戦艦大和
ー戦艦大和艦上ー
シーホークは、艦の後部ヘリポートに舞い降りた。
窓越しに見える巨大な三連装砲塔が威圧感を放つ。
ヘリから降りた俺らは、それに見とれていた。
(……この艦は……?)
「大和だ」
声が聞こえた方向を振り向くと、2等海佐の階級章を付けた幹部自衛官が歩み寄ってくるのが見えた。
一色1尉らヘリコプターの乗員が敬礼する。
2等海佐は、中佐にあたる階級だ。
海上自衛隊の主力たる護衛艦クラスの艦艇を指揮できる。また、制帽のひさしに、金色の月桂冠のような飾りも付く。
ちなみに自衛隊では、大が1等、中が2等、少が3等といった具合に、他国軍での階級が数字に置き換えられている。自衛隊が軍隊ではないからだ。
一方、軍隊たる国連日本軍では、そのまま大佐や中佐などと呼ばれる。
……ということはあの2佐は戦艦大和の艦長だろうか?
声をかけてきた2佐は帽子を取った。
その見覚えのある顔に俺は驚く。
「……はあッ!!親父!?」
……何で戦艦大和に乗っているんだよ!?
親父はクスリと笑って俺らに話しかける。
「お嬢ちゃんも一緒か……。美香ちゃん、いつも洋介が世話になってる」
「いえ!とんでもない……」
親父め、美香が赤くなっているじゃないか。
挨拶を終えた後、すぐに親父は顔を引き締める。
「状況は聞いたな?」
「ああ、こんごうに核が搭載されたって……」
「そうだ。付いてきてくれ、艦内で詳しく話す」
「分かった」
軍艦や護衛艦の通路は狭く、配管が複雑に入り組んでいる。おまけに隔壁が要所要所にあるため、美香がずっこけそうになる。
そんな彼女を見ていると吹き出しそうになるが、堪える。
俺は美香を連れ、親父の先導に従い、大和のCICに向かっていた。
CIC(戦闘指揮所)は、いわば艦の指令室だ。
艦長らが詰め、戦闘指揮にあたる。
ー戦艦大和CICー
CICの入り口扉には「国連軍関連法につき、許可なく立ち入りを禁ず」とプレートがあった。
室内は暗い。モニターを見やすくするためだそうだ。広さは……学校の教室と同じくらいだろうか?
乗員が親父に気付き、号令をかける。
「艦長入られまーす!」
室内の全員がビシッと敬礼した。親父は軽く手を挙げ、敬礼を解いて作業に戻るよう促す。
「改めて…………ようこそ。大和へ」