剣撃
銀の光が
煌びやかに翻って
刃先が音を鳴らす
相対する一撃目で
お互いに視線を合わせ
ニヤリと笑う
同時に弾き
一歩分だけ距離を取る
ゆっくりと右に動けば
相手も同じように右に動き
構えだけは崩さない
ガザッという音
踏み込んで向ける刃先
当たりはせずとも
空を切る音が鼓膜に届く
こちらも踏み込む
カウンターは呆気なく
鞘で受け止められ
二撃目が来るのが分かる
刃先を鞘で滑らせながら
身体をねじる
一回転した反動でよろけながらも
構え直した
少しだけ
呼吸が荒くなる
深く吐いて整えた
次の切り込み方を考えようとしたが
相手が先に踏み込んで来た
上から下へ
受け止める
脇腹に鈍痛が走り
左へよろめいた
鞘で殴られたのだ
そこへ二撃目
必ず防がなければならない
金属が擦れる鈍い音がする
繰り返し来る鞘は
ゆっくりと体力を奪う
身体中に痣ができ
痛むだろうなと壁際で笑った
相手は威圧したまま歩いてくる
振りかぶれば
壁に刃先が当たるほど近くまで来る
バックステップしながら
振り下ろされた
左側へ思い切り弾くと
二撃目の鞘に対して踏み込んだ
無理やりに身体を当てると
右手が上がって
がら空きの身体が見える
そこに槍のように
刃先を頭にして飛び込んだ
直ぐに飛沫が顔に当たる
相手は笑っていた
息切れをした肩と
真っ直ぐな視線で
それを見送る
終わったという形すら
考えられなかった
頬を伝う感触で
我に返ると
薄汚れた布切れで顔を拭いた
相手の膝当てで穴を掘り
そこに埋めて
あの鞘を刺しておいた
早く水浴びがしたいと思いながら
その場を後にする
振り返らず
進んだ時に
ゆっくりと実感が湧いてきた
何処に投げるでもない
静かで強い感情だった