ブレーキランプ
「今日はとっても楽しかったわ。ありがとう」
車で自宅まで送ってもらった彼女は、別れ際、彼氏に言った。
「僕も楽しかったよ…」
彼氏も名残惜しそうに言い、助手席の彼女と運転席の彼氏はどちらからともなくキスをした。その後、キスの余韻に浸る彼女に、
「あ、そうだ…でも…」
と、彼氏は何かを言葉にしようとするが思いとどまる。
「もう、何よ。気になるじゃない」
「いや、君が車を降りたら言うよ…ね」
「うふふ、わかったわ。じゃあね」
と、彼女は車を降り、去り行く皮膚科医の彼氏の車のブレーキランプ四回で自身の水虫を知った。