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おれ色days  作者: チェックメイト
2/3

第2部分〔そいつの正体〕

投稿に一週間ほど遅れました。すみません。後この物語は、最初は少し暗いですが、しっかりと良い結末につなげるよう精進しますので心配なさらず。

「よく生きていられるね、無能なのに。」


「いいよ、もうおまえには誰も期待していないから。」


 その言葉達は、一気に脳内を侵食していく。


「勝手に責任なんて背負ってさ、誰も望んでないのに。」 


 胸が苦しい。いつまで付きまとってくるんだよお前らは。


「というか、出来ないなら最初から引き受けんなよな。ざまあって感じ。」


 好きなアニメキャラの抱き枕を抱きしめ、静かに連呼する。


「うるさいうるさいうるさい……。」


 布団に包まり、耳を抑える。瞬きしたとき、目に何度も冷たい濡れたのが入ってくる。だが、もう明日には、つらいことなんて何もない、光射す楽園に行ける。いや、絶対に行くんだ。この世界にいても、蔑まれ、馬鹿にされ、恨まれるだけの毎日。おれはもう一度、自分の立場を認識する。おれには、愛してくれる人も、必要としてくれる人もいない。不意に、今日の放課後に言われた言葉が頭をよぎった。


「私と一緒にいてくれる?」


 この言葉は、紛れもない真実だと思う。しかしおれには、しかしその真実に相当する結果を見せることなんてできない。結果が出せないなら、引き受けるべきではない。今日の嬉しかったはずのその言葉が、途端におれの胸を締め付ける強固な鎖に変貌していく。おれは彼女への返答が明確に決まり、スタンドのスイッチを片手で切る。すると辺りは暗闇へ沈んでいった。




 

 翌日の放課後、おれは約束通り多目的教室に訪れた。中に入ると、朝に言うはずの挨拶が聞こえてきた。


「おはようございます、嘉喜君。挨拶はどの時間でも、これでよろしく!」


 今日も華があり、きらきらと輝いていた。


「それで、昨日の返答、考えてくれた?」


 おれは、今から言うことの予兆を見せるため、眉を潜め、斜め下に目をそらした。こんなおれに話しかけてくれて、ありがとう。だが、おれはその期待に応えられない。胸が苦しく、それでも吐き出そうとする次の言葉を思い浮かべるだけで、おれは泣きたくなった。それでも、言うべきことはちゃんと言って、この世界から旅立ちたい。そう思い、動かそうとすれば震える唇を、ぎこちなく開こうとした時だった。


「女子と二人。告白でもすんの? きもいんだけど。」


 声のした入り口の方には、あの失敗の当事者の、家内恭子が立っていた。頭は金髪に染め、スカートは短く、耳には赤色のピアスをつけている。今の彼女は、一言で言うなら不良そのものだ。こいつがおれと顔を合わせると、恨みをぶつけてくる。仕方がない。彼女がこうなったのも、おれのせいなのだから。


「ていうか、さっきあたしのこと見てたっしょ? あの日であたし、あんたとの関係チャラにしたと思ってたんだけど。」


 あの日以来、おれの未来考察は壮大さを喪失した。だから、別の場所で、覚悟を必要としない優しい異世界で、ひっそりとやっていく結論に至ったのだ。そうすれば、誰からも叩かれないし、傷つかない。


「ほら、また黙る。自分が悪者扱いされることがそんなに嫌ですか? こっちはガン見しないでって言いに来ただけなんですけど? 」 


 いつか憧れたアニメの主人公のように、おれに立ち上がる力なんかない。だから白井、おれは君の期待には答えられない。正面を見ると、恭子がおれの近くに来て、胸ぐらを捕まえた。


「やっぱさ、何も変わってないよねあんた。いつだって自分のことしか見ていない。そんなに自分を可哀そうだと思いたいなら、可哀そうにしてやんよ。」


 何を言われても仕方がない。奴はにやつき、手を構えて拳を握りしめた。けど、その顔はきっと誰が見ても、不自然に引きつった笑みだっただろう。


「視界から消えろ、クズ。」


 おれが目をつむり、殴られる覚悟をした時だった。


「やめて、ケンカしないで!」


 声が聞こえたからか、反射的に目を開ける。恭子も同様、その声に反応し拳を収めた。そこにいたのは白井だった。


「こんなことしたって意味ないよ。」

 

