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86 計画

 ◯ 86 計画


 カシガナの実が一つ完熟した。明後日にはもう一つ収穫出来そうだ。木には花が少しずつ咲いては実を付けて行っている。もう一つの木も明日には収穫出来、これは神殿に納める事になっている。

 初のカシガナの木からの収穫を祝って、その実は皆で食べる事になった。メレディーナさんと神殿関係の皆が集まって小さく切られた実を一緒に食べた。紫月はそれをじっと見ていて、目で美味しいか聞いていた。


「美味しいよ」


 やっぱり薄味で喉を潤す水分の多さは変わらない。ほんのりと甘い美味しさは沢山食べてもしつこくなくて良い。今なら他の食べ物よりも濃い魔力を秘めているのが分かる。

 紫月も嬉しそうに僕の反応を確かめた後、自分も食べていた。妖精達にも配ったら食べていた。どうやら実はみんな食べるみたいだ。ちゃんと皆の分を確保しなくちゃ。種は予定されていた場所に植えた。これは来年の春にまた同じように実を付けるみたいだ。


「カシガナの果樹園が出来るね」


「そのつもりだからな。その為に背の低い物を中心に今まで植えてたしな」


 ザハーダさんが答えた。そういえばそうだった。庭の一番端の日本庭園風の場所はともかく、神殿からの依頼された植物はそんな感じの物が多い。

 一番最初のフリーマーケットで買ったジュースの為の木は、庭の外の森の近くに植えてある。あれは年数ごとにかなり大きく育つので森への入口の目印にしようと思っている。最近芽が出て来て順調に育っている。植えた先の森の中に小さい泉があって、たまに水の精霊が地下から伝って出てきている。

 カシガナは森の中でも育つと思うけど、そこは徐々に広げて行く事になる。まずは庭をカシガナの庭にして行くのが先決だ。収穫は来年はグンと上がりそうだ。

 今回は神域にもいくつか植える計画を立てているみたいだ。そして、次のカシガナの木を植える候補地もいくつか決まっている。どうやら聖域を増やして神域の守りとなるようにぐるりと囲むつもりらしい。そういう大きい計画はメレディーナさん達に任せて、僕達はこのカシガナの成長を見守る事になる。


「では、この契約で大丈夫ですね?」


 メレディーナさんが念を押して聞いてくれたので、答える為にもう一度目を通した。実が出来始めたので契約の見直しだ。


「はい。大丈夫です。これだと十年とか、もっと掛かりそうですね」


「ええ、実際にはもう少し掛かると思います。地の守りはカシガナとの共同ですので」


「今まで張ってた守りを補強する形だからね」


 レイが補足説明してくれた。


「そうなんですね。これってなんだか魔法陣みたいですね」


 計画地図のカシガナの植える場所を見ながら言ったら、メレディーナさんが微笑みながら頷いていた。線で繋がってはいないけど、神殿を囲む感じがそんな感じだ。

 神殿の守りでもあるし、逆に神殿からの力を通りやすくする為の物でもあるみたいだ。完成すればかなり強力なものになるみたいで期待されてるみたいだ。

 カシガナ以外にもアストリューの固有植物で契約出来るものが出て来たら、その植物も神殿では大事にしたいみたいで、カシガナの力に期待しているみたいだ。実際、いつもハーブティーにして飲んでるハーブは妖精が生まれる程になって契約出来る状態だ。住民にも契約出来たら知らせて貰うように呼びかけている。

 リリーさんは果敢にも、何度も家に来ては玉砕していたが、最近は蜜蜂の妖精と仲が良くなり始めたみたいで、契約出来たら蜂蜜をティティラと食べようと計画してると聞いた。この春、沢山の妖精が家に現れ始めていて、驚いている。


「このままここに住んでいたら、魔力の扱いが上手くなりそうだね、アキ」


 レイが契約が終わって神殿の皆が帰った後に話しかけて来た。


「うん、大分上達したよ」


「外に溢れてる魔力素の循環まで出来るようになったら、魔法が得意と言えるようになるよ」


「そうなんだ」


 それにはまず、気の扱いをもっと頑張らないとダメみたいだ。それこそ董佳様の満員電車の一人をピンポイントの注文ぐらいは扱えないと無理だ。気は大まかには動かせる感じだ。そのくせ、魔法は細かい事しか出来ないという矛盾……最近は差がほんのちょっと縮まって来た。


 マリーさんはカシガナが出来てから神殿で染料の調達をしていて、何をするのかは直ぐに分かった。神殿で実験をするつもりみたいだ。布もあちこちから取り寄せていて準備は万端のようだ。

 メレディーナさんは魔法薬の研究に使うみたいだし、マシュさんは魔法陣や、魔法契約に使うインクを作ろうとしているみたいだった。僕の魔結晶は二重魔結晶にする時に頑張れば簡単な魔法陣が刻めたが、マシュさんはそれでは納得しなかった。僕の出すパウダー状の砂を見て、このくらい細かい魔結晶を出せと注文が来た。何かするつもりのようだ。……今は練習中だ。


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