テロ発生
―首都圏某所海岸―
俺は美香とデートに来ていた。
空は晴れ渡り、海風は少しひんやりと感じられる。
美香が可愛らしいポニーテールを振りつつ、俺の方を向く。
「洋介は防衛大学校だっけ?」
お互いに高校生。やはり進路の話もする。
「おう、美香は?」
「……んー、洋介が自衛官なら、私は防衛省かな?」
「おいおい……結構難しいぞ……?」
「そんなことないもん!」
彼女はこれまた愛らしい頬をむっと膨らませた。
「私一応理系コースだし!別に出世しなくていいし……その……」
「ん?」
「やっぱり仕事でも洋介と一緒にいたいから……」
そう言うと彼女は、顔を赤らめつつ俺の方を見上げる。おまけに上目遣いだ。
卑怯だなぁ……。
美香の頭を撫でてやる。彼女から笑みが溢れる。
俺は、この幸せな時間が続くことを願った。
ヘリコプターがえらく低空飛行してくる。
機体は白く、日の丸がペイントされていた。
間違いない。海上自衛隊のシーホークだ。
シーホークは真っ直ぐこちらに近づいてきた。
海岸の砂を盛大に巻き上げつつ、降下して来やがる。
……俺たちのこと考えろって。砂かかってるから。
「ッ!!」
「きゃッ!!」
中からパイロットが降りてきた。回転翼は回したままである。
ヘルメットを取った彼の顔は、隈があったが、結構若かった。
彼は俺たちに話しかける。
「僕は機長の一色1等海尉だ。戸村洋介君に西条美香さんだね?」
「はい……」
「戸村君、すぐに乗ってくれ、お父さんがお呼びだよ」
「え……?」
どういうことだ……?
あ、観艦式が近いから護衛艦に招待してくれるのか??
……面白そうじゃねえか。今回の観艦式は、国連日本海軍と海上自衛隊が合同で展示するらしいし。
もっとも、海軍側の参加艦は戦艦大和だけだが……。
美香の手を引く。
「……行くぞ美香」
「ええ!……ちょ、まっ……!」
二人は搭乗した。
ーシーホーク機内ー
機長と副操縦士のやり取りは切迫していた。
「……何があったんですか?」
俺が尋ねた途端、機長と副操縦士は顔を見合せた。
「実は…………北朝鮮によってイージス艦こんごうが乗っ取られたんだ。」
俺は戦慄してしまった……。