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82 星始祭

 ◯ 82 星始祭


 そんな感じで地球では進んでいる中、アストリューでは春のお祭りが大々的に行われていた。春のお祭りなだけあって、神殿では色とりどりの花が咲いている庭を見ながらのパーティーが多かった。ラークさんも神殿に顔を見せに来ていて、挨拶をした。マーロトーンからの使者も来ていた。どうやらここから神官達の派遣があったみたいでお礼に来ていたみたいだ。

 ここを出て違う世界で独立していた人達も入れ替わりで戻って来ていて、毎日華やかな衣装の人達があちこちから神殿にやって来ていた。出入りが大変なのに、皆は手間を惜しまずに訪れてくれている。良い人達ばかりだと思う。前半はそんな人達を迎える為に、神殿で皆と一緒にパーティーの準備をしたりと忙しく過ごした。


 お祭りの半ばぐらいからは雨森姉妹が訪れてくれるので、家で準備をしていた。今日のお昼にはアストリューについて、神殿でメレディーナさんに会ってから、こっちに泊まりに来てくれるみたいだった。もしかしたら神殿で泊まってくるかもしれないので、そこは臨機応変にだ。

 明日の夜はこっちの庭でいつもの宴会があるので来てくれるはずだ。レイが姉妹の神殿での接待を引き受けてくれてるので、連携はばっちりだった。

 お祭りの間は、マリーさんが新しく作ってくれた春のお祭り用のお揃いの服を紫月とスフォラ、妖精達と一緒に着ていた。髪はマリーさんが結ってくれ、髪飾りはメレディーナさんがくれた物を付けている。レイには新しい家族のお守りを貰い、マシュさんからは魔法陣の本を貰った。

 僕も人に会う度にプレゼントを渡した。メレディーナさんには小さい花のブローチを渡し、レイには目と似た色のイヤーカフスを渡した。レイの瞳は光源によって色が変わるから青から緑のグラデーションになっている。マリーさんにもイチゴの形のブローチを、マシュさんはアクセサリーは付けなさそうだったから、蛇の形のペーパーウェイトをラークさんにも夜の砂漠のデザインのペンダントを渡した。

 宙翔達には明日に渡す力作のケーキと料理を用意している。春の食用の花を砂糖漬けにして豪華に散りばめた見た目も綺麗なケーキだ。宙翔流に言うお姫様達も来る事だし、きっと気に入って貰えると思う。

 お姫様達には花の形のイヤーカフスも用意してあるけれど、気に入って貰えるかは謎だ。妖精達には僕の魔結晶をプレゼントした。

 スフォラと紫月には、実験で作った闇の属性の魔結晶と僕の闇のベールを使って創った使い魔を渡してみた。黒猫の姿をとっていたはずなのに、気が付くとマントにして二人で楽しんでいた。魔結晶が切れるまで遊び尽くしそうだ。

 レイから連絡が入って、雨森姉妹は今夜は神殿で泊まることが決まったみたいだった。


「あ、マリーさん。今日は二人とも神殿に泊まるみたいだよ」


「そうなのね〜? ねえ、あのスフォラちゃん達のマントってどうなってるの? ずっと消えないじゃないの〜?」


「あー、あれは使い魔を創ったはずだったんだけど……なんか紫月が分解しちゃったみたいなんだ。あれって何になるのかな?」


 僕は経緯を説明したら、マリーさんが納得していた。


「アキちゃんの闇の力の結晶ね? 魔力であのマントは維持されてるから、変身しても体に合わせて変化するみたいなのよ〜。すごく良いわ、変身タイプの人にはきっと喜ばれる衣装が出来るわよ〜」


「そうなんだ?」


 どうやら紫月達は外でそんな遊びをやってるみたいだ。


「光のベールでは出来ないの〜?」


 マリーさんの目が真剣だ。そういえば光のベールがお気に入りだったのを思い出した。


「え、と、まだやった事ないから分からないよ」


「じゃあ、お祭りが終わったら実験ね? 約束よ〜」


 両手を合わせてくねくねと体を動かして、マリーさんはお願いをしてきた。


「うん、いいよ」


 その後は明日に向けて、宴会での歌と踊りのリハーサルを軽くしてからゆっくりと過ごした。光の演出は妖精達が受け持ってくれるので、僕は音響とスモークだけだ。スモークも魔結晶でやるから難しくはない。


 次の日、雨森姉妹は家に来た。真っ先に庭に行って妖精達を見に行ってしまった。今回はゆっくり出来ずに二泊三日の予定みたいで、今日の昼間はゆっくりして貰う事にした。夜は宴会だし、今のうちにのんびりと息を抜いて行けば良いと思う。

 ヘラザリーン達の居場所が突き止められたから、地球では少し警戒を緩めている。出入りはかなり厳しいけれど、それ以外は通常に近くなっている。


「可愛いわ」


「合唱はまだなのね?」


「ええ、まだ生まれたてなので、ステージを盛り上げて貰うだけです」


 雨森姉妹は妖精達の可愛さにめろめろだった。宙翔は頭にシィシィーを乗せて移動している。踊り疲れて眠り出したみたいだった。そろそろ他のちび達も呼んで寝かしつけよう。


「でも、あの歌を歌っていたのが、あのポカレスだなんて信じられないわね」


 董佳様はポースの歌を気に入っていたみたいだけれど、悪名高き魔導書の歌声とは思えなかったみたいだ。


「ヘラザリーンにもポースの歌は認められてたみたいですよ? 何か悪影響を及ぼすから歌わないでくれって頼まれたみたいです」


「そうだったの? ……確かに悪神にはちょっと合わなさそうね」


「妖精の歌だけも良いけど、盛り上げるならこのくらいが良いわね」


「はい」


「でも、魔法の腕を上げないと、音響が今一だったわよ? 歌を引き立てるようにもっと頑張りなさい」


「そ、そうですね。頑張り、ます」


 董佳様のいつもの励ましらしき言葉を受けつつ宴会は進んだ。デザートのケーキを運ぶついでに、妖精達を回収して寝床に運んで休ませた。ケーキは好評でマリーさんと二人で喜んだ。

 次の日、昼過ぎに起きて来た姉妹の耳には、僕の作ったイヤーカフスが付いていた。付いていた魔結晶に気が付き、レイに使える事を聞いていた。二人は妖精達に挨拶して帰って行った。

 お祭りの最終日である今日はアストリューの新年の始まりだ。この日は家族や、身近な人と過ごすのが習わしみたいだ。なので家でささやかなお祝いをした。この日の朝、カシガナの花が一つ綺麗に咲いた。


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