第七話 魔王の指輪
左手に握られた袋の中には、宝石のように光り輝く様々な色の石が集められている。
――魂石
そう呼ばれるこの石には、NPCの魂が込められている。
通常、他のプレイヤーに対し、自身が所持しているNPCを献上することはできない。そのため一度NPCを魂石へと変換することでアイテムとして取引を行うこととなる。
受け取ったプレイヤーは魂石を解放し、NPCを再召喚することで、晴れて召喚主を主人と認め指示を聞いてくれるのだ。
「君を魂石へ変換したら、この世界ともお別れだな」
魂石へと変換するため、ロフィスは彼女の体へ触れようと手を伸ばす。
――刹那、一つ気になっていたことを思い出したロフィスは、そのまま右へと手をスライドさせる。
空間にはゲーム特有のコンソール画面が表示された。
「そういえば、ギルドバトルの優勝賞品として貰った指輪。結局一度も装備してないな」
画面にはアイテム名、“魔王の指輪” と表示されている。
(俺が魔族じゃなかったら、ただの “王の指輪” だったんだろうか?)
ふと、ロフィスはステータス欄を見る。
魔王の指輪のステータス欄には、攻撃力と防御力共に0の数値が記載されている。
「ステータスが1ミリも上昇しない装備とか誰が欲しがるんだ? 取りあえず勲章として配ったとしか思えないが……」
ロフィスは指を動かしアイテムの効果欄を開いた。
そこにはこう記載されている。
『魔王の素質を認められし者に送られる指輪。この指輪は世の理を捻じ曲げる力を持つ』
…………
は?
――意味が分からない。
ただアイテムの設定を説明しているだけじゃないか。効果でも何でもない。
優勝した結果がこれだ。スポンサーとの契約で大規模ギルドバトルに参加した自分にとっては、一歩譲って優勝のメリットはある。だが、これほどまでに使い道のないアイテムでは、一般ユーザーにとって何もメリットがない。
(優勝したのが俺じゃなかったら暴動が起きてたな……)
あまりの衝撃――ロフィスは好奇心にかられ、コンソール画面の “装備” と書かれたボタンを押す。
ロフィスの右手人差し指に指輪が装着された。
――突如、その指輪から眩いばかりの光が放出される。
「――んなっ! なんだこりぁぁぁぁぁ!」
突如、光の中心へ吸い込まれていく感覚。
驚いた衝撃により、ロフィスは左手に持っていた――魂石の入っている袋を投げてしまう。
息をする間もなく、指輪から放たれた光はロフィスとニル、二人を包み込む。
その光は徐々に大きさを増し、空中都市アルカナを包み込むほどだ。
――時間の経過と共に、光が収束する。
そこには、ぽっかりと空いた――青く綺麗な空だけが存在していた。