 恭子は畏怖のこもったような声で答えた。


「入ってくんじゃねーよ、これはあたしらの問題だ。」 


 しかし彼女は干渉を止めない。


「じゃあ力ずくで止める!」


 驚くべきは次の瞬間だった。彼女は、右手のはめていた手袋を外し、恭子の手を掴んだ。途端に彼女の形相が変わり、青眼の目が白銀に発光する。


「何があったか知らないけど、私には彼が必要なの。」


 恭子は必死に手を離そうとする。しかし、いくらもがいても逃れられない。恭子は白井の方を見た。彼女はそれを合図に、おれの度肝を抜くとんでもないことを言い出した。


「イレース!」

 

 その台詞の後、突然恭子の腕が、まるで故障したロボットのようにぎこちなくなっていった。そして最終的に動きが停止した。いや、停止させられた。恭子は頭をふらつかせながら、自分の腕を見る。次の瞬間、彼女の表情からは怒りがなくなり、青ざめてその場でへたれ込んだ。


「何よ、これ。」


 おれは、目をこすって目の前で起きている真実を確かめる。彼女の腕は氷漬けにされていたのだ。そして、ゆっくりと動かない恭子の手を、丁寧になで始め、白井は口を開く。


「今、君の手を表面だけ凍らせた。今謝るなら戻してあげる。」


 おれは、自分が今立ち合っている白井藍は、夢の中の人間だと思いたくなった。おれは必死に自分の頬をつねるが、やはり痛い。彼女はとどめ針を指すかのごとく恭子を威嚇した。


「出てって、今すぐ。」

  

 恭子は悲鳴を上げながら、白井を払いのけて多目的教室を出ていった。恭子の手はこの瞬時の間に、いつの間にか元に戻っていた。ふと我に帰ると、白井がおれの真正面にいて、手袋をはめ直していた。おれは思わず、彼女から一歩身を引いた。その様子を見て、気遣いのつもりか、おれに優しい口調で言葉をかける。


「大丈夫。ちゃんと元に戻しておいたし、彼が私の力のことを広めようとしても、誰も信じないよ。」 


 おれは何も言えなかった。今、目の前でいろんなことがおきすぎて、言葉が出てこない。でも、恐怖の中、それを凌駕する気持ちがおれの考えをまとめ上げていた。そう、確かに分かったことがある。昨日三階から飛んだ飛んだおれを助けたのは、白井だったってこと。沈黙が不安になったのか、彼女は取り乱し、笑顔を作る。


「別に、怖がらせるつもりとかではなかったんだよ。だから、その、」


「お前か? 三階から飛び降りたおれを助けたのは。」


 おれは途端に、自分を異世界に行かせなかった彼女を殺したくなった。おれに一日でも多く、この世界に生きるという苦痛を味わせ、あげくの果てには恭子と会うことにもなった。辛いことを、こいつはわざわざおれにさせたんだ。おれは口調を強くした。


「お前なのか?」

 

 白井は俯き、黙って首を縦に振った。その後、おれたち二人の間には異様な沈黙が流れ流す。しばらくして、それを最初に破ったのは白井の方だった。


「今から、私が君を必要とする理由、それを話すよ。」


 彼女は唇をかみしめ、椅子に腰かけた。それを見たおれは我に返った。確かに今、こいつに腹が立っている。しかし白井にどんな事情があれ、彼女はおれを信じてくれた。だから、せめて話を聞いてから返答をする。おれに期待してくれた彼女にとって、望まない返事をするなら、話を聞き、それ相応の反対理由を言うのが筋だと思う。そう考えていたおれは、いつの間にか首を縦に振っていた。


       完






  

 

 



 


 



 








 



 




 



次回、やっと白井の能力について明かすことができます。先にそれについて書いたほうが良かったかもなとも思いますが、主人公描写優先なので、後悔することなく、これでよかったのだと信じて書き続けていこうと思います。応援、よろしくお願いします。

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