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76 思い込み

 ◯ 76 思い込み


 夢縁にて今日は久しぶりに、眠りの術の講師の講義があったので受講中だ。空間と術の範囲についてだ。これは飛ぶのにも役に立ちそうだ。


「それで、怜佳さんは何でまた講義を受けてるんですか?」


 軽い休憩に入ったので、ノートを取りながら隣に座っている怜佳さんに聞いてみた。


「現場に赴いてみているのだけど……なんて眠いの? 苦行のようね」


「そうですね、眠りの耐性と術を会得出来ますよ……」


「分かるわ」


 目が閉じようとしてくるのを、我慢しているみたいだった。


「アキちゃん眠いわ〜。これに耐えるなんて中々苦労してるのね、学生って」


「そうですよ。この眠気にものすごく耐えないと、術は完成しないんです。……多分」


「余り関係なさそうよ〜」


 欠伸をかみ殺しながらマリーさんは不思議そうに言った。


「そうですか? 結構参考にしてますよ? この緩やかさを真似ると良い感じですよ」


「そうなの〜?」


「そうですよ。まだ半分ありますよ、しっかりして下さい」


 他の学生達は少なかったがほぼ、眠りの中に沈没していた。夢の中で寝てもしっかり眠れるだけで変な感じだ。マリーさんと怜佳さんは外で待つと言って出て行った。後半分も耐えれないわ〜、と言いながら。

 次は気の操作を見てもらう講義だ。怜佳さんとマリーさんは見学していた。僕が気を操っているのをじっと見ていた。何か見られてると緊張するんですけど……。


「動きに滑らかさがまだないのね」


「う、そうですね」


「アキちゃんファイトよぉ」


 どうやら怜佳さんは、各クラスの講義をランダムに見てまわっているみたいだった。お仕事なんですね?


「基礎は問題ないわ、ここからのクラスアップが問題ね。どうも霊気を扱うところが弱い気がするのよね……上に上がってくる者が極端に少ないわ」


「そうなんですか?」


「ええ。それにまるで判を押したかのような者が多いのが気になっていたの。個性が消えてるのね。癖を取るのは良いけれど、良い癖までは取る必要ないわ」


「良き講師がいないのかもしれないわね〜」


「良く分からない勢力に負けてるのね、由々しき事よ」


「良い講師を雇わないとダメなんだね?」


 話を聞くと、大事な事みたいだ。


「募集を掛けておくわ。講師、職員全員テストを受けて貰うんですもの。外部にも同じテストを受けさせて実力をちゃんと見るわ。多分そっちにも行くと思うわ。アキさんも受けてね? 基礎生徒の代表よ」


「え、ええっ」


「大丈夫よ、そのままでの実力で良いわ、平均が分かった方が良いもの」


 なんて事だ! 二週間後には実力テストが入った。ひい〜、それよりも高校の学期末テストが明後日からなんですけど、何のいじめですか?

 僕はテスト地獄に落ちた。結局は最後には開き直る、といういつものパターンを経てテストを受けた。結果は平均だった。いつも通りに歴史と数学が少し悪くて他は普通だった。

 後は怜佳さんの実力テストだ。テストの日、異世界間管理組合の地球神界日本支部は、外部の実力を知りたいとの怜佳さんの要望で、全員でテストを受けていた。筆記と実技をやって終った。


「ふむ、テストも久々にすると緊張するものだな」


 蒼史はどうやら緊張していたらしい。


「そうですね、少々懐かしかったです」


 紅芭さんは何か思い出しているのか、微笑んでいた。


「殆ど埋まらなかった」


 筆記問題はさっぱりだったが、実技はまあまあ出来たと思う。


「そうか? あれは自分の分かっている範囲だけで良いと見たが」


「そうですね、広範囲の問題が出ていましたから、得意分野得を見る為とも言えるものでしたね」


 本当? なら大丈夫かもしれない。……テストの結果は外部なので、関係なくお礼がされただけだった。



 次の日は夢縁では実力テストの話題で持ちきりだった。


「皆テストはどうしたんですか?」


 食べ歩き会のメンバーになってしまった皆が、公園で焼き芋を食べつつ話し合っている。


「あのテストは生徒の能力、知識を丸裸にする感じだった」


 木尾先輩が少し遠い目をしながら、感想を言った。


「全然分からない問題が一杯だったよー」


 沖野さんは唇を尖らせていた。


「そういうテストだ」


 成田さんは慰めているみたいだ。


「ああ、かなり本気のテストだったな……」


 加島さんも顔色は悪い。


「実技は随分細かく見ていたな」


「あんな職員は見た事ないが、神界の関係者だったのか?」


「そうかもしれないな、テストに集中していて縁を繋ぐまでは出来なかった……」


 木尾先輩は失敗した、といった顔だ。


「今回は無理ですよ、そんな事したら余計に遠のきますよ?」


 成田さんはテストの出来を重視したみたいだ。


「それもそうだな……。ここの芋は良い味だな」


「小振りのものと大振りのものと分けてて、旨いな」


「お値段も安くていいし」


「腹の空き具合で変えれるのがお勧めだ」


「なるほど、考えられてますね」


 加島さんのお勧め第二弾だ。


「あれは、振り落とすのもかなり難しそうだが。……基準はどうするんだろうな」


 テストの話に戻った。


「さあな、結果次第だろう」


「結果は二週間後だったよね?」


「ああ、そうなるみたいだな」


「どうやら、ここを卒業した一般人にもあったらしいぞ」


「夢縁の正門で揉めてたらしいよね。テストなんて受けてられるかって、怒鳴ってた人がいたって話題に出てたよ〜」


 沖野さんがどこかから聞いてたみたいで、加島さんの話に情報を付け加えていた。


「うわぁ、そうだったんだ。職員にもテストがあったみたいだし。対象は全員だね?」


 怜佳さんの言ってた全員って、夢縁に出入りしている一般の人もだったんだ。


「職員にもあったのか? 職員に採用されても、うかうかしてられないな」


 皆、テストの話題からこの日は離れられなかったみたいだ。結果は二週間後だ。僕は後一ヶ月で基礎終了試験だ。怜佳さんはこの抜き打ちの実力テストは毎年恒例にする、と言っていたからまたあると思う……。


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