第20話 再戦
数分後。
俺たちは力尽きて、草むらの上に倒れていた。
カズミは俺たちの攻撃を見切り、確実に攻撃を当てていた。
何とか隙を狙って攻撃しても、彼女には完全に見抜かれており、隙だと思っていたはずが、それはこちらの隙を作るための罠だったりと、手も足も出なかった。
「全く…こんな実力でよくドラゴンを倒そうと思ったな…」
返す言葉が見つかりません…
「まあ事情もあるみたいだし、ある程度まともに戦えるようには出来ると思うが…」
「……本当か?」
俺は倒れたまま、カズミに尋ねた。
「ああ。とりあえず今は休んどけ。回復させないと、特訓も何もないからな」
それから三十分後。
ある程度体力が回復した俺たちに、カズミが先ほどの戦闘の改善点を指摘していく。
「まずはソラだな。ソラは観察力と魔力は悪くない。だが、無駄な動きが多い。だから動き始めてから終わりまでの時間が長くなるんだ」
「つまり、無駄な動きをなくせってことか」
そういうのは結構バトル系の作品でよく描写されてるよな…
でも、実際にやるとなるとどうすればいいのかわからないな…
「次にユイだな。ユイは詠唱のタイミングの見極めがまだまだだな。それが見極められなければ、一流の魔術師にはなれないぞ」
「なるほど…タイミングか…」
ユイはカズミの指摘を真面目に聞いていた。
「最後にヒカリだが、お前はそもそも槍の経験がないんじゃないか?」
カズミの指摘に、ヒカリは体をビクッとさせる。
「な、なんでわかったの?」
「いや、どことなく動きがぎこちなかったし、なんだか別の武器の立ち回りしてたから」
「……やっぱり達人にはばれちゃうのか」
「どうして武器を変えたんだ?」
俺は興味本意で聞いてみた。
「別に、色んな武器を使いたいと思っただけだよ。使わないとわからないことだってあるだろうし」
「そうなのか」
「だが、コロコロ武器を変えるやつは成長しないぞ。早く武器を一つに絞った方がいいぞ」
「了解」
「それじゃあ三人とも。今言ったことを参考にして特訓するように」
「「「はい!」」」
そう言い残すと、カズミはこの場から離れ、俺たちの特訓を見守っていた。
三日後。
俺たちは再びドラゴンのいる洞窟を進んでいた。
それにしても、やっぱりここは暑いな…溶けちまいそうだ…
「それで、隊列はソラとカズミさんが前、私とヒカリちゃんが後ろでいいんだよね?」
「そうだな。俺とカズミはドラゴンを食い止めてるから、その隙に二人は魔法をぶちこんでくれ」
ユイとヒカリはコクりと頷く。
「さて、確認はこれでいいな。いよいよだぞ…ドラゴンとの対決は…」
話している間に最深部にやって来た俺たちは、奥で何かを睨むような顔をしているドラゴンを見つける。
「やばいな…気づかれてるぞ、これ」
「やっぱり、そうなのか?」
「ああ…こうなったら、こそこそ隠れずにぶつかるしかないぞ!」
そう言って、カズミは二本の大剣を抜いて、ドラゴンに向かって走り出す。
「なんかデジャブを感じるが…まあいい、いくぞ二人とも!」
「「うん!」」
残った俺たちも走り出し、二人はある程度離れたところで待機し、俺はカズミの後を追ってドラゴンに迫る。
その姿を見たドラゴンは炎の息を吐き、俺たちはそれを左右に飛んでかわす。
「くらえドラゴン!あたしの一撃はこたえるぞ!」
カズミの大剣がドラゴンの体に刺さり、鱗を貫いた。
「うおりゃあ!」
「グオアアア…」
カズミはさらに刺した大剣を振り抜き、ドラゴンの体に更なる傷をつける。
「よし、今だ!『コールド』!」
「ゴオオオオオ!」
俺は手から冷気の塊をドラゴンにぶつける。
するとドラゴンは叫び声をあげてこちらを睨む。
俺は攻撃に備えて構えると、ドラゴンの頭上から炎が現れる。
おいおい…これってもしかして…
「ソラ!魔法がくるぞ!逃げろ!」
そうだと思ったよこんちくしょう!
俺は慌ててドラゴンから距離をとろうとするが、その前にドラゴンが俺に炎を打ち出してくる。
「くそ!かわせねえ!こうなったら…『サンダーボルト』!」
俺は雷を地面に叩き込み、それにより生まれた爆風で体を飛ばし、ドラゴンの魔法をかわす。
「ソラ、大丈夫!?」
「なんとかな…それより、次くるぞ!」
俺はそう言ってドラゴンの方を向いて、駆け寄る。
カズミは相変わらず近距離でドラゴンと戦っている。ほんと、あいつの実力は半端ねえな。
「くらえ!『アイシクルソード』!」
「グ…グオオオオオ!」
「しま!?ぐわあ!」
カズミが振るった氷の刃をドラゴンの鱗は受け止め、反撃によって吹き飛ばされる。
「このやろう、よくもカズミを!『コールドブレス』!」
「グオアアアアア!?」
俺は冷気の波動を手から放出し、カズミがつけた傷口に直撃する。
ドラゴンは倒れまいとなんとかこらえるが、俺は畳み掛けるかのようにドラゴンの口に手を伸ばす。
「『コールドブレス』!」
「ガアアアアアア!?」
俺は冷気の波動を体内に送り込み、ドラゴンはどんどん動きが鈍くなっていく。
「やった…これなら、ドラゴンに勝てる!」
ユイがそう言うと、ドラゴンは突然地面を叩きだし、地面が揺れる。
「うお!?」
「「「ソラ!?」」」
俺はバランスを崩し、ドラゴンの口に放り込まれる。
そのまま視界が真っ暗になり、俺は唾液に流されて柔らかい肉壁に押し潰される感覚とともに飲み込まれていった。