幽霊の――――あー、少し下ぐらいの実力の悪霊だ」


「貴方にしては謙虚ね」



 いつもは自分のことを過大評価しがちなユーイルが、旧校舎の幽霊と自分の実力を秤にかけて「自分の方が下だ」と言ったのだ。これは紛れもなく旧校舎の幽霊が強いという証左である。

 だが、鬼灯は旧校舎の幽霊を知らなかった。今まではユーイルがその幽霊だと思っていたのだが、どうやら違ったらしい。


 ユーイルはもう残り少なくなった警察官モドキを口に運びながら、



「旧校舎の幽霊はオレでも分からん。男でもなく、女でもない。そんな存在だ。ただオレの身体を奪うほどの実力はある」


「身体は無事なの?」


「無事かもしれんが、無事ではないかもしれん」



 ひどく曖昧な答えを返すユーイルは、



「旧校舎に関しては知らんことが多い。だが相手が幽霊なら、いつか力をつければ食えるはずだ。邪神さえも食ったオレに食えぬものなどないわ」


「いつもの貴方に戻ったわ」



 自信満々な様子のユーイルに、鬼灯はそっとため息を吐くのだった。


 それにしても、旧校舎の幽霊とは一体何なのだろう?

 それは誰のことを示しているのだろうか?



 ☆



 翌日になったら、交番が工事業者によって解体されていた。


 町にとっても、あの交番は邪魔だったようだ。

 ならば旧校舎も幽霊を処理すれば、あの交番のように壊されてしまうのだろうか?



「壊せるのかな」



 解体されていく交番を黙って見届けながら、鬼灯は小さく呟いた。

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