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Horror Dinner 〜××高校の放課後怪奇譚〜  作者: 山下愁
第7怪:校内かくれんぼ

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第5話【錆びた缶】

 ユーイルがあのおかっぱ頭の少女を引きつけているうちに、鬼灯たちは体育館にやってきた。


 本来であればバスケ部などの運動部が使用している体育館なのだが、不思議と人の気配がない。

 重たい扉は施錠されておらず、開ければ難なく開いた。薄暗く、高い位置に設置された窓から夕焼けが差し込んで不気味に体育館内を照らす。


 伽藍ガランとした体育館を前に、鬼灯は得体の知れない恐怖心を感じていた。何だか置いていかれそうな、そんな気分だ。



「問題の缶は一体どこに?」


「手分けして探そう!!」



 永遠子とわこに提案され、鬼灯と生物教師の黒海音弥くろうみおとやはそれを了承する。


 体育館は広くて見晴らしはいいだろうが、隠れる場所は意外と多い。

 特に舞台裏や体育倉庫などは、気づかず施錠されてしまえば一生そのままということになりかねない。気づかれにくく、さらに施錠をされてしまうとまずい。


 鬼灯は舞台袖に飛び込んで校内かくれんぼを終わらせる為の錆びた缶を探すが、全く見つからない。埃を被った緞帳どんちょうの装置と、何故か置いてある机ぐらいのものだ。



「どこにあるのかな?」


「あの馬鹿が時間を稼いでくれちゃいるが、それもいつまで持つか分からないからな。早く見つけた方がいい」



 同じく舞台袖で錆びた缶を探す永遠子と音弥のやり取りを聞きながら、鬼灯は舞台上で体育館全体を見渡す。


 思い当たる節はあと一つ、あの体育倉庫だ。

 あの体育倉庫になければ、錆びた缶の行方は本格的に分からなくなってしまう。体育館のパイプ椅子をしまう倉庫などに隠されてしまうと、椅子を退かさなければいけなくなるだろうか。


 鬼灯は舞台を降りると、体育倉庫に向かう。



「鬼灯ちゃん?」



 背中から永遠子が呼びかけてくるが、鬼灯は応じない。


 体育倉庫に引き寄せられるように近づいた鬼灯は、施錠されているだろう倉庫の扉に手を伸ばす。

 やや埃を被った扉を引けば、簡単に開いてしまった。



 がらがらがらがら。



 重たい音を立てて、倉庫の扉が開かれる。


 扉の隙間から埃っぽさが漂ってきて、鬼灯は思わずせてしまう。

 薄暗い倉庫の中に目を凝らせば、跳び箱や籠に積まれたボールなどが確認できる。どれも体育の授業で使う代物ばかりだ。


 埃っぽい倉庫の中に足を踏み入れれば、ヒヤリとした空気が肌を撫でた。



「…………?」



 跳び箱の上に何かがある。


 鬼灯は手を伸ばして、跳び箱の上に置かれた何かを手に取った。

 表面は荒れていて、ラベルのようなものが剥がれかかっている。埃っぽさの中に錆びた金属のような臭いが鼻を突いた。


 錆びた缶である。桃缶のものを利用しているのか、外も中も錆だらけだった。



「あった……!!」



 鬼灯は瞳を輝かせると、急いで倉庫から引き返そうとする。



「みつけたぁ?」



 倉庫の入り口には、おかっぱ頭の少女がこちらを覗き込んでいた。



「ひッ」



 思わず悲鳴を漏らしてしまう鬼灯。

 後退りした反動で錆びた缶を手放さなかったのは救いだった。おそらく缶を手放していれば、鬼灯の命はなかっただろう。


 ――あれ?


 おかっぱ頭の少女がここにいるということは、音弥や永遠子はどうなったのだろうか。

 少女の囮役を引き受けたユーイルは、どこに行ったのだろうか?



「ようやくみつけてくれたねぇ」



 おかっぱ頭の少女は左右の耳元まで裂けた口でニィと笑うと、



「でもだめ、おそいの。あきちゃった」



 体育倉庫に足を踏み入れた少女は、小さな手を鬼灯めがけて伸ばす。


 幾度となく理不尽な真似をしておいて、最後の最後で「飽きちゃった」の一言で許されると思うのか。

 退路は完全に断たれ、鬼灯は床に転がっていたボールに足を取られて尻餅をついてしまう。その間にも、少女は徐々に距離を詰めてくる。



 ぺた、ぺた。


 ぺた、ぺた。



 少女に魔の手が迫る。



 ぺた、ぺた。


 ぺた、ぺた。



 それはどんどん近づいて。



 ぺた、ぺた。


 ぺた。



 やがて掴まれる。



「随分と躾のなっていないガキだ。せっかく遊んでやっているというのに、他の大人に目移りか?」



 鬼灯めがけて伸ばされた少女の腕は、横から伸びるとある男子生徒の手によって阻まれていた。


 肩まで届く純銀の髪、炯々と輝く赤い双眸。整った顔立ちには意地悪そうな笑みを浮かべ、少女の手を握るものとは反対の手で銀色のナイフを逆手に構える。

 少女が銀髪赤眼の男子生徒へ振り向いた瞬間、彼は銀色のナイフを少女の血走った眼球へその切先を突き入れた。



「――ああああああああああああああああああ!?」


「はははは、素晴らしい悲鳴だな」



 銀髪赤眼の男子生徒――ユーイル・エネンは、目を突き刺されてジタバタと暴れる少女を蹴飛ばすと、悠々とした足取りで鬼灯に歩み寄る。



「怪我はないか、鬼灯よ」


「……助けてくれるとは思わなかったわ」



 差し出されたユーイルの手を掴んで立ち上がった鬼灯は、錆びた缶をユーイルに渡す。


 これが今回、彼の食事となるものだ。

 缶だけなので食い出はないだろうが、それでもこのおかっぱ頭の少女を形作る何かであることは間違いない。


 手渡された缶と鬼灯へ交互に視線をやったユーイルは、早速とばかりに錆びた缶へ両手を合わせた。



「い た だ き ま す」

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