第22話 集いし仲間たち
俺はドラゴンと戦った後、ユイたちに白い目で見られた。
理由は、胃液で服が溶かされ、半裸状態だったからだ。
そのせいで洞窟から出た後も叫ばれて大変な目にあった。
しばらくは変態扱いを受け、女性たちに避けられていたが、事情を何度も説明して、なんとか理解してくれた。
ヒカリは俺たちと一緒にドラゴンと戦い、討伐に成功したことが村やギルドに知れ渡り、今までの行いをみんな許してくれた。
それでドラゴン討伐に協力してくれたカズミだが、しばらく一緒に旅をしてくれるとのことだった。
カズミいわく、『お前たちといれば強いやつと戦えそうだ』とのことだ。
まあ俺は呪術者と戦うことはあるだろうからそうなんだろうけどな。
それにしても、ヒカリの問題も片付いて、これでようやく落ち着けるってわけだな。
俺の停学も解けたことだし、ようやくいつも通りに戻るんだな。
と、思ってたんだけど…
「ソラさん!実は高難度のクエストが発令されて…クエストを受けてくれませんか!?他に受けてくれる人がいないんです!」
俺はギルドの人たちに、誰も受けたがらないクエストを押し付けられるようになった。
理由は当然、ドラゴン討伐を成し遂げたことだ。
誰も倒したことのないとうたわれたドラゴンを倒したのなら、これくらい平気でしょといった感じで、ギルドの人たちは俺にクエストを押し付けてくる。
こいつらは絶対に俺が冒険者になって間もないことを忘れている。
俺は力はあっても経験が足りてないのに、何度も高難度のクエストを受けてたら死んでしまう。
まあ、みんなも手伝ってくれるから何とかなってはいるのだが、いつもギリギリなので何とか断る口実を得たいと悩む日々だ。
「はあ…」
場所は科学世界、学校の屋上。
俺は魔法世界の忙しさに頭を抱え、ため息をつく。
「どうしたの?ため息なんかついて」
背後から声が聞こえ、振り向いてみるとそこにはヒカリの魂共有体である橘が立っていた。
俺が停学になってから、話しかけてくれるのは唯と橘の二人だけとなってしまった。
その現実に、俺の心は今にも砕け散りそうだ…
「最近プライベートで忙しくなってな。それでしんどくなってきたんだよ」
「でも徳井君って芸能人じゃないよね?なのにどうして忙しいの?」
アイドルの仕事をしていれば、一般人のプライベートの忙しさがわからなくなるのか。
まあ俺も一般人というカテゴリからはずれてしまっているのだが…
「最近色んなやつから厄介事を任されるようになったんだよ。それで疲れてるんだよ」
「へえ、そうなんだ。それで、どのくらい忙しいの?」
「そうだな…自分のペースでやらせてもらってる分、アイドルよりかは楽なんだろうけど…」
「ふふ、アイドルの大変さを理解しているようで結構」
橘はいたずらな笑みを浮かべてそう言った。
こいつを見て、アイドルって素は他の女子となんら変わりないんだなって思ったよ。
「そういうお前はどうなんだ?俺なんかと話しててイメージダウンにならないのか?」
「意外とそうでもないんだよ?嫌われ者にも手を差し伸べる天使のようって評価する人もいるんだから」
前言撤回。アイドルは普通の女子よりたちが悪い。
「そんな目で見ないでよ。冗談だからさ」
「俺、今のお前の発言を録音してなかっことを後悔してるぞ」
「それはやめてよ!洒落にならないから!」
「冗談だよ」
「むう…意地悪なんだから…」
「お前には言われたくない」
俺たちがそんな他愛ない話をしていると、チャイムが鳴った。
「そろそろ授業が始まるな。それじゃあ教室に戻るか」
「そうだね」
俺たちはそれぞれの教室に戻り、授業を受けた。
「遅いぞソラ!何をしていた」
学校が終わり、魔法世界に転移してギルドに向かうと、カズミが第一声でそんなことを言ってきた。
「遅いってなんだよ…これでも急いできたんだぞ」
「ていうかお前は夕方まで何をしているんだ?基本的に宿にもいないようだが…」
「知りたいか?それが、パンドラの箱を開けることと同義だったとしてもか?」
「パンドラの箱だと?お前、本当に何してる?」
「まあ、世の中知らなくてもいいことがあるんだ。わかったらこれ以上首突っ込むな」
「……わかった」
カズミはそう言うと、俺をユイとヒカリのいる場所に案内する。
それにしても、俺のパーティもこれで四人か。
ここに来るまで長かったような気がするな。
「おいおい、四人じゃないだろ?」
「そうだぞ。私たちを入れて六人だ」
はは、そうだったな。
「それじゃあ、どんなクエストやるか決まってるのか?」
「うん。今日はギルドの人に頼まれたやつにしたよ」
「てことは高難度のクエストか…骨が折れそうだな…」
「大丈夫!私たちが力を合わせれば、どんなやつにも負けないよ!」
「ふふ、ドラゴンに勝る相手と出会えるか、ワクワクするぞ…!」
俺はパーティメンバーを見渡す。
「確かに、俺たちならなんとかなるか」
「そうだよ!それじゃあ…」
ヒカリは手を前に出すと、ユイとカズミはその上に手を置き、三人そろって俺の方を見る。
「……しゃあねえな」
俺は微笑しながら手を乗せる。
「それじゃあ、クエストに…!」
「「「「「「出発だ!」」」」」」