83 主張
◯ 83 主張
董佳様に爆発物が届いたとレイから聞いた。焦っていたら大丈夫だと言われて、少し落ち着いたので詳しく聞いてみた。最近の組織改革での反発だという。思い切ったらどこかに不満が出るのは分かっているので、ちゃんと対策されていたみたいだった。随分過激な反発だと思うけど……。
怪我も無く、本人はやっと来たわね、と涼しい顔をしていて待ち構えていたみたいだ。それを聞いてホッとした。神界も夢縁のように変わって来ているんだ。
「それで、チーズケーキを食べてるのは気分転換ですか?」
董佳様はチーズケーキを頬張っていて、隣で怜佳さんが董佳様の口に付いたケーキの残りを拭き取っていた。
「当然でしょう? 縁起のいい店だって言うから来たのよ。確かに看板の絵はそうね」
「美味しい話ね。店が縁起をかついでるのよ」
怜佳さんは意外に興味ないみたいだ。
「ケーキは美味しいわ」
董佳様はケーキは気に入ったみたいだった。
「確かに美味しいね。でも、爆発物なんて随分過激な人達だね?」
レイが紅茶を飲んでから董佳様に聞いている。
「そうね、爆発する前に止めたから問題ないわ。あのくらいでは何ともないわ」
「犯人は分かったんですか?」
僕は送って来た人が捕まったのか聞いた。
「ただのパフォーマンスよ。これからやるわよって言う挨拶みたいな物ねきっと」
「じゃあ、分かってないんだね」
そんな。
「そうね〜、内部にいたものとの闘いはやりづらいわね〜」
「平気よ、足掻いて貰わないとダメだもの。それだけ焦ってるってことだし、こっちはどんと構えてれば問題ないわ」
「向こうが自滅する事もあるものね〜」
「そこまでは期待してないわ、動きを止めれてれば良いのよ」
ピソルとヘラザリーンがいたのは、神界のどこかにその手引きをした者がいるはずなので、そのあぶり出しでもあるみたいだった。
「そうね、中立の者がどう動くかね、あるいは傍観者か。知らずに動かされている者が多いのが嫌な感じね。それでも、反応があったという事は、こっちの作戦は成功してるって事よ」
「動きを封じればそうなるね」
「ずっと警戒態勢にさせてたのも良かったわね。うかつに動けなかったせいで焦ってるのが分かるわ」
「今の所は良い感じに進んでるのね〜」
「そうなるわね」
「早く捕まると良いね」
危なそうな話を聞きながらも、良い方向へと向かっているのが何となく分かった。
久しぶりにトシから連絡があった。学年が上がって勉強が難しいと愚痴を聞かされたが、楽しくやってるみたいだった。同じクラスになった一人に、幽霊を見ると言っている人がいるというので、確かめたいと言われた。虚言かもしれないから何とも言えないみたいだ。
「何となく嘘っぽいんだよな。アキに頼むのも変なんだけど」
「そうなんだ? でも調べておいた方が良いよね」
「そうだよな、悪いな」
「謝る事無いよ。大事な事だよ」
「そっか、頼んだ」
「任せて」
次の日の放課後に学校の校門で待ち合わせた。どうやら部活は運動部みたいだ。バスケ部所属なのは聞いてたみたいで、トシと一緒に体育館に向かった。途中で目が合う人はいず、直ぐに目的地に着いたので指をさしてトシが説明する人物をみた。女の子だ。僕はそっと近寄って行って確かめてみた。反応は無かった。目も合わなければ、僕を避ける事無くすり抜けて行った。どうやら虚言だったみたいだ。
「あの様子だと見えてないか」
「残念だけどそうだね。帰るね」
「やっぱり嘘か。俺の勘も当たるな」
トシはちょっと残念そうだ。話の出来る人間が欲しいのかもしれない。帰りがけに驚く顔が視線に飛び込んで来た。御門さんと目が合った。
「トシ、御門さんと目が合ったよ。ちょっと話して来てよ」
「了解!」
トシは嬉しそうに話しかけに行った。一人でいるのも良かった。吹奏楽部はまだ始まってないみたいだ。理由を話して伊東さんに聞いたら、面接すると言われたので、部活を休んで貰って家に寄って貰った。
「で、はっきりは見えないのね?」
「そうね、ぼんやりくらい」
伊東さんの質問に、いくつか答えて貰って判断している。この人に嘘は通じない。
「じゃあ、トシと同じくらいだね」
「だが、気は少し扱えてるし、その調子で鍛えれば行けそうね」
「俺は?」
「大雑把過ぎ」
トシは大げさに項垂れて落ち込んでいた。要練習だね、部活の練習みたいに頑張れば大丈夫と思う。まあ、御門さんはしっかりしてるから、トシの暴走を抑えてくれると思うんだ。後でしっかり頼んでおこう。




