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雑談とか

おくりびと

作者: ACT

肉体が死ぬと、魂は新しい世界に旅立つ。

だから泣くことは旅立つ魂を引き止めてしまう悪い行い。

だから笑って旅立つ魂を見送るのが良い行い。

そう教えられてきた。

そう育てられてきた。


唯一の家族であった弟の旅立ちを見送った一年前。

私はそれ以来、おくりびととして魂の旅立ちを手伝っている。

今日は幼い娘を残して旅立った父親を見送った。

幼い娘は懸命に笑顔を繕っていた。

私が教えた通りに。

私が教えた通りに父が迷うことなく新しい世界に旅立てるように。

新しい世界に旅立てるように。

笑顔で。


それでもきっと、見送った後は泣くのだろうと思った。

私がそうであったように。

見送った後で泣くのだろう。

誰にも気がつかない。

木陰の裏でひそひそと。

私がそうであったように。


儀式用道具を片付け終わった頃。

新緑が赤く染まる。

大樹を見上げると紺色の空。

大樹の陰から幼い娘がこちらに向かって歩いてくる。

少し腫れた赤い目をこすりながら。

幼い娘は私にお礼を言うと可愛い笑顔を送ってくれた。

先ほど見せた笑顔とは少し違う。

肩の力が抜けた優しい笑顔。


私は幼い娘にこれからどうするのか尋ねた。

幼い娘はわからないと答えた。

頼れる親戚もいない。

旅立った父親が唯一の身内だったそうだ。


私は一年前の自分を思い出していた。

世界に一人だけになった私。

世界に取り残された感覚。

私は手を差し伸べた。

一緒に来るか、と尋ねると幼い娘は笑顔で頷いた。


夜空には星が輝いていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 冒頭の数文から、さらに一歩進んだような、最後の部分での主人公の行為。 [気になる点] 話としては綺麗な締めではあるが、やはり、女の子に手を差し伸べることになった繋がりとしては弱い気がする。…
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