護衛艦奪還統合任務部隊
―戦艦大和CIC―
その書類には、達筆な字で「ヤマト作戦概要」と書かれていた。
「親父……これって!?」
「臨時閣議が開かれ、海上警備行動発令に基づき、自衛隊および国連日本軍による統合任務部隊の編成が決定されたんだ」
「……!」
海上警備行動は、海上の犯罪者を取り締まるための出動だ。
本格的な戦闘行動たる防衛出動には国会の承認を要するため、このような措置になっているそうだ。
海上警備行動は、内閣総理大臣が承認すれば発令できる。
「天皇陛下の認証も賜ったそうだ」
「陛下が……。そう言えば天皇陛下や皇族の方々は!?」
「天皇陛下は、一歩も退かぬ構えだそうだ……避難されていないらしい……」
「なっ……」
さすが陛下。その堂々たる振る舞いが政府に影響を与えている。
かの震災においても、陛下は率先して被災者の救援に尽力されたと聞く。
だが余計に不安だ……。
陛下らのためにも、作戦の失敗は許されない。
船務長が席に戻っていった。そろそろだな。
艦内に緊迫したやり取りが展開される。
"ヤマト作戦発動!!"
"第1波攻撃開始!!"
統合任務部隊司令官たる自衛艦隊司令官が作戦発動を命じた。
統合任務部隊司令官は、陸海空の混成部隊を指揮する。かの大震災では、陸上自衛隊の東北方面総監が務めた役職だ。海上自衛隊では自衛艦隊司令官、航空自衛隊では航空総隊司令官があたる。
親父は命じる。
「「第1波攻撃開始!!」」
「了解!目標……こんごう予測未来位置前方50m、レールガン攻撃始め!!」
は……いきなり撃つのか!?まずくねそれ……!
しかもここから東京湾は遠すぎる。届く訳がない。
俺の困惑をよそに、大和CICは戦闘行動を続ける。
「主砲!うちーかたーはじめ―!!」
「発砲!!」
撃ちやがった…………。
発射の轟音がCICでも感じられる。腹に響く。
俺は親父に問う。
「これからどうするんだ親父……」
「統合任務部隊による連携作戦だ」
「……?」
ここでオペレーターの1人が声を張り上げる。もうすぐ弾着するようだった。
「弾着まで…………5、4、3、2……弾……着!!」
(弾着までが早いな……)
親父に聞いてみたが、レールガンの初速は極超音速だそうだ。射程は悠に800kmを超えるらしい。
統合任務部隊司令官より再び通信が入る。
"第2波攻撃開始!!陸上自衛隊第4対戦車ヘリコプター隊!!敵を挑発せよ!"
作戦は始まったばかりである……。