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二つの世界を行ったり来たり  作者: リュミエール
1章 幼馴染の危機
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プロローグ

 俺の名前は徳井天。

 どこにでもいる高校一年生の人間だ。

 俺は今、退屈していた。

 毎日毎日、同じことの繰り返し…

 一日学校に通って、帰って寝て、また学校。

 何か刺激になることはないかな…

 そんなことを考えながら訪れた、入学式。

 どうせこの入学式も、今までと変わらずに、体育館で話を聞いたり、教室でプリントをもらったりするのだろう。

 その予想は当たっていた。

 こんな退屈なやり取りの繰り返しで、何が面白いのか、俺にはわからない。

 そんな日の帰り道、俺の隣には幼馴染の女の子、水上唯がいた。

 茶髪でセミロング、水色の瞳をした彼女はいつも元気一杯で、退屈な俺をいつも元気づけようとしてくる。

 正直、こいつといると退屈が紛れるから、普段から一緒にいる。

 だけど、今日の唯は様子がおかしい。

 なんだか、無理矢理明るく振る舞っているように見える。

「ねえ、今日の校長先生のお話、長かったよね」

「えっ?あ、ああ、そうだな」

 普段の彼女なら、こんなことは言わなかった。

 いつもはちゃんと校長の話を聞いて、それを話のネタにしていた。

 他にもおかしいところはある。

 いつもは笑顔なのに、今は真顔でいることの方が多い。

「なあ、何かあったのか?今日のお前、なんだか暗いぞ?」

「えっ!?そ、そんなことないよ!ほら、私はいっつも元気だよ!」

 今慌てて作った笑顔も、ひきつっていた。

 今のように、唯は何かあったのか聞いてもはぐらかしてくるので、こちらからは何も出来ない。

 そんな感じで唯と別れた後、家にたどり着く。

 両親は共働きで、帰っても誰もいないことが多い。

 家の鍵を開けて、扉を開くと、そこには靴は一足もなかった。

 やっぱり今日もいないか…

 俺は、二階の自分の部屋に行き、入り口付近のベッドにうつ伏せの体勢で倒れ込む。

 唯のために、俺の出来ることって、本当にないのだろうか。

 そんなことを考えていると、突然窓ガラスが砕け散り、音が部屋全体に響き渡った。

 それと同時に、俺は跳ね上がり、背中を壁にくっつけた。

「な、なんだぁ!?」

 割れた窓に視線を向けると、その下に落ちてる青くて丸い何かが目に止まる。

 すると、青くて丸い何かは突然光り出し、妙な形の羽が出てきて、真ん丸の目に、横線の口が浮かび上がった。

 そんな奇妙な生き物(?)が、最初に発した言葉は…

「ようやく見つけましたぞ、調律者様!」

 ……はっ?

 いきなり何を言っているんだ、こいつは。

 俺が状況を呑み込めず、ポカンとしていると、青い何かは無視されたと思ったのか、怒り出した。

「ちょっと調律者様!どうして無視するんですか!?」

「い、いや…何を言ってんだ、お前?」

「しっ、しまった!まだ自己紹介してなかった!」

 青い何かはコホンっと咳払いをし、自己紹介を始める。

「はじめまして、調律者様!私はパトと申します!以後、お見知りおきを」

「は、はあ…」

 とりあえず色々聞きたいことはあるが、まずは順に聞いていこう。

「えっと…パト、だよな。お前はなんなんだ?人間じゃないようだが…」

「ああ、私ですか?私は精霊です!今まで多くの調律者様を導いて参りました」

「その調律者ってのはなんなんだ?」

「二つの世界の歪みを取り除く者のことです!これは誰にでも出来ることではないのです」

「……二つの世界ってどういうこと?」

「この世界とは別の世界が存在するのです!全て説明しようとすると長くなるので今は省きますけど、その二つの世界の危機を救うのが、あなたなのです!」

「なるほどね、なるほどなるほど」

 よくわかった。

 自分のおかれている状況がどんなものなのか、はっきりと。

 そんなことを言われたら、やることは一つしかない。

「わかって下さいましたか!では、早速…」

 俺はパトの言うことを無視し、部屋にある机や本棚などの物を漁り始める。

「えっと…調律者様?一体何を…」

「決まっているだろ。カメラ探してるんだよ」

「カメラ?何でそんなものを…」

「うるせえ!こんな分かりやすいドッキリに騙されるか!どうせどこかにカメラ設置して、映像撮ってるんだろ!」

「そんなことしてませんよ!?どうしてそうなるんですか!」

「さっきの話が本当だとしたら、お前は来る世界を間違えてる!早く妄想の世界に帰れ!」

「そんな!?私の言うことが信じられないのですか?」

「当たり前だ!」

 そんな漫画みたいな設定の話なんて、信じられる訳がない。

 詐欺なんかが増える今の世の中、そういうのにはしっかり警戒しなければならない。

 確かに俺は刺激を求めているが、騙されて貧乏とか、そういう展開は望んでない。

「むぅぅ…だったら、どうしたら信じて下さいますか?」

「そうだなぁ…じゃあそのもう一つの世界って所に連れてってくれよ。そうしたら認めてやるよ」

 さすがに異世界に飛ばされたら、認めるしかなくなる。

 まあ、そんなことは出来っこないだろうけど…

「わかりました。では調律者様、こちらへどうぞ」

 俺はパトに促され、部屋の中央に立った。

「では、始めます…ハア!」

 今の声と同時に、足元に円の中に五芒星が書かれた何かが広がった。

 えっ?これってもしかして…

「じゃあ行きますよ!」

 ちょ…!これってマジで?

「お、おい…ちょっと待て…」

「次元転移!」

 パトがそう叫んだ瞬間、俺の部屋が、視界から消えた…

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