第五話 親友との別れ
ぼっちぶぅは視線を地面に落とすと、何かを決意したように顔を上げた。
「あの……一つだけお願いがあるんだけど……」
「ぼっちぶぅの頼みなら、一つと言わず何度でも聞くぞ? 流石に『優勝賞金を全てよこせ』なんて願いは聞けないけどな」
「――ッ! このタイミングでそれを言えるほど無神経じゃないわよ!」
「じょ、冗談だよ。それじゃ何の願いだ?」
ぼっちぶぅを怒らせてしまったと思ったロフィスは、どこか慌てているようで身振りがおかしなことになっている。彼の外見には似合わない動作に、彼女は笑みを浮かべる。
「ふふっ。焦っているロフィスも何だか可愛いわね」
「何だそりゃ?」
「やっぱり、お願いは大丈夫よ! 今までありがとね、ロフィス !」
そう答えた彼女は、魔法陣に駆け寄り手をかざした。
どこか心のつっかえが取れたかのような表情は――先程までの不安を全て吹き飛ばしたかのように清らかだった。
「改めて優勝おめでとう! またどこかで会いましょう――魔王様!」
「おう! 元気でなぼっちぶぅ! 」
二人は手を振り別れを告げる。
魔法陣からは光が溢れ出し、彼女の体を包み込む。こちらの都合など一切関心を払わずに流れていく時間。
魔法陣から放出される輝きは徐々に光を失い、彼女が立っていた場所には寂しさだけが存在していた。
そろそろ相棒のNPCが登場します!