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74 見当違い

 ◯ 74 見当違い


 次の日の夕刻、何故か神の怒りに恐れた人達によって、第二皇子側の人達の中から皇子に毒を飲ませたという人が捕まったと報告が入った。ラークさんは何時怒ったんだろうか? 第二皇子の信用する側近の者達が皇子がいなくなってからずっと調べていたのだが、嵐の後から情報が急に入るようになって、そこからは早かったそうだ。


「でも良かったね? 犯人が捕まって」


 僕がホングに言ったら、


「ああ。あの嵐は酷かった。あそこまでやられたら、人なんてちっぽけだと思い知らされたよ……」


 と、顔色も悪く何か悟ったように言った。


「そうだね、あんな所にいたら死んじゃうよ」


「あんな嵐は見た事がない。王宮まであの嵐が見えたそうだ。今朝まで神殿と連絡が一切つかなくて神に見捨てられたと思ったと父上が言ってたぞ」


 ヴァリーも酷い嵐にビックリしたみたいだ。あれがお見合いだったなんて、ここにいる誰も信じないと思うし、僕も信じたくない。

 自分の部屋を出て皇子の部屋に行った。セスカ皇子も元々体力があるおかげか、かなり良くなってベッドに起き上がって本を読んでいた。読むふりで何か考えているみたいだ。ちょっと思い詰めた顔だから話しかけてみる。


「飲み物を持ってきました」


「ああ、ありがとう」


「気分は大丈夫ですか?」


「とても良いよ。ここ最近はずっと酷かったからね、おかげで随分良くなったよ」


「そうですね、顔色も良いみたいですし、明日には温泉に浸かると良いですよ」


「そうか、私も温泉は好きだからな。明日が楽しみだ」


「はい」


「ヴァリーは良い友を持っているのだな……」


「ヴァリーはお兄さんをとても心配してました。良い弟さんですね」


「ふむ、そうであろう。私の弟だ、良いに決まっておる」


 目が合って二人で笑った。決まり文句のように話が進んだが、内容は確かめなくても分かっている事だ。皇子二人が仲良くしてれば周りももう、こんな騒動は起こさないと思う。壊れた魔結晶が外れて中身のなくなったガラスの指輪を見て、それを渡して貰った。小粒だけれど、いくつか光の魔結晶をはめて返した。


「そうか、そなたの物であったか。……助かったぞ、礼を言う」


「それはヴァリーとホングに言って下さい。僕はこれしか取り柄がないから」


「いや、これがなければ弟もここまでは出来なかったはずだ。ちゃんと助けになっておるぞ」


「はい。ありがとうございます」


 僕達は沈む夕日を見ながら色々と話をした。政治の話はしなかったが、ここの名産や料理等の話から宝石の話を聞かせて貰った。宝石には魔法を貯める物が時折見つかるらしく、それは魔石として重用されているのだとか。


「このように魔力を直接に貯めて使える物は初めて見るが、ヴァリーは答えてはくれなんだ。そなたも答えてはくれぬのであろうな」


「そうですね、ここの神に聞いて下さい。答えて良いかは分からないので」


「なるほど。だが、これは持っていても構わぬという事だな」


 念を押して聞いて来た。


「……そうですね。それも聞いて下さい」


 ラークさんなら取り上げる事はないと思うよ? 僕の顔から察したのか、セスカ皇子はニッコリ笑っていた。

 次の日、セスカ皇子はベッドから起き上がって、ヴァリーと一緒に温泉に向かった。僕は部屋で今回の旅をホングから聞いていた。どうやらかなり無茶な行程での旅だったみたいだ。

 竜を連れて行くとどうしてもばれるので、近くのオアシスまでは竜で行って、そこからは魔結晶を使いつつ、魔法で飛んだり歩いたりして動いていたみたいだった。僕に持ち運び用の収納スペースを借りれば良かったとホングは辛そうに言った。食料が時々足りなくて困ったらしい。砂漠用の乾パンはまずかったと、今にも目から水を流しそうになりつつ苦労を話してくれた。


「アキ、砂漠を一人で良く二日も耐えたよ。僕には無理だ。一日だって一人ではいられないよ」


「そうだね、僕もスフォラが一緒だったからね」


「夜は寒いし、ちっとも進まないし、昼は暑くて眠れたもんじゃなかったよ……」


「あー、確かにそうだったね。テントは?」


「飛ぶのにそんなの持ち運び出来ないから、マントだけだったんだ」


「それは辛かったね」


「そうだよ。ヴァリーも自分で決めたくせに文句ばっかり言うし。飯がまずいとかやっぱりアキを連れてくるんだったとか煩かった」


「そうだね、食料は確保出来るからね……」


「宮殿の外にいて貰えば良かったと気が付いた時には、もう第二皇子を連れ出した後だったよ」


 ホングの話はほぼ愚痴だった。ストレスが溜まってたんだろう。……吐き出せば良くなると思う。


「ヴァリーも快適じゃない旅で何か悟ったんじゃないかな? 荷物が少なくなってるんじゃない?」


「確かに。それは良くなってる、成長したな……」


「良い経験したね」


「懲り懲りだ」


 確かに。でももう、こんな事は二度とないと思うよ。ヴァリーとセスカ皇子は温泉の後に呼ばれて、ラークさんと会ったみたいだった。どんな話をしたのかは知らないけど、僕は明後日にはアストリューに戻る事になっている。ホングも自分の所に一旦は戻るみたいだ。仕事をしないと不味いとブツブツ言っている。

 ヴァリーもそろそろ仕事をするか、と言っていたけど良いんだろうか、放っておいて。さすが不良皇子?


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