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◯ 85 記事
怜佳さんに貰ったサシェは寝室に好い香りを広げている。時々ハーブティーと交換のように渡してくれるので、すっかり家の香りになっている。僕のハーブも入れてくれてるみたいだけど、良く分からない……。そんな香りに包まれて起きた気分のいい朝に届いたメッセージには、ヴァリーとホングがこっちに来るというものだ。
滞在先はどうしようかな。神殿に泊まって貰うか、宙翔の所に泊まって貰うか悩む所だ。それとも、海辺の方が良いだろうか? たまに泳ぎにマリーさんとミラァゼさんのいる海に行って、海の植物の事を教えて貰っているので勝手知ったるだ。本人達の希望を聞いてみよう。
「やっぱり海に行くみたいだよ?」
「そうでしょうね〜、またバーベキューの用意かしら?」
「うん。美女と食卓を囲みたいって言ってたよ」
「まあ〜、生意気ね! いいわ、ギダ達も呼んであげましょ〜」
……それは真逆ではないのかな? 男臭い何かの合宿のようになった海のコテージで、ヴァリーとホングは夕日に向かってこんなはずでは……と泣いていた。大丈夫、海での最終日にはちゃんとサレーナさん達神殿の美女を呼んでおいたから。まあ、隊員達との交流会になってるけど問題ないはずだ。頑張れば話くらいは出来ると思う。
「確かに美女達が来た。一日で帰ったけど、目の保養になったよ……」
帰り際にはすっかりと落ち込んだ二人を慰めようと、頑張っているがうまくいかない。ホングは言ってることはまともだが、目が虚ろだ。
「海も綺麗し、料理も文句無かった。でも、あのメンバーに俺達が敵う訳ないだろう……」
ヴァリーは目を合わせてくれない。マリンスポーツでもビーチボールでの試合も、海での泳ぎも確かにお世話になりっぱなしだった。それは仕方ないと思うけど、ヴァリーにはそんな経験は余り無かったみたいだ。頼られる事はあっても、逆は無かったせいで何かが壊れたみたいだ。
「まあ、戦闘職と治療関係の人との繋は大事だからね。僕達だけだと来てくれないと思うよ?」
「「くうっ!」」
ちょっと痛い所を突いてしまったみたいだ。まあ、この経験をバネに頑張ろう、と言っておいた。ヴァリーとホングはあのレベルの美女と知り合うには、相当の努力がいると言って帰って行った。でも、力だけが魅力じゃないからね、そんなに気にしなくていいと思うんだ。
アストリューの神殿に美女が集まっている、という噂はあっという間に広まった。新人のコミュニティーは男性陣と女性陣とで真っ二つに意見が分かれていた。ヴァリーが噂を流したんだろうか……?
どうやら、ヴァリーとホングは自分の情報ページを作っていた。旅した情報を時折乗せていて、意見を書いていた。ヴァリーが手を出せない程の美女が沢山いる、という理由で広まったみたいだ。
僕はアストリューでのスキンケアの情報を書いて、ついでに入れて貰った。タイトルはアストリュー美女達のお手入れ法だ。
女性の予約が殺到したみたいだ。女性の意見はその後は良い意見が増えた。レイ達と一緒にお手入れしてたから分かる話を入れたんだけど、いい結果になった。
「やっと、情報を扱えるようになったんだね?」
「え、あー、そう?」
「スキンケアはアストリュー内でしかまだ売り出してないからね……ここへの予約が増えたよ。最初は男の客ばかりでなんだろうと言ってたんだよ。でも、次の女性客達が妙にここのスキンケアの事に詳しくて、聞いたらアキの書いた記事を見たって言うので、探したらかなり読まれてて驚いたよ」
「うん、レイのおかげだよ」
「出来たら続きを書いて貰おうかな? こないだの新作のパックを出すからね」
「うん、でも見てくれるかな?」
「大丈夫だよ。美に関してはうちも負けてられないからね」
時折、新作等の情報を記事にして出すようになった。僕の意見が入ってるので口コミに近い。神殿でもこの情報は出しているのでそっちを見る人が多いけど、モニターとしての僕の記事の方が若干早いから情報に敏感な人は見てくれている。多分、先取りした情報を持っている方が、有利な関係を持てるせいだと思う。何となく新人の情報の取扱に付いては分かって来た。
しかし、記事を見てる人はほぼ女性だ、妹の言うように洗脳されてるのかな?




