77 不得手
◯ 77 不得手
テスト問題の結果の振り分けは何故か手作業だった。怜佳さんの指示通りに積み上げて行く。お茶会に呼ばれたと思ったのだけど、部屋に入ったら作業が待っていた。
「これはCクラスよ」
渡された物をクラス分けしていった。
「怜佳お姉様、この酷い解答の者は、追放とかした方が良いんじゃないかしら?」
董佳様も手伝っていた。
「……これは基礎クラスね、やり直しを命じるわ」
僕は新たな箱を出し、基礎クラス出直しと書いて詰めて行った。山積みのテスト用紙を見ながら、何時終るんだろうかと恐ろしくなった。
「これは今日中に終るんですか?」
「あら、後二週間あるじゃない」
「……そうですね」
「文句いわないの、しっかり間違えずに振り分けるのよ。分かってる?」
「はい、分かってます」
一番は生徒の物を振り分けて結果を発表し、次は講師の物を見て振り分け、職員と、一般人と、順番が決まっていた。僕達の外部のテストはもう目を通したみたいで、それを基準にクラス編制をやり直していた。
最初は手作業でやるけれど、次からはこのデータを元に、大まかには機械で振り分ければ良いとの事だった。細かくはやっぱり人の目で分けるべきね、とは怜佳さんのお言葉だ。確かに……?
休憩にシシリーさんがお茶を入れてくれた。いい香りの紅茶だ。
「いつも美味しいお茶ですね」
「ええ、シシリーは美味しい紅茶を入れてくれるから助かってるわ」
「ありがとうございます」
「ええ、いつもありがとうね」
「そういえば、妖精が生まれたと聞いたわ」
「あ、はい。また遊びに来て下さい。可愛いですよ」
「そう、それは見に行きたいわ」
「春のお祭りがあるので、その時が良いかもしれません」
「それは何時?」
「地球時間の一週間後から始まって、アストリュー時間で十日間やってます」
「まあ、それは楽しそうね。お祭りって何かのお祝いかしら?」
「アストリュー世界の始まりを祝うんです。星始祭といって日の始まりを祝うお祭りみたいです。こっちでいう年末年始です。最終日以外は街で色々な催し物が開かれるみたいですよ」
日程を姉妹に見せた。
「良いわね、おめでたいわ。そういう縁起の良いことには乗っておくに越したことはないわ。怜佳お姉様、少し寄ってみましょうよ」
「良いわね、息抜きには調度良さそうだわ」
「妖精達も喜びます。お客さんに興味津々だから……」
「あら、好奇心旺盛なのね。いいわ、またそれは後で連絡するわ」
「はい」
「で、あれをやっつけなくちゃね……」
僕達は山積みのテスト用紙を眺めた。マリーさんが呼ばれた。作業は少し早まった。レイが呼ばれた。文句が増えたが、取り敢えずは早くなった。マシュさんが姉妹が分けた物を更に分類分けをして細分化し出した。データを集めてそれを元に残ったテストを仕分け始めて、作業ははかどった。
「この調子なら、後三日もあれば終わりそうね」
「頼りになるわね。助かったわ」
怜佳さんがマシュさんにお礼を言っている。
「こういうのは得意な者にやらせた方が良い。が、最初の基準は必要だからな……」
「そうね。全部をやらなくていいのは良かったわ」
怜佳さんはちょっとホッとした表情だ。
「結果発表は少し早く出せそうね」
「そうだな、どう発表するんだ? データで送るのか?」
「張り出しが一番効きそうだけど、そこまですると抵抗があるかしら」
「あら、張り出せば良いのよ。個人個人講義も違うのだから分からないと思うわ」
「それもそうね、詳しい結果はデータで送って、番号だけ張り出しましょう」
「それなら大丈夫そうだね」
怜佳さんと董佳様が話し合って決まった内容に賛成した。
「やっと終った。ボクもう懲り懲りだよ」
レイにはこの作業は辛かったみたいだ。
「レイ、二人とも家に星始祭の時に来てくれるみたいだから、準備しなくちゃ」
「そうなの? 盛り上がりそうだね」
「うん、何か宙翔のところも庭で宴会をまた計画してるから、一緒にやっても良いかもしれないね」
「あら、宙翔ちゃんも来るのね?」
「うん、また連絡しますね?」
「わかったわ」
怜佳さんはにっこりと笑っていた。仕事の後は楽しまないとね。




