表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二つの世界を行ったり来たり  作者: リュミエール
3章 ドラゴン退治
20/38

第19話 敗北の後

「……!お…て!」

 誰かの声が聞こえる…

「おき…よ!ソ…!」

 この声は…ヒカリの声か。

 俺は重いまぶたをあげると、そこにはぼんやりとした景色が広がっていた。

 時間が経つにつれて気色がハッキリとしてきて、映ったのは涙目で俺の顔を覗き込むヒカリの姿だった。

 最初は悲壮感漂う表情をしていたが、すぐに明るい表情に変化し、俺に抱きついてきた。

 目覚めたばかりで状況を把握出来ない俺に、ヒカリは泣きながら言った。

「よかった…生きてて…よかった…!」

 そっか。俺、ドラゴンの攻撃をまともに受けて、気を失ってたのか…

 俺はヒカリの頭を撫でるように手を乗せて…

「心配かけたな。ありがとうな、ヒカリ」

「うん…うん!」

 その瞬間、ガチャっと扉が開く音が聞こえた。

「ヒカリちゃん。ソラの様子はど…」

 扉を閉じ、暗い雰囲気の声を出しながらこちらを見る少女と目があった。

 声の主はユイだった。

 その隣にはアマゾネスをイメージさせる、大剣を二本背中にかけた、肌が黒く露出の激しい女性が立っていた。

「えっと…ユイ?」

 小刻みに震えるユイに、俺はおそるおそる呼んでみる。

 すると、右手に握られていた荷物を落とし、凄まじいスピードで俺とヒカリを引き離した。

 ユイたちがやって来たことに気づいていなかったヒカリは、ユイに引き離されて驚いた表情をしている。

「ユ、ユイちゃん!?いつの間に家に?」

「ついさっきだよ!全く…ソラが動けないときに何する気だったの!」

「べ、別に!ただ、ソラが起きたのが嬉しくて…」

「それで抱きついたの?私のいないところで何てことを…!」

「ユイちゃんの許可は必要ないだろ!これは私たちの問題で…」

 パーティーメンバー二人がわけわからん喧嘩をしているうちに、俺は体を起き上がらせ、辺りを見渡す。

 どうやらここは、ヒカリの家のようだった。

 俺の目の前に、アマゾネスみたいな女性が立つ。

 彼女はとてもにこやかな表情で言った。

「よう。目え覚めたみたいだな。体の方は大丈夫か?」

 俺は少し体を動かして、体調を確認する。

「一応大丈夫みたいだ。えっと、あんたは…」

「あたしはカズミだ。冒険者歴はかなり長い方だ。お前のことはあの二人から聞いたよ。災難だったな、ソラ」

「ああ、やっぱりドラゴン退治は難しそうだよ。もっと色々準備しないとだな…」

 俺の言葉を聞いたカズミは、驚いた表情を見せる。

「あんた、また行く気か?どう考えても、今のあんたたちじゃドラゴンには勝てない。あと三年は特訓しないと…」

「それじゃ遅いんだ…」

「……どういう意味だ」

 俺はカズミに、どうしてドラゴン退治に行ったかを説明する。

「なるほど…そんな事情が…」

 説明を聞いたカズミは、一度考え込むと、いまだに喧嘩している二人のもとに歩み寄る。

 そして、ヒカリの背中を思いっきり叩いてそう言った。

「よし決めた!あんたの事情を片付けるの、あたしが協力してやるよ!」

「えっ?いいの?」

「ああ!あたしもドラゴンとは戦ってみたかったからな!」

 カズミは明るく言った。

 ドラゴンと戦ってみたかったって、随分めちゃくちゃな人だな…

 まあ、仲間は多いに越したことはないしな。

 ここは素直に喜ぼう。

「ああ。それじゃあよろしく頼む」

 俺はカズミと握手をする。

「まあ、今日はゆっくり休んどけ。二日も寝込んでたんだし、まだ体は万全じゃないはずだ」

 カズミが言った何気ない一言で、俺は固まった。

 二日も寝込んだ?

 てことは、科学世界の方も二日が経っているわけで…

「じゃああたしは帰るよ。明日もここに来るからよろしくな」

「うん。じゃあまた明日」

 カズミが家を出ていき、それをユイとヒカリは手を振りながら見送る。

「さてと、ソラも今日は泊まっていってね。まだ怪我治りきってないんだから」

「……マジ?」

「マジ。少なくとも明日までは安静にすること。いい?」

「……はい」

 俺は両親への言い訳を考えながら、ヒカリの家に泊まることになった。

 

 

 

 翌日。

 俺は科学世界に戻り、両親にこっぴどく叱られた。

 ちょっと遠出をしてたと言い訳した俺は、きっと両親から不良になったと思われているだろう。

 悔しいことにそのイメージを払拭する術のない俺は、肩を落としながら魔法世界に向かった。

 そして今いるのはヒカリの家なわけだが…

「お前たち、一度あたしと戦ってみようぜ」

 カズミの第一声はこれだった。

「戦うって…どうしてそんなこと…」

「あたしはあんたらの戦い肩を知らないからな。それを知るためにも戦ってみようってことさ」

 こいつ…考えるより先に行動するタイプだな。

「俺は構わないけど、二人はどうする?」

「……わかったよ。それで理解が深まるなら」

「そうだね。じゃあどこか広いところに向かおうか」

 

 

 

 俺たちは近くの草原にやって来た。

「よし。じゃあ三人まとめてかかってきな」

 そう言って、カズミは大剣二本を抜き、構える。

「えっ?三人がかり?」

「ああ。その方が時間も短くて済む。言っておくけど、手加減したらあっという間に終わっちまうからな」

 カズミは自信満々に言った。

「わかったよ。全力で行くぞ!」

 俺たちは武器を手に取り、俺とヒカリが前衛に、ユイが後衛の陣形をとる。

 俺はカズミに駆け寄り、剣を振るう。

 しかし大剣を前に出して、その攻撃は防がれてしまう。

 カズミはもう片方の大剣を軽々と振るう。

「!?」

 俺はその場で体勢を低くし、それをかわす。

 俺はすぐにカズミとの距離をとる。

 そして俺と入れ替わるようにヒカリがカズミに駆け寄る。

 それを見た俺は、カズミの左側に回り込む。

 ヒカリの槍はカズミの大剣に止められ、もう片方の大剣を振るうがそれを後ろに大きく飛んでかわす。

「『サンダーボルト』!」

 俺の繰り出した雷が、カズミに向かって空気を切り裂く。

「『バースト』」

 カズミがそう呟いた瞬間、彼女の周りから衝撃波が発生し、雷が明後日の方向に飛んでいく。

「『ブラスト』!」

 ユイの言葉が響くと同時に、カズミの近くで爆発が起き、煙が彼女を覆い隠す。

 やがて煙が晴れると、カズミは何事もなかったかのように立っていた。

「言ったはずだぞ?手加減するとあっという間に終わると…」

 カズミは、二本の大剣を手に再び構える。

「見せてみろ…お前たちの全力を!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