81 新体制
◯ 81 新体制
予定よりも早く夢縁での実力テストの結果が送られて、残った者の番号が張り出された。新しく作られた評価基準に基づいて分けられたクラスで発表がされた。どうやら、白黒ブレザーは統合されるみたいだった。何となく分かる。三分の一程の生徒が降格処分になった。
「こんなに早く結果が来るとは……何があったんだ?」
成田さんはそんな疑問を持ったみたいだ。単に早く終っただけだ。
「そうだよね。でも良かった〜、優基と離ればなれにならなくて」
……ごちそうさまです。
「意外にしぶとく残ってる奴らが多いのには驚いたな」
木尾先輩はもっと落ちると思っていたみたいだ。英才教育コースの人がいるからそれはないと思ってたよ、秘密の開示の呪術を使っていた真木さんもそこ出身だったらしい。
「しかし、空きは多くなった」
「お前の弟が落ちてたな、気分良いだろ?」
「まあ、少しな。でももう、関係ない人だしな」
加島さんは素っ気なく答えたが、少し伏せた目からは寂しさが見えた気がする。
「うわ、完全に縁を切ってるよ。どうでも良いとか思ってる?」
「そうだな、近いかもしれない。親も弟からも連絡はないし……。向こうもまだ状況が分かってないだろうな」
「結論を出すのは早いかもしれないですよ? 保留で良いじゃないんですか?」
加島さんの目を見ながら言うと、ちょっと笑って頷いた。
「……そうだな、答えはまだ僕のなかには無いよ」
「なんですか? この雰囲気は〜、何か友情を確かめ合ってますよ?」
「ちゃかすな愛美」
「む、む、む〜」
「そうだな、家族の事は加島が決めるべきだな。妙な事を言って悪かったよ」
木尾先輩が何か反省したみたいに謝った。
「いや、自分でも分からなかったから、良いんだ」
「そうか? 確かに保留は良い手だ。周りの状況が変わればまた変わってくるしな」
「そうだね、全てを切り落とすのは難しいし、しなくていいと思うよ。必要なら仕方ないけど、割り切れるものじゃないし……ゆっくりで良いと思うんだ」
「そうだな、今悩む必要が無くなったな」
「そういう事〜? じゃあ、ここは奢ってくれるの?」
「それとこれは別だ」
加島さんがちょっと不機嫌に答えた。
「愛美、現金過ぎ」
「ここのおやきは、美味しいね」
斜め上当たりを見ながら沖野さんは言った。
「誤摩化すな」
成田さんが頭を抱えていた。確かに、アルバイトが減ってるのだから、沖野さんが言うのは仕方ない。でも家を出てる人にそれを言うのは酷だと思う。次は僕が奢りますよ、と言ったら全員が喜んでいた。
上位クラスのブレザーは、鮮やかなスカイブルーになるみたいだった。怜佳さんは新しくするならここまでやった方が良いわと納得の笑顔を見せた。どうやらこの色のブレザーを着ている者には、かなりの優遇を付けるみたいだった。その下のクラスは鮮やかなグラスグリーンにしたようだ。後は従来の制服だ。
スカイブルーの制服の着用が認められたのは十数人だった。グラスグリーンの制服は多かったが、食べ歩き会の誰もその制服を着る事は出来なかったみたいだ。木尾先輩はこれは実質降格と同じだとがっかりしていた。
スカイブルーの制服は、何か飛び抜けた才能を持っていないと着る事が出来なかった。董佳様が言うには僕の眠りの術なら、ちゃんとコントロール出来てれば着れなくはないと言ってくれた。でも、満員電車の中の一人だけを眠らせる、とかのピンポイントが出来ないとダメよ? と釘を刺された。……当分無理だと思う。




