協議と処遇
「【越えざるもの】の無力化に成功した…とりあえず泊まっていたホテルに連れて行く。」
と俺は帝国に絶対にバレないように妨害工作を施しながら、メンバーに通達する。俺の横には毛布に包まれた【越えざるもの】が眠っている理由としては魔力欠乏症候群の為、投薬したらそのまま寝てしまったと言うわけだ。
「さて…帝国には国際法上禁止されている人造人間に近いものを作ったとして、国王に頼んで裁かれてもらいますか。」
と俺は独り言のように言うが、【越えざるもの】はまだ完全に俺たちが保護した…と言うわけではない。
カルウェイン=ダントも同じくらいかそれ以上かの異能力を保持したまま未だ逃走、コルコット=コトに関しては仮にも元使徒…つまりは元最高戦力だ絶対に何か仕掛けるに違いない。
俺はホテルの中庭にみんなを集めた。このホテルは王国側なので一切情報が帝国に漏れることなどないからだ。
「へぇ…この子が【越えざるもの】だったのね。意外だわこんな可愛い子が、あの化け物【越えざるもの】何だったのね。」
とアリスは眠っている【越えざるもの】をじっと見つめながらそう言った。今は第1形態のまま眠っているが起きた時最終形態になると思うと、今でもゾッとする。
「あぁ…一応、ちょっと離れた場所で指揮を取っている班員のみんなにも言っておいた。っと言っても、【越えざるもの】はどうする?。」
と俺は今最も優先すべき課題を掲示した。そもそも【越えざるもの】は帝国領の人間なのかそれともその他の領土の人間なのかはっきりしていない。故に今、彼女には帰る場所がこの世界のどこにあるのかわからないからだ。
「あの…どうせなら、学院で保護するいや入学させるのはどうでしょうか?。」
とリスサ=メイプルは俺に向かって真剣な眼差しを向けた。その目にはそうして欲しいと言う願いが子持っていることを俺は瞬時に察知した。
「別にそれでもいいんだが、【越えざるもの】と模擬戦しただけでそいつは終わりだ。」
と俺はそう言うと意識して紋を上空に向ける。そしてイメージした角度でそれを放った。
「【大華氷海】。こんな感じにな。」
と俺はそれを上空に放つと周りの木々が氷に閉じ込められた。芝は霜が付くくらいだが、気が凍ったとなるとまともに食らえば死ぬこともあり得る。
「先輩…あなたが使えるのはその属性だけですか?。」
と3年生の紋章を持つ少年が俺に向かって質問を投げつけた。確か…この子は声のスキルを持っていたはずだからか、俺は言わないと判断しても言ってしまう。
「あぁ…今使えるのは、この氷だけだ。が、【越えざるもの】は例外だろうな。」
と俺は言うなと意識していたことを言ってしまった。この子は厄介だな…覚えておこう。
____________________________ポテナシア大陸_____???_______
「はぁ…【越えざるもの】が敗れたか、まぁ仕方ないかあの子は失敗作だからな。」
と情報誌を見て長身の男は誰にも聞くことは出来ないような声で独り言を呟く。その男の手には剣と銃…一般的にはライフル銃と呼ばれるこの世界には通常存在しないものを持っていた。
「あらら…と言うか、私国際指名手配されてないわね何故かしら私も【?????】なのに。」
と両手にコーヒーカップを持った女は横から情報誌を見ると残念そうにそう言った。
否、持ってはいないのだ。宙に浮かばせているだけなのだ。
「【越えざるもの】は一応我々の同士だ、更にあの計画に必要不可欠な存在だ。取り戻して我々はそう目指そう。」
と男はそう言いながら剣を振り上げて、座っていたソファーを瞬時に切り落とした。コンマ0,00001秒で。
「「さぁ…我々こそがこの世界のトップにふさわしいと、証明しよう。」
こうして世界は大きな歯車を動かし始めた。




