75 境域
◯ 75 境域
暖かな日差しが気持ちの良い朝、カシガナの妖精達が生まれた。紫月の弟妹だ。ピンクとミントグリーンと薄黄色、橙色にガーネット色の妖精達がほぼ一斉に生まれた。生まれてから直ぐは紫月と同じように眠っていたけれど、暫くしたら起き出して飛び始めた。
レイが呼び名を付けるというので任せた。シィシィー、セヌー、アロア、メロゥート、セレンと決まった。神殿にもこの事はすぐに伝えた。家はお祝いムードが高まっていた。
マリーさんは早速、服を着せようとしていたが、何故か全員が服を来たがらなかった。マリーさんは悲しそうだったが、慣れるまではこのままで良いんじゃないかな、と言ったらなんとか機嫌を直してくれた。
「紫月の仲間だね?」
「そう、ボクの仲間。みんな生まれたから一緒にアキと遊ぶよ」
「そうだね、一緒に遊ぼう」
「一緒に泳いだり、飛んだりする」
想像して紫月と目が合うと、待ちきれないと言った感情が伝わる。早く一緒に遊びたくて、うずうずした感じだ。
「楽しそうだね」
「アキは飛ぶの遅いからビリになるね」
「う、そ、そうかな」
「魔法はもっと簡単。アキは頑張りすぎ」
「そうなの?」
「そう、力は込めなくていいんだよ?」
「そうだったんだ?」
「そうなの」
「教えてくれてありがと。やってみるよ」
妖精達の寝床を用意したり、色々と準備をしていたら、メレディーナさんがやって来た。
「無事に生まれたようですね」
「はい、五つの実が次々と光って無事に生まれました」
「これでここも更に賑やかになりますね」
「はい。今は外で紫月とスフォラが一緒に飛んでます」
窓の外を見ながらそういうと、
「まあ、可愛らしい」
と、言ってメレディーナさんは庭に出て妖精達を見守っていた。レイがその横に行って、何か話を始めたみたいだった。僕は飲み物を入れて二人に出した。
暫くして疲れたのか、紫月以外の妖精達は眠そうな顔をし出したので、寝床に入れてそっと寝かしつけてあげた。紫月もお兄さんらしく見守っている。
「眠ったね……」
「眠っちゃった」
「まだ生まれたてだからね。紫月もそうだったよ。生まれたての時は良く寝てたよ」
「そうなの? 覚えてないよ?」
「そうだよ。こんな感じで寝てたよ」
「ふうん、大きくなったら眠らない?」
「そうだね、紫月くらいちゃんとすると思うよ? それまでちゃんと面倒を見てあげようね」
「うん」
しばらく妖精達の寝顔を見て癒されながら、今後もっと妖精が増えたら寝床の場所はどうしようかと考えた。まあ、何とかなるかな? 本来は外でも良いくらいみたいだし、親草も残ってる。
「アキさん、これからここは聖域として、正式に管理されることになりました。アキさんも一緒に管理をして頂きますね」
「はい。頑張ります」
「長期で空ける際には連絡して下さいね」
「あ、はい」
まだ幼い妖精達を、放っておくわけにはいかないから必要な事だ。




